バードライフはどのようにして地中海の渡り鳥を守っているか
一年に2度、数億羽の鳥が繁殖地の北ヨーロッパやアジアから西および南ヨーロッパ、地中海地方、サハラ砂漠以南のアフリカなどの暖かい地域で越冬するためにアフリカ・ユーラシア・フライウェイにそって旅をします。
その道中で彼らは地中海やサハラ砂漠などの自然の障害や、密猟、送電線、風力タービン、重要な採餌場所や休息地の喪失と劣化および気候変動などの人為的な障害を乗り越えなければなりません。
2012年10月以来、MAVA基金の資金支援を受けてバードライフとそのパートナー団体は‘地中海でのフライウェイ保全のための能力開発プロジェクト’を展開し、2020年までの地中海地域での渡り鳥の生存確率の改善と、渡り鳥の窮状への認識向上に取り組んでいます。
このプロジェクトの第2フェーズ(2105~2017年)にあたり、同プロジェクトでは引き続きアフリカ・ユーラシア・フライウェイでの専門知識を共有し先導役を担う20以上のNGOのネットワーク強化を支援し、地元の人々や、政府および国際コミュニティと共同で活動を行っています。
以下はクロアチア、モンテネグロ、トルコ、モロッコにおける同イニシアティブによる最近の保護活動の成功例です。
クロアチアでのヒメチョウゲンボウの保護
20世紀の半ば以後、クロアチアではヒメチョウゲンボウの繁殖個体群は絶滅したものと考えられていました。けれども2010年にBIOM協会(クロアチアのバードライフ・パートナー)の職員がRab島付近で小規模な繁殖コロニーを発見したことにより、本種はクロアチアのレッドリストに絶滅危惧ⅠA類として掲載されました。このコロニーのあるKvarnerski otoci SPA(特別保護区)でもヒメチョウゲンボウは保護対象種に含まれました。
Rabの地方政府は今回発見されたコロニーのヒメチョウゲンボウの主な採餌場所から2kmと離れていない場所に空港を建設する計画を立てていました。幸いにもこの場所はナチュラ2000のSPAサイトの中にあったため、‘適正評価’が必要でした。
BIOM協会のKrešimir Mikulić理事が共著者になったこの評価の結論は、繁殖個体群に重大な影響を及ぼすことが排除できないことからプロジェクトを進めるべきではない、というものでした。それに続き、公共の利益を無視しようとする動きも地元の政治家により断念されました。鳥への負の影響が考慮されて開発が阻止されたのはクロアチアで初めてのことであり、同国の環境評価制度において重要で望ましい前例となるでしょう。
モンテネグロの自然保護の二重苦
2015年6月にCZIP(鳥類保護研究センター: モンテネグロのバードライフ・パートナー)とCGES(モンテネグロ配電会社)は‘モンテネグロ配電システム’の採用向けて共同で活動することを宣誓し、送電線に鳥の巣箱を設置することを特徴とする、営巣する鳥に脅威とならない環境づくりに取り組むこととなりました。。
2015年10月までにCGESの送電線にはハヤブサのために30の巣箱が設置されました。巣箱設置のために、CGESは対象の送電線での送電を完全にストップさせることに同意したのです。2016年2月末までには通常の繁殖サイトから離れた、慎重に選んだ場所に、更に70の巣箱を送電線上に掛ける計画です。
CZIPの第2番目の、そしてより厳しい戦いの末につかんだ成功例はハイイロイワシャコです。IUCNのレッドリストにより準絶滅危惧種に指定されている本種はモンテネグロでは10月から12月の間狩猟が認められています。狩猟団体は外国人に特定の地域での狩猟許可を与えることが出来ますが、国境を越えて殺した動物を運ぶには別途の許可が必要となっています。けれどもこの仕組みは上手く機能していません。政府機関同士の協力体制がなく、ハンターのロビー活動が強力なのです。
けれども税関当局とCZIPが密猟に対するキャンペーンに共同で取り組んだ結果(刑事訴訟、プレスリリースの発表、ハンターとの討論会の開催を含む)、クロアチアの農業・地方開発大臣はハイイロイワシャコの狩猟を3年間禁止することを宣言しました。狩猟団体の一部には本種の狩猟を自主的に禁止したところもあります。
大臣の決定は、モンテネグロの国境で不法に捕獲された鳥が没収されている事実について詳細な情報を公表して来たメディアからの圧力が続いた結果です。決定打となったのは2015年12月にBar港の税関でイタリア人ハンターによる20羽のハイイロイワシャコと1羽のヤマシギが没収されたことでした。
マミジロゲリがトルコで友達を見つけた
マミジロゲリは急速な減少が続いていることから絶滅危惧ⅠA類に分類されています。現在の世界全体での繁殖個体数は5,600ペア程度と推定されており、欧州では僅か0~10ペアです。
現在繁殖個体群はカザフスタンとロシアの近隣地域の草原地帯に限られています。マミジロゲリは主要な越冬地に渡るためにトルコを通過します。Doğa Dernegi(トルコのパートナー)は本種の最も重要な中継地の一つであるCeylanpınar IBAで5年間に亘り本種が直面する最大の脅威の一つである密猟問題に取り組む活動を行って来ました。Doğaは密猟の実態を監視するために同IBAに地元保護活動グループ(LCG)によるボランティアの監視人のチームを組織しました。
監視人チームの存在が劇的に密猟の減少につながりました。最大の成果は2015~2016年の狩猟シーズンの初めにCeylanpınar IBAの中には‘狩猟地域はない’との宣言を出したことです。
モロッコの訴えが効果を上げた
鳥に影響を与え得る開発あるいはインフラ計画におけるEIA(環境影響評価)委員会のアドバイザーとして、GREPOM(モロッコのパートナー)が渡り鳥、特にRif(北モロッコの山岳地帯)の猛禽類への潜在的脅威である風力発電施設の建設反対運動を展開し、中止させました。
GREPOMはまた、渡り鳥の重要な中継地で、シギ・チドリ類の重要な生息地でもある低地Loukkos塩田の復元をLarache(北モロッコの港町)の地元当局が許可を出すよう説得するのに今回の擁護活動を活用しました。それにより、VBN(オランダのパートナー)の財政支援による2016~2017年の塩田復元プロジェクトを完全に支援すると言う約束が得られたのです。
報告者:Marija Stanisic, Mate Zec and Itri Levent,
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