2020年版レッドリスト:失いかけた7種
クリスマスキャロル「クリスマスの12日間」は、ヨーロッパヤマウズラが準絶滅危惧種に指定されたことにより、間もなく1小節短くしなければならないでしょう。その一方で、ヒタキの1種にとってのパラダイスが復活し、保護活動が実を結ぶことを証明しました。今年のレッドリスト更新で、ノーマークだった魅力的な結果をご覧ください。
1.梨の木を失ったアカアシイワシャコ
これは、皆さんが2020年のクリスマスにお聞きになりたくないニュースかも知れません。しかし今年は、人気のあるクリスマスキャロル「クリスマスの12日間」に登場する鳥がもう1種、IUCNのレッドリストでこれまでよりも1ランク高い危惧のカテゴリーに再分類されました。色鮮やかですぐに識別できる狩猟鳥アカアシイワシャコが、準絶滅危惧種に分類されたのです。クリスマスキャロルに登場するもう1種の鳥、コキジバトも2015年以降絶滅危惧Ⅱ類に分類されています。両種とも集約的農業、生息地の喪失、持続不能な狩猟など類似した原因により減少していると考えられます。
アカアシイワシャコは、今でもヨーロッパ南西部の農耕地でよく見られる種ですが、農作業が益々集約的になり、本種が営巣と採餌に必要な様々な環境のモザイクを均一化しています。それらには農地の端、生垣、果樹園(梨の木を含む)などが含まれます。恐らく乱獲もこれに一役買っているでしょう。最近の調査によれば、毎年本種の推定個体数の60%以上が乱獲されていると思われます。これはまさに、農業と狩猟の両方の慣行をより持続可能なものにするために、私たちが切実に必要としているもう一つの現れです。
2.神秘的な火山島の鳥の現状が明らかに
Tagula島とも呼ばれるバナチナイ島は、パプアニューギニアの南東360㎞に位置する南西太平洋の火山島です。煙のような雲の切れ端から突き出ている深い緑に覆われた山域は、ジュラシックパークにそっくりで、長年そこに生息する鳥類は、彼らが進化した元である恐竜と同様に神秘的でした。島が孤立していて、アクセスできない地形であることから、科学的調査はほとんど行われたことがなく、今でも種によっては、レッドリスト上で「情報不足種」に分類されているほどです。
今年初めて、私たちは3種の鳥類の状況について、適切な評価を行うために十分な知識を得ました。その3種とはタグラキミミミツスイ、コシジロモズガラス、ノドジロメジロです。そのうちの2種、コシジロモズガラスとノドジロメジロは準絶滅危惧種だったことから、私たちはギリギリのところで間に合ったようです。森林伐採、農地拡大や、金の発掘が、島の熱帯雨林を破壊しつつあります。これらの新しい発見の多くは、一人の科学者William Gouldingの調査によるもので、彼の望むところはTagula島と広範囲にわたるルイジアード諸島の、全ての固有鳥類に関する知識を向上することでした。彼の調査プロジェクトは、地元住民を雇用し、訓練を行うことや、島のコミュニティの教育と普及啓発キャンペーンが含まれています。
3.絶滅の流れに逆らって泳ぐペルーカイツブリ
科学者、政府機関、地元の人々の努力のおかげで、今年絶滅危惧ⅠA類のリストから脱却した種がもう一種います。ペルーカイツブリは、ペルー高地のフニン湖にだけ生息する、ユニークな飛ぶことのできない潜水鳥類です。悲しいことに20世紀に、彼らに非常に適していた家は、採掘活動と下水の流出によって劣化し汚染された拘置所になりました。更に悪いことに、彼らの営巣地から水力発電プラントに供給するための水が抜き取られ、突然干上がってしまいました。1993年までに生き残った鳥は50羽だけになってしまい、種全体の運命がどちらに転ぶか分からない状態になってしまいました。
ありがたいことに、その窮状が見過ごされることはありませんでした。フニン湖はラムサール条約の国際的に重要な湿地とIBAに指定され、2002年にはペルー政府が広い水域を浄化し、水の抽出に大きな制限を掛ける緊急法を可決しました。バードライフのアンデス高地湿地プロジェクトの一環として、私たちはペルーの保護活動グループECOANが、長期の調査とコミュニティ教育のプログラムを構築することを支援しました。本種はアンデス高地湿地プロジェクトのフラグシップ種となり、まだ流れが完全に転じたわけではありませんが(本種はまだ絶滅危惧ⅠB類)、間違いなく正しい方向に向かっています。
4.コロニーが突然崩壊したアカハシカモメ
ここ数十年の個体数の増加と生息地の拡大により、地中海で有名な水鳥アカハシカモメが再び絶滅危惧Ⅱ類になってしまうとは誰も思いませんでした。非常ベルは数年間の非常に低い繁殖の後に、スペイン北東部のエブロデルタの最大の繁殖コロニーの崩壊を、研究者が報告した時から鳴り始めました。一部の鳥は繁殖地を変更し新しいコロニーを作っていますが、全体的な個体数は2010年以降急激に減っています。このことから、世界の個体数の3分の2を支えていた場所が存続できなくなると、容易に予想できることでしょう。
