クローン対ドローン:9種の外来種から象徴的な鳥を救うタヒチの戦い

地元企業のマタリ社のドローンが外来アリ対策に使用された。写真提供:© Alice Bousseyroux

1998年に復活計画が始まった時、タヒチヒタキは僅か12羽しか確認できていませんでした。島嶼の鳥にとって、外来種が大きな問題であることはよく知られていますが、タヒチでタヒチヒタキを苦しめているのは1種ではなく9種の外来種で、そのすべてが世界の侵略的外来種ワースト100に含まれています。

このような不利な状況下では、このスズメ目の鳥は失われたも同然と考える人もいたでしょう。個体数がこれほどまでに少なく、捕食者ももはや管理不能な状況では、タヒチヒタキを救う費用は高くなりすぎたと考えても不思議ではなかったでしょう。

けれども幸いにも、この美しく宝物のような鳥は見捨てられることはなく、タヒチヒタキの物語は、敗北の縁から勝利を勝ち取った希望と勝利の象徴となりました。

2017年、タヒチヒタキの個体数は記録的な数に達しました。写真提供:© Caroline Blanvillan

 

被疑者写真票

成し遂げられたことの大きさを知るためには、タヒチヒタキが何と戦わなければならなかったかを知る必要があります。

クマネズミは巣を掘り返して卵や雛を食べる、時には夜に巣にいる成鳥さえも襲いました。

インド原産のインドハッカは5羽ほどの集団で空から舞い降りて成鳥と戦った挙句、雛を襲いました。

猫は捕食者のいない島で百万年以上も生息してきたタヒチヒタキの無警戒な習性を利用しました。

シリアカヒヨドリは縄張りと食物を巡ってヒタキと争い、単独の成鳥や孵ったばかりの幼鳥を集団で襲い死に追いやりました。

ミナミチュウヒは、ネズミを減らすために1885年にドイツ領事により移入されたと考えられています。けれども、状況は悪化しただけで、ネズミの個体数には何の影響も出ませんでした。

クローンの攻撃

この恐怖の事態はとどまるところを知らず、チビヒアリが最近タヒチヒタキの生息地の周辺に侵入し始めました。このアリはクローンを産む数千匹の女王アリの巨大なコロニーを作り、その大群は年に50-100メートル進みます。2014年以降、3つの巨大なコロニーが50ヘクタールにわたって広がっていることが分かり、その一部はタヒチヒタキが生息する渓谷の3つの入り口のうちの2つに達していました。この新たな外来種はヒタキと餌が競合するだけでなく、巣を襲い、さらには木に住むことを好むのです。

ヒタキへの脅威は動物だけではありません。けばけばしい紫色の葉のオオバノボタンがタヒチの森の75%を覆い、景観を変えてしまっています。ヤギやブタ、他の外来植物は言うに及ばず、それらのすべてがヒタキの生息地を悪化させるのです。

タヒチヒタキが直面する脅威の数は克服するには多過ぎます。けれども、国内外のチャリティーや政府からの資金、数百人のボランティアの英雄的な努力に加え、SOP Manu(仏領ポリネシアのパートナー)の取組により、タヒチヒタキの個体数は毎年増え続けています。

クローン対ドローン

保護プロジェクトは時間が掛かり、課題も多いものですが、既にその努力が報われつつあるのが明らかになっています。チビヒアリのコロニーの一つは既に破壊され、残りの二つも130人以上の土地所有者の協力と新技術の利用により、著しく押し戻されています。

ドローンの準備 写真提供: © Alice Bousseyroux

地元企業のMatari社から提供されたドローンを使って、高さ300メートルの崖などのアクセスしにくい場所にあるチビヒアリのコロニーに特殊なアリの餌を投下する取組が行われました。これまでのところ、この取り組みによって、チビヒアリは個体数を大きく減らしました。もしこの傾向が続くようなら、ドローンはチビヒアリ対策の重要な新兵器として、太平洋地域全域で使われるようになるでしょう。

下を見るな!

 

アリのコロニーを探して崖を上るSOP Manuのスタッフ 写真提供:© Michoud Shmidt

ドローンを使用する以前は、SOP Manuのスタッフがアリの駆除のために険しい崖を垂直下降しなければなりませんでした。Te Maru Ata渓谷には垂直で人を寄せつけない崖があり、ネズミも来られないタヒチヒタキの特別な拠点です。SOP Manuの保護プロジェクト・マネジャーのCaroline Blanvillainはぞっとするような経験を説明してくれました。

「Te Maru Ataでのフィールドワークのために、私たちは高さ10-20メートルの滝を5つも登らなければなりませんでした。最初は怖くなります。アドレナリンが静脈を通して流れるのを感じます。次に中毒になります。アドレナリンを求めるようになるのです。

けれども高さ300メートルのTe Maru Ataの崖はこうした滝とは比較になりません。ヤギが上から岩を落とすかもしれないので、崖全体を登るのは危険すぎます。

いつもの職場の仕事風景 写真提供:© S Ricatte

追いやられているのはチビヒアリだけではありません。インドハッカもボランティアによる4年間のわな猟のお陰でタヒチヒタキの生息地から居なくなりました。ネズミも厳しい管理下にあります。数百人の園芸家も、ヒタキの生息地改善のために外来植物との戦いを繰り広げています。

死からの復活

結果としてタヒチヒタキは真に死から蘇り、急速に繁殖し、新しいエリアにもコロニーを形成しつつあります。まだ波があり、去年は不可思議な事象により5羽の若鳥が姿を消しましたが、直近の繁殖期には21羽も巣立ちました。2017年の初めには約70羽の成鳥が観察されました。最近までは残体で年に2-7羽が巣立つだけだったことを考えると、これは素晴らしい成果です。

現在のところ、繁殖ペアは14ペアしかいないため、本種はIUCNのレッドリストでは絶滅危惧ⅠA類のままです。けれどもタヒチヒタキはファイターですので、トンネルを抜けるのは遠いことではありません。ただし、そのタヒチが生き残れるかどうかは、長期の保護活動にかかっています。

新たな希望

タヒチヒタキの長期にわたる安全を確保するために、SOP Manuは外来捕食動物の居ない島に新たなコロニーを作る計画を立てています。適した場所を選ぶのには細心の注意が必要であり、さらに移住させる個体の供給源となるタヒチに十分な個体数が確保されなければなりません。エコ・ツーリズムによって、タヒチヒタキの物語が広まり、本種の保全がさらに加速することも期待されます。

報告者:Jessica Law

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