EUの新しい森林戦略: 志は良いが効果はほとんどない
9月に欧州委員会は遂に長い間待ち望まれていた‘森林戦略’を公表しました。2008年以来の既存のものに替わるその文言は幾つかの良い点が示されています。そこには森林の持つ複数の機能が認識されています。即ち、森林は経済的、社会的、環境的な存在意義と数多くの生態系サービスを提供するものであるという認識です。しかし、同戦略は異なる分野からの森林に対する需要の増加に起因する対立、特にエネルギー部門からのバイオマスへの需要増に取り組むことに失敗しています。
森林は経済・社会全体に利益を与える様々なサービスと公共財を提供する広範囲な野生生物と生態系を留めています。欧州の森林はまだ過去の乱開発からの回復途上にあり、その生物多様性の多くはひどい状況にあります。私たちの森林への新しい脅威は気候変動とそれに関連する極端な気象、および外来種の増加です。現在のEU(欧州共同体)と各国の森林法はこれらの脅威に対処するにはあまりにも弱く、従って森林を守ることが出来ません。
新戦略は森林を守ろうとするEUの意思を示すシグナルですが、同時に具体的な活動の提案を欠いています。新戦略は欧州での持続的な森林管理の強化を目的とする異なる要素を提案しています。例えば‘持続可能な森林管理’基準などです。このような基準は‘EU再生可能エネルギー目標’(2020年までにEUのエネルギー消費の20%は再生可能資源によるものとする。この目標を達成するための重要手段の一つはエネルギー生産のために森林を燃やし、その一方で植林を行うこと。)により進められるバイオマスへの需要増が森林に与える圧力を緩和することが出来るでしょう。
同戦略はまたEU加盟国により作られた森林政策はナチュラ2000ネットワークおよび生物多様性条約(CBD)による2011~2020年生物多様性戦略計画の完遂に確実に貢献することを目指しています。
しかし、やや心細いのは、森林のために行う戦略のために埋め合わせるべきギャップがあることです。ギャップには戦略の実行をモニターするためのツールや森林の現状についての加盟国による報告義務などです。これらはEUにとって森林の将来を評価し、必要なら行動を取るために求められることです。また、同戦略が木材および社会的、環境的需要を考慮に入れ、森林が実際に持続的に供給できる資源の量を明示することが重要です。
新戦略の最も基本的な問題点は法的拘束力が限られていることです。欧州委員会は実際のところ森林地帯に対する責任が全くありません。それ故、同戦略は‘行動規範’の範囲を出ず、加盟国を拘束するものではありません。それでもなお、同戦略は森林管理を上手くやろうという意思を持つ国には価値のあるものです。また、同戦略はEUのバイオ燃料に対する欠陥だらけのアプローチを正すための、また森林管理に関係するEUの自然法を適切に実施するための提案を委員会に行うための扉は開かれています。