では一体、エブロデルタに何が起きたのでしょうか?複合的な要因による結果のようで、その全ては人の手によるものです。陸上では適切な生息地が失われ、繁殖地周辺で捕食者が自然に増加した時、カモメには逃げ場がありません。実際に、転地したコロニーの多くは、港などの最適とは言えない生息地に作られました。問題は海でも生じました。通常の大型カモメ類と異なりアカハシカモメは、腐食者ではなく魚食のスペシャリストであるため、魚の乱獲の脅威に晒されるのです。また本種は、漁船団による混獲の犠牲者でもあります。まだ全体像は不明ですが、今年の本種のレッドリスト更新は、注目すべき点を示しています。
5.セーシェルサンコウチョウにとってのパラダイスの回復
ギリシャ語で「楽しい声」を意味する、驚くような虹色の鳴禽類セーシェルサンコウチョウに朗報です。今現在、本種はもう絶滅危惧ⅠA類ではありません。以前はセーシェル共和国のラ・ディーグ島にだけ生息していた本種の個体群は、この20年の間に確実に数を伸ばし、かつての生息地デニス島にも首尾よく再導入されました。新しいコロニーは大きくなりつつあり、勢いが良く、本種の音楽的で口笛を吹くような声は、進行中の環境再生プログラムのおかげで、捕食者がいなくなった島の森林のどこででも聞こえるようになりました。2018年~19年にかけて第3の個体群が、キュリーズ島に放鳥され、順調に繁殖を始めています。
この心強い成功は、ネイチャー・セーシェル(バードライフ・パートナー)とその協力者による何年にもわたる努力の結果です。彼らはネイチャーセンターをゼロから立ち上げ、教育センターの設立と大規模な啓発キャンペーンを行いました。乾期に全ての鳥が生き残れる様、学校とコミュニティセンターに水飲み場も設置しました。本種は依然として絶滅危惧Ⅱ類に分類されており、その生息地の多くは開発プロジェクトにより危惧されていますが、少なくとも彼らの営巣地は一歩パラダイスに近付いています。
6.地元愛に支えられているオグロヅル
オグロヅルは、今年絶滅危惧Ⅱ類から準絶滅危惧種へと、カテゴリーが一つ分だけ良い方向に近づきました。これは保護区と生息地復元の輝かしい事例です。この雄大な水鳥は、中国西部のチベット高原と近隣の北インド、ブータンの湿地を生息地としています。何年にもわたりこのような環境は、集約的な農業と都市化によって浸食されて来ました。
幸いなことにコミュニティには、この鳥への大きな愛情がありました。オグロヅルは仏教徒の伝統により敬われており、その生息地の多くで文化的に守られています。本種は通常人を警戒しますが、彼らを乱さなければ、時により地元住民に慣れるのです。実際にBNHS(インドのパートナー)の記録によれば、彼らは他の人を警戒をしても、伝統的な服装をしている人を識別できるようです。このことは関心を喚起し、地元住民をツルの保護に向かわせる上でユニークな機会を提供しました。毎年11月、ブータンでは、ツルの保護への普及啓発のためのお祭りが行われ、インドのジャンムー・カシミール州ではオグロヅルは州の鳥になっています。個体数が回復し、自然保護区が評価されていることから、将来は明るく見えます。
7.少なくとも住む場所はあるコバシチャイロガモ
今年、ニュージーランドの外来種を抑制し、コバシチャイロガモの生息地の自然の均衡を復元するという以前からの熱意が、本種をもう一つのサクセス・ストーリーの主人公にしました。飛ぶことができず夜行性という異例な、この小型で虹色のカモは絶滅危惧IB類から同Ⅱ類に再分類されました。このことは本種が、その生息地であるニュージーランド本島の南700キロメートルにあるキャンベル島で、ドブネズミにより一掃され、長年絶滅したものと考えられていたことから特に印象的です。しかし、1975年に本種は、ネズミのいない近隣の小島、デント島で再発見されました。この小さく脆弱な個体群を元の生息地に復元するためのレースが今始まりました。
多くの試行錯誤の後、保護活動家はこの選り好みの多い鳥の捕獲繁殖に成功しました。「保険的集団」は、すでに外来種のいない、カカポ(絶滅危惧ⅠA類)を集中的に管理している、コッドフィッシュ島に放鳥されました。より大きく、隔絶しており、起伏の多いキャンベル島での復元は、遥かに野心的で、ニュージーランド自然保護局は、ヘリコプターを使って島全域に餌の投下を行いました。約1世紀後の2004年に本種は、元の生息地に戻され、それ以来順調に数を増やしています。
報告者:Jessica Law
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