世界アルバトロスデーにこの素晴らしい海鳥のお祝いをしましょう

コアホウドリ(手前)とクロアシアホウドリ

今日は世界アルバトロス(アホウドリ)デーです。驚くべき世界記録を持ち、世界で最も絶滅の危機に瀕している鳥であるアホウドリ類を祝うにあたって、世界中でアホウドリ類保全に取り組むバードライフパートナーの取り組みをご紹介します。

雄大な海鳥

海上を飛ぶアホウドリ類ほど雄大な姿はありません。翼を広げた長さが3.5メートルもあるワタリアホウドリは、世界のあらゆる生物の中で最も大きな翼の持ち主です。クロアシアホウドリなど、アホウドリ類の基準では「小さい」とされる種類でさえ、翼を広げると2.5mにもなります。これは、現在世界で最も背の高い人の身長と同じ長さなのです。

これらの記録は単なる自慢にとどまりません。アホウドリ類は約90%の時間を海風に乗って過ごし、まさにその大きな翼のおかげで、ほとんど羽ばたかずに長距離を移動することができるのです。アホウドリ類は1回の採餌で16,000km以上の距離を飛ぶことが知られており、ハイガシラアホウドリはわずか46日間で世界を一周した記録があります。

アホウドリ類は他の方法でも海での生活に適応しています。多くの海鳥と同様に海水を飲むことができ、嘴にある鼻孔から余分な塩分を排出します。© Ross Hughes

賢い旅鳥

驚きの記録はそれだけにとどまりません。アホウドリ類はとても長生きをする鳥です。野鳥の最高齢保持者はコアホウドリで、70歳以上と推定されています。ミッドウェイ環礁のコロニーに生息する「ウィズダム(賢明)」と名付けられたコアホウドリは、今までに40羽以上の雛を産んだと考えられています。

 

有名なコアホウドリ「ウィズダム」。ハワイの営巣地にて。

多くの長生きする種類と同様、アホウドリ類は成長が遅く、繁殖率は高くありません。ほとんどの種類が10歳を過ぎてから繁殖を始め、多くは雛を生むのは2年に1度です。

これらの特性から、アホウドリ類は世界で最も印象的な生物の仲間であることは間違えありませんが、その反面、脅威に対してはとても弱く、悲しいことに個体数が減少し続けていることが明らかとなっています。

特徴的な求愛ダンスで結ばれた多くのアホウドリ類夫婦は生涯をともにします。

最大の脅威

22種類いるアホウドリ類のうち、15種類が世界的に絶滅の危機に瀕しており、地球上で最も絶滅の懸念に直面している鳥類といえます。バードライフが中心となってまとめた論文(Diasら 2019)によると、アホウドリ類に影響を与える主な原因は、漁業による混獲(95%の種類)、外来種の侵入(68%)、気候変動(38%)です。実際、多くのアホウドリ類の種類は、これらの脅威の複数に影響を受けています。

アホウドリ類にとって重要な場所の保全

今年の世界アルバトロスデーのテーマとして、アホウドリ類が影響を受ける脅威の中で気候変動が取り上げられています。気候変動により生息地が消失し、餌も減少しています。そして、海水温の上昇は離婚率の高さに関係していると考えられています。そのため、アホウドリ類にとって重要である場所を特定し、その地域を重点的に保全することが極めて重要になってきています。

そのような地域とは、アホウドリ類がその時間の40%以上を過ごすとされている公海です。公海は地球の表面積の45%を占め、無数の生命を支えていますが、保全されている海域はごくわずかです。バードライフは、海底に広がる山脈である天皇海山群を、コアホウドリとクロアシアホウドリにとっての「重要生息環境(Important Bird and Biodiversity Area)」に特定しています。あの有名なウィズダムも、餌を獲るためにこのエリアを利用しています。

しかし現在、公海に海洋保護区を設定するための法的枠組みは存在しません。私たちは、ハイ・シーズ・アライアンスなどのパートナー団体とともに、天皇海山群のような地域を守るために意義のある公海条約の制定を強く求めています。

気候変動問題に取り組むには、国際的な連携と政府による取り組みが必要ですが、その実行には時間がかかることがあります。だからこそ、アホウドリ類にとって他の2つの主な脅威である外来種と漁業による混獲に対処することが重要なのです。

アホウドリ類を混獲しないために

漁業による混獲は、アホウドリ類に最も影響を与える脅威です。アホウドリ類は日和見的な捕食者で、海面の魚やイカを捕らえます。漁船の周りにある大量の魚の死骸は、アホウドリ類にとって豊かな餌場となり、30km先まで餌の匂いを嗅ぐことができるため、何百羽もの鳥が集まります。しかし、これが危険を伴うのです。はえ縄漁業では、餌をつけた釣り針に海鳥が引っかかって溺れたり、トロール船の網を引っ張る複数のケーブルに衝突したりすることがよくあります。この問題の規模は非常に大きく、はえ縄漁業だけで毎年少なくとも16万羽の海鳥が死亡していると推定されています。

