不釣り合いな利益? EUバイオ燃料政策の経済学
4月17日、バードライフ・ヨーロッパ、欧州環境ビューロー(EEB)、運輸&環境(T&E)および持続可能な開発国際研究所(IISD)が、欧州連合(EU)はバイオ燃料産業を支援するために、キプロスの財政救済処置と同額の年間100億ユーロを使っていますが、同産業はその目的とする気候変動の緩和、農村開発、エネルギーの安全を達成していないことを明らかにする新報告書を発表しました。
‘バイオ燃料、幾ら掛かる? EUのバイオ燃料政策のコストと利益の見直し’と題するこの報告書はバイオ燃料業界がEUから得ている財政支援の金額をそのターンオーバーと比較して査定したものです。同時に報告書は2014年~2020年の間に10%再生可能エネルギー指令(RED)を達成することの財政的な影響も分析しています。
バードライフ・ヨーロッパ、EEB、T&Eから依頼された初期の調査は、すでにEUのバイオ燃料政策は運輸部門による温室効果ガス(GHG)の排出を減らすものではないことを示していました。もしバイオ燃料からの間接的土地利用変化(ILUC)による排出が計算に入れられると、現在市場に出ているバイオディーゼルの大部分は化石燃料を元に作られたディーゼルよりも多くのGHGを排出するでしょう。
100億ユーロという金額はキプロスへの財政支援額を毎年行うのと等しいものです。この金額はもしEU諸国が10%REDの達成を主張するなら2倍になるでしょう。2012年からの欧州委員会の提案は、RED目標に加算される食糧用作物からのバイオ燃料を5%に制限しています。この研究によれば、これにより炭素排出を減らすだけでなく、多額の金額を節約するでしょう。
「既に各国政府がバイオ燃料間で区別が出来ない輸入依存政策を財政支援することに苦慮しているように、この政策は得られるものに比べてあまりにも高くつきます。」とバードライフ・ヨーロッパのEU農業・バイオ燃料政策オフィサーのトゥリース・ロビンスは結びました。
注釈:ILUCはかつて食糧用農作物を作っていた土地を燃料用作物を作る土地に変更するプロセスのことです。食糧の需要は基本的に変わらないため、食糧はどこか別の未耕作の新しい土地で作らねばなりません。この未耕作地の新しい農地への転換は結果として温室効果ガス(GHG)の増加を招き、EUのバイオ燃料政策が目指している環境上の利益を蝕むことになります。