なぜ保護区が問題なのか?

イオニア海のZakynthos
(写真提供: (c) Greek National Tourism Organisation)

今年の夏、海辺を訪れると立ち入り禁止の海岸に出会うかも知れません。それは海岸の‘海洋保護区’ なのです。誰も居ない豪華な砂浜を見下ろした後に観光客が一杯で騒々しい汚染された海岸に戻らなければならないと不愉快になるかも知れません。何故このようなことを誰かがしたのでしょうか?これを個人的なことと考えてはなりません。立ち入り禁止の海岸は人を怒らせるためにあるのではありません。目的があるのです。それは野生動物や植物、あるいはその生息地を守るために確保された特別な場所なのです。

考えてみてください。あなたが観光客で満員の海岸では楽しめないとしたら、どのような動物が楽しめるのでしょうか?砂に穴を掘って卵を埋めるウミガメのことを考えてみてください。海岸の観光客は一つのことしか意味しません。スクランブルエッグと砂を混ぜたものです。いや、それより悪いのです。もしウミガメがタオルの上に寝そべっている人たち、走り回る子供、凧揚げ、ビーチバレーなどに気づいたら先ず彼らは海岸に上がって来ようとはしないでしょう。ある場所が保全されていることはあなたが日光浴やひと泳ぎしたり、それを楽しむために他の海岸には行けないということを意味しているわけではありません。それは人が回りにいると生き残れないような野生動物や植物と何ヶ所かの海岸を共有するということなのです。

‘海洋保護区’には経済活動や人の娯楽を妨げると見られることが多く、大きな誤解があります。海洋サイトを保全するというのは実際に何を意味するのでしょうか?目的の一つは海鳥の重要な営巣地の崖を守るために幾つかの人の活動を制限したり、クジラにとって必須の沖合の採餌場所を保全したり、サンゴを維持するために重要な岩礁環境を保全するためです。けれども、同時に’海洋保護区’はそのサイト内の海洋生物や環境へ大きな影響を与えないような持続可能な人の活動を促す目的もあるのです。ですから保護区は必ずしも全ての人の活動を禁止するものではなく、むしろ海洋保全に必要な範囲に人の活動を再調整することなのです。

漁業に目を向けてみましょう。時にはほとんどの漁師が‘マリーン保護区’不満を持っているように見えます。けれども本当は、もし大切な砂州に生息する生物群集、魚の避難所となるサンゴ、サメのような最上位の捕食者が居なくなったら、それが漁業に何を意味するかについて彼らがまだ理解していないのです。しかしこのことを認識し彼らの生計は健康な海に依存しており、‘海洋保護区’は生計を確保する上で重要な役割を果たしていることを強く信じる漁師の力も増大しています。彼らは保護区が自然保護のためにも、魚が明日の食卓にも出て来るようにするためにも有効に働く上で非常に重要な漁民なのです。

‘海洋保護区’が設定される時には管理計画が伴わなければなりません。そうでないと有名無実になってしまいます。管理計画は特定の漁法の影響を制限する対策など保護活動を設定する助けになります。‘漁業対策’には何もかも捕ってしまう代わりに目的の魚だけを捕る特定の漁具に制限することや、微妙な海洋環境を損傷しないようなタイプの漁具を使用することなども含まれます。デンマークでは政府がナチュラ2000サイトのKattegat and Samsø Beltなどの特定地域で底引き網漁などの漁具の使用を制限したいと考えています。底引き網漁は直接海床に接触し、岩礁を破壊します。これは政府が全ての漁具を禁止したいと考えていることを意味するのではなく、魚を捕ることが出来て、同時に保護区内で岩礁を保全することが可能な他のタイプの漁具に変更するまでの間漁師を支えるために彼らの協力が必要なことを意味するのです。他の保護対策には野生動物の数を増やすこともあります。例えばアゾレス諸島にはモンテイロウミツバメという海鳥が居ますが、数が激減し現在では僅か2つの小島でのみ繁殖しています。本種の個体群を安定させるために実施されている保護活動には外来種のウサギとの巣穴のスペースを巡る争いを減らすための人工巣の製造が含まれています。

管理が適切に行われる‘海洋保護区’は海洋環境に大きなプラスの影響をもたらします。魚の産卵場所や海鳥のコロニーなどの重要なサイトを守ることが出来ます。このプラス面は海洋環境が回復力を築き魚や他の種の個体数を増やすことを可能にし、その結果は近隣の非保護区にも広がり、例えば漁師がより多くの魚を捕ることが出来るようになるのです。このような保護活動は正に経済を助け、また欧州での‘海洋保護区’を10%拡大すれば食糧供給、レジャーとレクリエーション、栄養再循環、気候調整などにより25~38億ユーロをもたらすという証拠があるのです。 

‘海洋保護区’を残していくことは環境や経済から見ると常識と言えますが、、実際には私たちはまだその可能性を十分にに生かしているのを見ていません。まだ基本的な管理計画がほとんどないために‘海洋保護区’を十分に管理するための具体的な活動が極めて例外的だからです。そのために保護活動は非常に効果はありますが、しばしば散発的な短期のプロジェクトに限られています。これは変える必要があります。そして、誰もが、魚、漁民、カメそして少しなら自然のために分け前を共有することを厭わない海水浴客の誰もが‘ウィン・ウィン’の関係を持つようにするのです。

(報告者:Bruna Campos)

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