幸いなことに、これらの影響を軽減する、シンプルで効果的な対策が存在します。トリライン、夜間投縄、加重枝縄を組み合わせた対策です。最近では、釣り針を覆う装置や海中から漁具を設置する手法もあります。

2005年以降、アルバトロス・タスクフォース(ATF) は、漁業者、NGO、政府とともに、海鳥の混獲をなくすための活動をしています。ATFは、バードライフと英国王立鳥類保護協会(イギリスのパートナー団体)によって立ち上げられた混獲回避を行う国際的な専門家チームであり、アホウドリ類の混獲が起きている国々で回避策の実証、試験、改善に取り組んでいます。ATFの活動により、南アフリカの一部のトロール漁業ではアホウドリ類の死亡率が99%減少し、ナミビアの一部のはえ縄漁業では98%減少しました。

「アルバトロス・タスクフォースは、アホウドリ類の個体数減少の状況を好転させるための中心的な存在です。漁船に実際に乗り込んで保全の最前線で活動し、水産業界と協力して実際に成果を上げている唯一の国際的なチームなのです。ATFのメンバーと、この素晴らしいチームの活動を支えているすべてのサポーターのおかげで、何千羽ものアホウドリ類とミズナギドリ類が非業の死から救われています。」と混獲プログラムマネージャーのRory Crawfordは話します。

海面近くを飛ぶギブソンズアホウドリ。

バードライフは公海で起こる混獲を減らすための活動も行っています。しかし、この海域は国際的に管理されているため、混獲を減らすことは難しく、国、団体、水産業界、政府間の十分な協力が必要です。

公海での漁業は地域漁業管理機関(RFMO)が定める規則のもと行われています。5つのマグロ漁業管理機関の管轄海域は、世界のアホウドリ類の生息域の約80%と重なっています。バードライフは、マグロ漁業管理機関と密に連携し、公海における漁業全体で適切な混獲回避策が使用されるよう提唱しています。

海上を悠々と飛翔するキタシロアホウドリ。©David Fisher

アンティポデスアホウドリの保全

アホウドリ類の保全には連携が重要であり、特に絶滅の危機に瀕しているアンティポデスアホウドリの保全でも例外ではありません。この種類はニュージーランド沖の島々でのみ繁殖しますが、とても移動性が高く、オーストラリアとチリの間の公海を頻繁に飛び交います。このような長距離の移動を追跡することで、アンティポデスアホウドリの行動範囲と漁船の操業範囲が重なる海域が特定されました。

スペインは主要な漁業国の一つであり、遠洋漁船がニュージーランドの領海に近い公海で操業をしています。2021年12月には、海鳥混獲回避の最善策を推進するため、両国間で合意書が締結されました。この2つの国が2万キロ近く離れていることを考えると、この特別なパートナーシップは、海鳥保全のために必要な取り組みの一例と言えます。

絶滅危惧種であるアンティポデスアホウドリの夫婦。ニュージーランドの営巣地にて。© Charles Barnett / @wildranger_nz

小売企業の力

現在、世界の多くの国が漁船に何らかの混獲回避策を義務付けていますが、依然として課題が残っており、改善には時間がかかります。漁業は魚を売るために存在するのですから、持続可能な漁業を実現する上で重要な役割を果たすのは小売企業です。漁業の混獲問題に対する社会の認識が高まるにつれ、小売企業は自社の製品が持続可能な方法で調達されているかを確認する方法を模索し始めています。こうした取り組みをサポートするため、バードライフはサステナブル・フィッシャリーズ・パートナーシップホエール・アンド・ドルフィン・コンサベーションと共同で、サプライチェーンにおける混獲リスクが高い漁業の特定にも取り組んでいます。

水産業の透明性と持続可能性の向上を目指した取り組みを行っている、世界の大手水産会社10社による世界的なイニシアティブ「Seafood Business for Ocean Stewardship (SeaBOS)」が、2021年に海鳥混獲への対策を盛り込む際には、バードライフの海洋プログラムがサポートしました。

ハワイの営巣地近くで穏やかな海の上を飛ぶクロアシアホウドリ。

アホウドリ類のより良い未来に向けて

アホウドリ類は称賛に値する鳥であり、私たちはその未来を守るための活動を懸命に行っています。この素晴らしい海鳥を守るため、私たちの活動の支援を通してご協力ください。

報告者:Liam Hughes

写真撮影:記載のない写真は全てSteph and Oli Prince

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