最新の研究が北アメリカの鳥の危機的状況を報告

(写真1)最新報告書に高い懸念度が示されたキジオライチョウ
写真提供: © May Haga

17世紀以後、北アメリカでは数百万羽の鳥が姿を消していますが、現在では3分の1の種が保護の緊急性が高いことを最新の研究が明らかにしました。専門家はこれらの種を長期的に保護するためには国際間のパートナーシップ、および、市民科学プロジェクトとして地域住民が参加することが不可欠だということに同調しています。

毎年数百万羽の渡り鳥が北アメリカ大陸の米国、カナダ、メキシコを渡っています。推定350種の北アメリカの鳥が2カ国以上にまたがって渡りをするため、彼らを保護するには国境を越えた共同活動が重要です。

これまで、北米に生息する鳥は1,000種を超えますが、その脆弱性の評価は未完了でしたが、これを補完するものとして‘The State of North America’s Birds (北アメリカの鳥の現状)’が発行されました。米国・カナダ間の渡り鳥保護協定の100周年を記念して発行されたこの報告書は、この種の報告としては初めてのものです。

その中で、北米大陸に生息する1,154の在来種のうち、3分の1の種で緊急の保護活動が必要であることを報告しています。中でも最も緊急性が高いのは、海洋や熱帯林に依存する種です。

特に地域的に最も危機にあるのが海鳥です。彼らの半分以上に高い保護の必要性があり、彼らは公害、過剰漁獲、エネルギー開発、島での外来種による捕食、気候変動などの複合的な影響を受けています。海鳥で懸念度が最も高いのは、ズグロシロハラミズナギドリ、クロミズナギドリ、オオセグロミズナギドリです。

熱帯の鳥の状況も決して良好ではありません。カナダの渡り性鳴禽類はメキシコの熱帯林で越冬し、渡りの途上で米国に立ち寄ります。そのためメキシコでの森林伐採は、北アメリカ大陸の鳥類全体に影響を及ぼすのです(写真2参照)。他に熱帯の鳥で懸念度が高いのはミズイロフウキンチョウ、ヒゲウズラ、ムネアカエボシタイランチョウです。

(写真2)シロオビアメリカムシクイはメキシコの熱帯林地域で越冬します。この地図はBSC Andrew Couturier による eBird Infographic に寄せられた数百万の市民の観察記録を利用したコンピュータ・モデルです。

(写真2)シロオビアメリカムシクイはメキシコの熱帯林地域で越冬します。この地図はBSC Andrew Couturier による eBird Infographic に寄せられた数百万の市民の観察記録を利用したコンピュータ・モデルです。

この前例のない、大陸規模の解析によって、土地利用の変化によって草原性の鳥が他のどの種よりも急激に個体数が減少していることも明らかにすることができます。近年、北アメリカの広大な草原(プレーリー)のほとんどが農耕地やその他の用地に転換されました。点々と残されたわずかな土地だけでは野生生物の生存には不十分です。草原性の鳥で懸念度が最も高いのは、ゴマフヒメドリ、メキシコヒメドリ、ヒメソウゲンライチョウなどです。

北アメリカでの鳥類個体群の減少原因についてより深くお知りになりたい方はバードライフ本部のウェブサイトからBird Studies Canada(カナダのパートナー)会長であるSteven Priceのインタビューをご覧ください。

この報告書は‘北米自然保護イニシアティブ’によってまとめられたもので、同大陸全土のボランティアや市民科学者の集めたデータが利用されました。憂慮すべき発見があった一方で、今回の研究は、大勢の人の力がいかに保護活動の必要性を理解し、積極的に参加して、研究を進めることができるかを示しています。その成果を使って、公共部門、民間部門に対して渡り鳥を守るために協力する呼びかけを行っています。

 

報告者: Irene Lorenzo

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