鳥の世界にも見られるジェンダー格差

(c) Steve Byland/Shutterstock.com

ジェンダーの不平等は、社会の隅々にまで影響を及ぼし、発展を妨げ、不公平を助長する風土病のようなものとも言えます。自然保護の世界も例外ではありません。未だに多くのジェンダー格差が存在し、中には最も予想しにくい場所に隠されていることもあります。

メスの鳴き声を気にしてくれる人はいない

メスの鳥は 悲劇的なほど見向きもされず、 研究もされていません。鳴禽類(めいきんるい)の場合、従来、鳥のさえずりはオス固有のものであり、メスの鳥には珍しいと見なされてきました。しかし、実際にはメスは何百万年も前から歌っています。自然保護活動家たちはオスの歌声に注目し、オスを研究することでメスの歌声の原因も明らかにできると早合点をしてきました。

しかし、ライデン大学およびコーネル鳥類学研究所の博士研究員であるKaran Odom博士が、メスの歌声を追跡し、共有することを目的とした保護プロジェクトを始動すると、この状況は変わりました。この「メス鳥のさえずりプロジェクト(Female Bird Song Project)」のおかげで、野鳥愛好家がメス鳥に焦点を当てた録音やフィールドノートを多数発表し、格差を埋めるための最初の数歩が踏み出されました。

オスにだけ与えられる名前

メス鳥への関心や意識の低さから、バードウォッチャーは、多くの場合無意識のうちに観察対象に先入観を持っています。例えば、あるバードウォッチャーは、長い間、オス鳥への関心しかなかったことを認めています。極端な例では、オスの成鳥を見るまで新種を数えないという人もいます。これは種の命名にも反映されており、鳥類学の男性中心主義をさらに助長しています。

種の記述名といえば、必ずオスの例証が記述されています。例えば、ルリイカル(Blue Grosbeak)のメスは青色がほとんどなく、アカフウキンチョウ(Scarlet Tanager)のメスには緋色は全く見られません。ノドアカハチドリ(Ruby-throated Hummingbird)のメスの首は赤くなく、コウライキジ(Ring-necked Pheasant)のメスは英名のように白い輪が首にないなど、数え上げればきりがありません。オスメスが似ているから同名なのか、それともオスだけを現わしているのか、どちらなのでしょう。

アオギリのオスとメス
Image credits: Ed Schneider/Shutterstock.com (left), Steve Byland/Shutterstock.com (right)

19世紀の自然探索がいかに男性中心であったかを考えると当然のことではありますが、鳥に人の名前が付けられる場合、大抵は男性の名前になります。Audubon’s Shearwater(セグロミズナギドリ)やAudubon’s Oriole(ズグロムクドリモドキ)はJohn James Audubonに、Baird’s Sparrow(バードヒメドリ)やBaird’s Sandpiper(ヒメウズラシギ)は米国の生物学者Spencer Bairdに敬意を表して名付けられています。

メスがどんな姿か、私たちは知っているのでしょうか?

現実では、メスとオスは必ずしも似ていないことさえ知られていません。

クジャクというと、エメラルドやサファイア色の羽を持つ豪華な姿を思い浮かべますが、一般的にクジャクと思われているのは、実はオスだということはあまり知られていません。クジャクのメスは、灰色や茶色の羽を持ち、鳥類学者からはあまり注目されません。

クジャクのオスとメス
Image credits: Anna Kucherova/Shutterstock.com

バードウォッチャーは、オスの同定には苦労しないのに、メスの同定には苦労しています。さらにひどいことには、メスの鳥を見分けるコツはフィールドガイドにさえ掲載されていないことが多く、その結果、国勢調査や科学的研究にメスの鳥が十分に反映されていないのが現状です。

この偏見を克服するために、「ガルバトロス・プロジェクト」が「メス鳥の日」を立ち上げました。科学者、バードウォッチャー、作家、自然保護活動家らは、メスの鳥はあまり評価されず、研究されていないため、バードウォッチャーにメス鳥の見分け方を訓練し、教える必要があると主張しています。

事実、メスに関する知識、関心、データの不足は、保護活動全体に影響を及ぼします。

鳥類も人類も男女平等が実現できるように、願ってやみません。

 

報告者  Marta Vigano
“The unexpected gender gaps in the science of birds”を一部編集しました
原文はこちら
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