鳴禽類の沈黙
2016年度版レッドリストはインドネシアの人々の鳴禽類への愛は「汚れた愛」だということを示しています。持続不能なやり方で行われている罠猟が、多くの固有種を絶滅に追いやっているのです。
Pramuka市場の光景を見れば、一目瞭然です。首都ジャカルタにひしめく市場は、薄暗く、蒸し暑く、息苦しいほど窮屈です。歌声が鳴り響き、アンモニアの悪臭で涙が出ます。3メートルの高さに積み上げられ、数十メートルにわたって広げられた小さな竹籠の中には、自由を失った数千羽の鳥が押し込められています。野外で違法に捕らえられた鳥たちは売買、ペット、鳴き声の品評会の対象として終身刑の判決を受けたのです。
今回は19種のインドネシアの鳥が売買による影響を受けて「格上げ」されました。その第一が鳴禽類です。そのほとんどがインドネシア以外の国には生息していません。インドネシアには、ブラジルを除くと最も多くの世界的危惧種が生息していることを考えれば不思議なことではないでしょう。今回6種が絶滅危惧ⅠA類とされましたが、その中には以前から売買が危機の原因だということが分かっていたカンムリシロムクやオナガサイチョウが含まれています。
バードライフのプログラム担当Anuj Jainはインターネットによる野生生物売買が、新たな目に見えない深刻な脅威になっていると述べています。TRAFFIC(野生生物違法取引のモニタリングを行うネットワーク)が2015年に行った、ジャカルタの3つの主要な野鳥市場での調査では、僅か3日間で206種、19,000羽の鳥が売買されていました。
およそ98%はインドネシアの鳥で、違法取引によるものです。このうちの5分の1は固有種でした。TRAFFICの東南アジアのプログラム担当のSerene Changはこのことを「インドネシアの鳥にとっての最悪のニュース」と表現しました。
バードライフの主任研究員Nigel Collar博士を含む保護活動家はこれらの問題について対策を検討するために2015年9月に初めての‘アジア鳴禽類危機サミット’を緊急に開催しました。売買の対象となっている種の多さに何よりも驚き、彼らは最も懸念される種を明らかにしました。バードライフはその結果を2016年版レッドリストの評価に活用しました。バードライフの解析結果はショッキングなものでした。
幸いにインドネシアには既に割当量が設定されていない在来種の捕獲と売買を禁止する法律があります。この法律の強化が益々求められています。
「ブルーン・インドネシア(バードライフ・パートナー)の支援を受けてインドネシア政府は取締を強化し、特にジャワの入港地において、野外で捕獲した鳥を没収しています。」とMartinは言います。
TRAFFICの東南アジア地域ディレクターのChris Shepherdは、こうした取り組みに加えて業者が依然として大っぴらに違法に入手した保護鳥を販売している鳥の市場でもより厳しく取り締まることを推奨しています。「現在のまま鳥の市場が存続する限り、違法取引は続き、インドネシアでの野鳥保護活動を台無しにするでしょう。」と彼は言います。鳥の市場そのものを狙うだけでなく、インターネットによる野鳥売買という新しい脅威を食い止めるのには、革新的な法執行が必要です。
また、ブルーン・インドネシアは購買側の意識向上活動を考えています。それは旅行業者の思いを反映したものでもあります。「購入者のほとんどが、自分の行動が野鳥の個体群に及ぼす悪影響について全く理解していないのが現状です。教育が必要なのです。」とEaton言っています。
こうした言葉は胸に刺さります。Pramuka市場の多忙で騒々しい野鳥の砦という形で具現化された、ジャワの人々の鳴禽類への熱愛が、鳥を絶滅の方向へ進ませていることは、何とも皮肉で悲劇的なことです。正に「汚れた愛」そのものです。
報告者: James Lowen