アフリカのガラパゴスの調査で不思議な珍鳥を発見

島の荒々しい地形はサントメタイヨウチョウなどの鳥の避難場所となっている 写真提供: © Lars Petersson

サントメ島の山岳地で3種の希少な鳥の初めての大規模調査が行われ、素晴らしい結果が得られました。しかし一方で、同島の自然公園管理を至急改善する必要であることも明らかにしました。

サントメ島が「アフリカのガラパゴス」と呼ばれるのには理由があります。中央アフリカ西岸沖の同島は正にガラパゴスに匹敵する存在なのです。まず、このような小さな島にしては驚くほど多くの固有種が生息しています。50種の鳥のうち17種がこの島にだけに生息する固有種です。またこれまでのところ人に起因する鳥の絶滅が記録されていないことも、普通ではありません。

島の荒々しい地形は鳥の個体群を人の影響から守って来ましたが、両刃の剣でもあり、島の調査が困難な理由でもありました。島の調査はぜひとも必要なことです。なぜなら、自然保護活動家なら誰でも知っているように、知こそ力だからです。その種が何処に生息しているか、好みの生息地は何処か、何が脅威なのか、そして何羽居るかが分からなければ、保全はできません。

今私たちが知っているのは以下のことだけです。同島の17種の固有種のうち9種が世界的絶滅危惧種であり、そのうちの3種、サントメタイヨウチョウサントメマシココオリーブトキはIUCNのレッドリストで絶滅危惧IA類に指定されているということです。そのため、これらの3種がこの島での調査の主対象になったのです。

サントメオナガモズ:声だけはよく耳にすることができる
写真提供: © Lars Petersson

調査以前には、サントメオナガモズとサントメマシコの個体数はそれぞれ50羽を下回ると推定されていました。特にサントメオナガモズは目で確認することが大変難しく、鳴き声によって本種がまだ生き残っていることを確かめることしかできませんでした。コオリーブトキは個体数の点ではまだ良い状態でしたが、ハンターの標的になる唯一の種だったために結局は減少しました。

問題はハンターだけではありません。ほとんどの鳥は森林に生息していますが、その森林が人間活動の影響を受けているのです。記録では島はかつて完全に森で覆われていましたが、現在ではその半分以上がココア、コーヒー、油ヤシなどの栽培のために伐採されてしまいました。野生のブタやキニーネ草などの外来種も風景を一変させる要因になりました。多くの固有種の生息地となっているサントメ・オボ自然公園がこれらの脅威に対する守りとなっているものの、全て防ぎきれるわけではありません。

そこで2016年にSPEA(ポルトガルのバードライフ・パートナー)とRSPB(英国のパートナー)などから成るチームが島の調査に乗り出しました。それは容易なものではありませんでした。チームには多くの挑戦が待ち構えていました。小さな島であるにもかかわらず、豪雨、標高2,000メートルに達する山岳地、毒蛇などさまざまな困難に対応しなければなりませんでした。

データ収集のために手付かずの森を探索する調査チーム
写真提供: © Hugo Sampaio

調査チームの一員だったRicardo de Limaはその経験を次のように述べています。「非常に厳しいものでした。私たちは現地で大きなチームを作り、テント、食糧、装備などを背に負って運び、森のなかでほぼ毎晩違う場所でキャンプを張るという生活が一週間以上も続くこともありました。」

けれども、不思議な鳥たちの記録が得られたので、実施した甲斐がありました。

 

何も想定しない

今回の発見は、重大かつ予想外のものでした。その内容は良いニュースと悪いニュースの両方であり、これらの種や森林についてどれだけ知識が欠けていたかということも明らかにしました。一方で3種全てがこれまで知られていなかったエリアでも観察され、サントメマシコの分布域はこれまで想定されていた広さの2倍以上になることが分かりました。他方、サントメオナガモズとコオリーブトキの生息地はこれまでの想定の半分しかないことも分かりました。

このように生息地が限られていながらも3種全ての個体数は想定されていたよりも多い可能性が高いと考えられます。特にサントメマシコの記録は季節によって大きく異なっており、繁殖期外での観察が少ないのは個体数が極めて少ないからではなく、姿を見せない性質が原因かもしれません。これらの発見は、サントメオアンガモズとサントメマシコを将来絶滅危惧Ⅱ類に格下げすると提案に値するものです。一方、コオリーブトキの場合は、繁殖域が極めて限られ、狩猟も依然として脅威となっているため、絶滅危惧IA類の格付けが維持されるべきと考えられました。

今回の調査から優先的に保護すべきであることが示されたコオリーブトキ
写真提供: © Lars Petersson

全体としては、3種とも主な生息地はサントメ・オボ自然公園内にあることから、公園の保全が鳥の保全につながることを示しています。しかし残念ながら事態はそれほど単純ではありません。コオリーブトキは公園の南西部付近に集まる傾向がありますが、そこは最もアクセスが容易な場所であり、開発の対象となっています。最近30km2の土地で油ヤシ農園が開墾され、さらに巨大な水力発電ダムの建設案が上がっており、大きな危機にあるのです。ダム建設は、同種の保全の最重要課題です。

また、3種は全て天然林を好むことが分かりました。ですからこの生息地を手付かずのまま残すことが保全の最善策です。そのためにはどうすれば良いでしょうか?

 

安全な生息地

調査の次の課題は、モナモンキー、アフリカジャコウネコ、クマネズミ、ブラックコブラなどの外来種が3種の鳥にどのような影響を及ぼしているかを明らかにすることです。例えば、キナノキが森林の下層に生育していると、鳥の採餌が阻害されるでしょうか?さらには外来種以外にも、地域住民の木材や薪炭などの森林産物の採集による影響も評価する必要があります。

一つ確かなことがあります。これら魅力的な種の未来は、サントメ・オボ自然公園が効果的に管理されるかどうかによるということです。公園は法的には認められているものの、マンパワーと物資の不足により十分に履行されていません。それには資金が必要なのです。

「この貴重でユニークな生物多様性を守るためには、公園の規制の厳格な法執行と監視プログラムのための資金獲得に注力する必要があります。」とRicardoは述べています。

サントメ島ではこれまで人を原因とする絶滅は起きていません。是非この事実を維持したいものです。

 

報告者: Jessica Law

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