EUが自らの自然保護目標の達成に失敗したことを認めた

EUは持続不能な農業への対策に失敗しています。写真はデンマークの集約的農業の農地。
写真提供: © Jan Skriver

欧州委員会による2020年に向けてのEU生物多様性戦略の中間見直し報告が今日発表されました。この10年が始まるに当たって設定された主要目標の多くが限られた進展が見られる程度で、持続不能な農業の問題に対する取り組みは完全な失敗に終わっています。

同報告は生物多様性の減少を反転させ、多くの絶滅の危機にある動植物を守るという自身の目標の多くをEU(欧州連合)が失敗していることを示しています。

また多くの鳥類が‘安全でない’状況にあることも懸念されています。アセスメントの対象のうちの半分強の52%が‘安全’な個体数状態に分類されただけです。

生態系の復元という目標も達成できておらず、EU28カ国中フィンランドだけが基本的復元計画を提出しただけで、実行することを気にかけている国はありません。

今日の欧州委員会からの報告結果は今年初めにバードライフ・ヨーロッパが‘まだ道半ば’報告で行った警告と一致しています。6月に発表した私たちの報告は、現在EUの農地が直面している環境危機との取り組みに大きく失敗していることを強調しました。1980年以後農耕地の鳥の数は大きく減少しており(回復している兆しもない)、またドイツ、スロべニア、ブルガリアなど多くの欧州国での草地の破壊の波は警告すべきレベルです。

今日の欧州委員会の発表を受けてバードライフ・ヨーロッパのEU政策ヘッドAriel Brunnerは「この報告は残念ながらEUは生物多様性の保全に失敗しており、特に農業部門が顕著な惨事の場である、という私たちの分析を確認するものです。」

「ヨーロッパ全体としては軌道に乗っていませんが、報告は実行が適切に行われているところでは、野鳥および生息地指令が絶滅危惧種の復活をもたらしています。これら指令の‘フィットネスチェック’の間に欧州委員会は同指令を変更し、弱めたいと考えるEU加盟国や産業界のロビー団体からの圧力に断固立ち向かう必要があります。」

「今回の見直し報告は、実際に機能している唯一の生物多様性戦略の一環である同指令を見直すのではなく、破綻をきたしている農業政策をあるべき姿にし、環境法制を完全に実行することに集中する必要があることを示すものです。」

全体的に野鳥および生息地指令(両者を合わせていわゆるEU自然指令)はEUの生物多様性戦略の中核をなすものですが、現状、結果を出すための支援も資金も足りません。

バードライフ・ヨーロッパと他の自然保護団体による‘自然警告キャンペーン(Nature Alert campaign)’はこの状況を変えることを目指しています。

今年の夏行われた公の協議会で回答の圧倒的多数の50万人以上の人が欧州委員会に対してEU自然指令の維持と完全実施を求めました。委員会自身の見直し報告でもこれに賛成する声明、即ち、自然指令が完全に実施されれば生物多様性減少を反転させることが本当に出来ると述べています。

今回委員会が行ったEU市民は生物多様性の喪失をどのように考えているかという新しい世論調査も発表されました。その驚くべき結果の一つは、質問に回答した人の4分の3以上が私たちには自然を守る責任があるので生物多様性の喪失を止めることは重要なことだ、と同意したことです。

 

報告者: Finlay Duncan

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