「フライウェイ・サミット」:これだけは知っておきたい

サミットでは世界の渡り鳥のフライウェイを守るための最善の方法を検討します 写真提供: © Shutterstock

423日より、世界の自然保護活動の有力者が集まり、渡り鳥の脅威となる問題を徹底的に話し合うためのサミットがアブダビで開催されます。

渡り鳥の生活は容易なものではありません。いるべき場所にたどり着くために、彼らは密猟、風力発電、公害、その他多くの脅威の攻撃から逃れなければなりません。しかもこれらの脅威は大きくなる一方です。その対策のために世界の鳥類学者、保護活動家、資金提供者、政治的影響力のある人たちが集まるのです。4月23日~26日にアブダビで開催される「フライウェイ・サミット」は「渡り鳥が直面する脅威にどのように取り組むのが最適か?」という質問に答えることが目的です。

このイベントで私たちは「2018年版世界の鳥の現状」をリリースします。制作に5年を掛けたこの極めて重要な資料には、世界の鳥の健全度だけでなく彼らが生息する生態系の健全度に関するデータがまとめられています。「地球の脈を取る」との比喩を用い、研究成果が保護活動の策定に活かされ、政治的キャンペーンの影響力を増強します。

 

鳥の殺傷を止める

渡り鳥の密猟を終わらせる

Barend van Gemerden―グローバル・フライウェイ・プログラム・コーディネーター、バードライフ

渡り鳥の密猟は、保護活動において世界各地で重要な問題となっており、一部では技術革新によりさらに悪化しています。地中海地域だけで毎年2,500万羽の渡り鳥が密猟で殺されたり捕獲されたりしています。他の地域でも密猟は広範囲にわたる問題となっています。鳥は様々な社会経済的あるいは文化的な動機で違法に殺されています。強力な法制度による効果的な法律施行が直ちに必要であるだけでなく、密猟ゼロを達成するためには渡り鳥と自然に対する人々の意識の変化が不可欠です。さらに、狩猟団体、自然保護NGO、政策立案者、資金提供者など多くのステークホルダーの長期的な協力が必要です。既に励みとなるような成功例も幾つかあります。

主要パートナー: 移動性野生動物種の保全に関する条約(CMS)

 

海岸の保全: 水鳥にとって重要な湿地

渡り性水鳥のための重要な沿岸湿地ネットワークの保全

Nicola Crockford―政策オフィサー、RSPB

多くの渡り鳥は、飛行する際にたどる陸と海の間の線と同じくらい、休息と栄養補給のために利用する沿岸湿地にも依存しています。けれどもこうした湿地はかつてない脅威にさらされています。埋め立て、公害、上流でのダム建設、外来種、海面上昇などです。これらの地域の保全は、統治が一本化しないために足踏みを続けています。そのため、複数の生物多様性関連の条約を横断する合同世界沿岸フォーラムなどの、沿岸域保全のための一体性のある国際的な政策の枠組みが必要です。沿岸IBA(世界遺産とラムサール指定を最上位とする)のフライウェイ・ネットワークは緊急に保全、復元されなければなりません。また漁業や、水産養殖業、製塩などに関わる民間部門の関与も重要です。

主要パートナー: ラムサール条約、CMS、生物多様性条約(CBD)

 

ハゲワシ類を救うための一大行動計画

複数種ハゲワシ類のための行動計画(CMS MsAP)の実施

Roger Safford―絶滅阻止プログラムマネジャー、バードライフ

アフリカとユーラシア大陸のハゲワシ類は危機的状況にあります。この象徴的な「影のヒーロー」は自然景観の清掃人として特別な価値を持っています。けれども彼らは様々な脅威に直面しています。主なものは毒薬ですが、電力施設への衝突や感電、生息地の劣化、餌不足などです。これらの脅威は根が深く、従って容易には解決できません。また、ハゲワシは分布域が広いため、様々な地域の脅威に直面します。保護の課題は多岐にわたり、すべての領域で革新的で、連携の取れたハードワークを必要とします。2017年に彼らを保護するためにCMS MsAPが採用されたことは重要なステップですが、今やMsAPと他の計画をさらに実行に移すべき時です。

