開発と生物多様性保全は両立が可能との研究結果

この研究は自然を改善しながらでも飢餓、貧困を克服し、 全般的な人の生活の改善が可能であることを示しています。
写真提供:Andy Kobel; flickr.com

新しい科学的な研究によりIUCN(国際自然保護連合)のレッド・リストのデータを用いて人類による開発シナリオが種の保護に対して将来どのように影響を与えるかを査定しました。

バードライフを含む10の研究機関が関与し、Conservation Letters誌に公開されたこの研究は政策の違いにより起こりうる影響を評価するための新しいアプローチを開発しました。

論文著者たちはレッド・リスト指標(鳥に関するデータを用いてバードライフが最初に開発した生物多様性傾向の指標)を利用し、哺乳動物の二つのグループ、肉食獣と有蹄類のデータを用いてその指標がどのように将来に投影されるかを示しました。

類似のアプローチ‘生きている地球指標’の結果と合わせて、彼らは世界の旧態依然とした社会・経済および環境政策のシナリオでは、森林破壊と炭素排出の増加を招き、2050年までに1~4種の肉食獣および有蹄類に高い率で絶滅の危惧があることを見出しました。このようなシナリオの元ではそれらの種には将来改善される見込みのある種は居ません。

人口の増加と経済開発は食糧、エネルギーおよび清浄水、繊維、木材などの他の必需品に対する需要の増加になります。これまでのやり方ではこのような需要を農業の生産性増大、農地と淡水消費の拡大や、水産業と水産養殖業の拡大、化石燃料と木材製品の使用増加によりまかなって来ました。これらに方法は極貧を減らし、人の健康を改善しますが、同時に極めて高い環境コストが伴います。

「人類の開発目標と生物多様性保全は必ずしも競合するわけではありません。」とローマに所在するIUCNレッド・リストの世界哺乳動物評価プログラムと英国ケンブリッジのマイクロソフト研究所に所属する論文の主筆者ピエロ・ビスコンティは言いました。「生物多様性の状態を世界的に改善しながら飢餓、貧困を克服し、全般的な人の生活の改善が可能な別のシナリオがあることを私たちは見つけました。」と彼は続けて言いました。

この‘消費の変化’シナリオでは、食糧、エネルギー、水へのアクセスが貧困層にとっては‘国連ミレニアム開発目標’に合致するように増加する一方、先進国では穀類の生産後廃棄の削減と、ハーバード公衆衛生医療大学の推奨するように肉類の消費を減らす健康食品の採用により、一人当たり消費量を削減します。

‘消費の変化’シナリオでは農産物への需要増加が農地の増加を殆ど伴わず、現在の生産キャパシティのより効率的な利用だけで完全に実現できるのです。この‘消費の変化’シナリオにおける政策変更の進路は社会経済学、生物物理学および生態学の複合モデルを使って2020年及び2050年の望ましい目標から逆算して計画されました。この‘バック・キャスティング’と呼ばれる技法は生態学と自然保護にとって目新しいもので、初めて地球上の全種の将来アセスメントで試されたものです。

「このような研究は、現在の生物多様性の危機に対処するために世界の政策策定に伝えることを目的とする‘生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)’の成否の鍵です。」と論文の共著者でPBL オランダ環境アセスメント局およびシナリオとモデリングに関するIPBESアセスメントに対する技術支援ユニットのヘッドRob Alkemadeは言いました。

「この研究は政策シナリオの違いによる生物多様性に起こりうる影響を査定するための新しい方法を提供するものです。」と共著者でバードライフの科学部門ヘッドのスチュアート・バッチャート博士は言いました。「これはIUCNのレッド・リストが現在の自然保護活動にとっての優先順位を特定する助けになるだけでなく、政策が変わることによって起こりうる将来の結果を理解する上で、いかに価値のあるものかを示しています。」

(報告者:マーチン・フォーリー)

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