IUCN世界自然保護会議2025               ~皆の力で描く自然保護の新たなビジョン~

ナイジェリア自然保護財団理事長  Joseph Daniel Onoja氏 © IISD/ENB | Anastasia Rodopoulou

 IUCN世界自然保護会議は、10 月9日~15 日の7日間 アブダビで開催され、世界各国から約1万人が参加し、今後20年間の自然保護に対する方向性を示す新たなビジョンが採択されました。政府、市民、先住民族、企業など多様な参加者が、自然が人と地球の健康を支える基盤であることを確認し、生物多様性損失を2030年までに食い止め回復させるための行動を議論しました。BirdLife Internationalは45を超える加盟パートナーと共に「協働の力(The Power of Many)」を掲げ、地球規模の保全と連携強化を推進しました。

IUCN世界自然保護会議におけるバードライフ・パートナーシップ代表団

2030年に向けた振り返り

 本会議では、2030年目標の中間地点として、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)やパリ協定などの進捗を確認しました。「自然は経済と社会の基盤」と再確認し、COP30へ向け協働を呼びかけました。

「スケールと協働」の力

 BirdLife Internationalは世界銀行と提携するとともに、アフリカ‐ユーラシア フライウェイのルートを中心とした50以上のパートナーと連携し、生物多様性保全と資金拡大を推進しました。また、17件の共同提案を行い、IUCNの次期方針の採択に反映されました。

科学・政策・実践をつなぐ解決策の共有

 鳥類などの生物群の減少傾向が報告される中、バードウォッチングなどの市民科学の重要性や、IUCNレッドリスト・重要生物多様性地域(KBA)など科学データの活用が強調されました。BirdLifeは、地域フライウェイ計画や中南米11か国の「Conserva Aves」や英国政府支援の「Forest Impact Accelerator」など、現場と政策を結ぶプロジェクトを紹介、さらに、公正で自然に優しい再生可能エネルギー移行及び新ツール「Nature Action Tracker」による政府行動の可視化を発表しました。

パートナー団体であるSAVE Brasilの自然保護部長であるAlice Reisfeld氏

■ 重要決議の採択と新たな潮流

 本会議では、今後4年間の自然保護方針を定める147件の決議が採択されました。BirdLife Internationalが主導した企業による生物多様性への影響開示と対策を求める決議は、電子投票にて可決され重要性を再確認するとともに、他にも観光、「30×30」目標、自然の権利やエコサイド(環境破壊罪)認知など幅広いテーマが議論されました。化石燃料抑制や再エネ移行、プラスチック汚染対策なども盛り込まれ、IUCNの次期行動指針として強固なレガシーを残しました。

 BirdLife Internationalは、科学と協働の力を結集し、2030年までに生物多様性損失を反転させる実践的行動をさらに加速していきます。

原文 IUCN World Conservation Congress: Demonstrating the power of many – BirdLife International

(本文を一部編集しました)

 

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