主要パートナー: CMS

 

フライウェイというプラグを電力セクターに差し込む

風力発電と送電部門においてフライウェイの保全を主流化する

Noelle Kumpel―政策ヘッド、バードライフ

Charlie Butt―企業&自然パートナーシップ・マネジャー、バードライフ

悪化の一途をたどる気候変動の危険を避けるためには、化石燃料に依存した社会から低炭素社会に移行しなければなりません。バードライフは再生可能エネルギーへの移行を支援していますが、不適切な場所に設置され操業されている風力タービンや送電線に多くの渡り鳥が衝突あるいは感電し、命を失っています。新設あるいは既存の施設の場所は慎重に検討し、渡り鳥とその生息地への危険を避け、最小化するように適切な安全策が組み込まれねばなりません。私たちは関連課題を調べ、生物多様性、気候、持続可能な開発の実現に役立つ解決策の実施を加速させるため、企業、政府、条約、市民社会のための現実的な解決策を明らかにします。

主要パートナー: CMSエネルギー・タスクフォース、CBD

 

すばらしきノガンの保護

ノガンの保護: 現状、傾向、進展

Stuart Butchart―主任科学者、バードライフ

科学者は動態力学によって世界で最も重い飛ぶ鳥がいかに飛ぶことができるのかを示すことが出来ますが、ノガンの保護にはもう一押しが必要です。ノガン類は世界で最も絶滅が危惧される鳥の科に属し、26種中の15種が世界的に絶滅またはほぼ絶滅の危機にあります。私たちはノガン類が直面している保護上の問題を調べ、生息地の喪失と劣化、持続不能な狩猟、送電線との衝突や他の脅威に起因する死亡に対処するための解決策を見直し、種によっては飼育下繁殖が果たす本種の保護の役割を考察します。主なステークホルダーを集めてノガン保護のための活動のスケールアップと国際協力の強化をどのように行うことが出来るかを議論します。

主要パートナー: 国際フサエリショウノガン保護基金

 

市民パワー

フライウェイ保全のための能力形成

Julius Arinaitwe―パートナーシップ、能力、コミュニティ部門ディレクター、バードライフ

渡り鳥が飛んで行く所はどこでも誰かが見ています。フライウェイ上のあらゆる国で保全活動を行う人々や団体のより大きく強力なネットワークを構築する必要があります。既存のネットワークを強化し、取り組みがあまり進んでいない国において専門知識を蓄積することが、渡り鳥が直面している脅威に取り組むための鍵となります。フライウェイ保全に対する私たちの効率性と影響力は、より強力な連携と知識、経験の共有によりさらに大きくなるでしょう。フライウェイ・サミットでは、フライウェイの保全活動におけるプロジェクトの優先順位付けや実施方法、資金獲得方法などの能力形成について議論します。

主要パートナー: Converge for Impactウェットランド・インターナショナルMAVA基金

 

ハヤブサのために

セーカーハヤブサ保全のための世界行動計画

Nick Williams-プログラム・オフィサー(猛禽類)、CMS

セーカーハヤブサ(絶滅危惧IB類)は電柱での感電死、タカ狩りを目的とする持続不能な罠猟および生息地の劣化などの脅威により激減しています。2014年にCMS加盟国はセーカーハヤブサ世界行動計画(SakerGAP)を採択しました。そこには80以上の国、団体、科学者、鷹匠などのステークホルダーが、セーカーハヤブサの分布域全域で健全な野生個体群の復元を共通の目的として集まりました。会議では最新の保護活動の状況やSakerGAP実施計画要約の概要を示し、参加セクター全ての連携と相互支援を促します。

主要パートナー: CMS猛禽類覚書

報告者: Shaun Hurrell

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