鳥の種の10分の1が保護活動の網に掛からずに飛んでいる

最近種として認められたDesertas Peterl(和名未定、ミズナギドリ類)は
2014年版レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に分類されました。
写真提供:Olli Tenovuo

最近種として認められたDesertas Peterl(和名未定、ミズナギドリ類)は
2014年版レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に分類されました。
写真提供:Olli Tenovuo

350種を超える種がIUCN(国際自然保護連合)の絶滅危惧種レッドリストのためにバードライフ・インターナショナルによりこの度新たな種として査定されました。心配なことに、これらの新種の25%以上がIUCNのレッドリストで絶滅危惧種になっており、これは鳥類全体の率である13%よりもはるかに高く、保護活動を緊急に行わなければならない状態です。

2部からなる総合的分類見直しの第1部は猛禽類、海鳥、水鳥およびフクロウ類などの非スズメ目の種で、これにより361種が新種として認められました。これらは以前は‘亜種’とされていました。新しい分類による非スズメ目の種の合計は4,472種となり、これは以前の分類が種のレベルでの鳥類の多様性を10%以上低めに見ていたことを意味します。

「別の見方をすると、世界の鳥の10分の1が保護活動の網に掛からずに飛んでいたことになります。」とバードライフの科学部門のヘッドStuart Butchart博士は言いました。

ブラジルのBelem Curassow(和名未定: ホウカンチョウの仲間)やマデイラ諸島のDesertas Petrel(写真参照)などの種は世界的な絶滅危惧種にリストされています。コロンビアの美しいハチドリの1種Blue-bearded Helmetcrest(和名未定)の場合は、ここ70年ほど全く観察されていないことから、既に遅きに失したかも知れません。

どの分類群を種と認定するかを決める新しい基準が公平な条件を作り出し、それにより全ての種を公平に評価できるようになりました。また新基準は鳥や自然や人々にとって最も重要な場所、即ち地球上で最も緊急に保全する必要のあるエリア、に光を当てる場合の正確さが加味されました。

これまではダチョウは1種とされており、IUCNのレッドリストでは‘軽度懸念種’でした。ところが今回、ソマリア、エチオピア、ジブチおよびケニアで見られるSomali Ostrich(和名未定)は明らかな独立種と認められ、絶滅危惧Ⅱ類にリストされました。その個体数は狩猟、卵の採取、迫害などにより急激に減少していると考えられ、対策が取られなければ状況は悪化するでしょう。

今回バードライフはダチョウを2種に分けました。その一つSomali Ostrichは初めて絶滅危惧Ⅱ類に定められました。 写真提供:Peter Steward

今回バードライフはダチョウを2種に分けました。その一つSomali Ostrichは初めて絶滅危惧Ⅱ類に定められました。
写真提供:Peter Steward

「本種は世界の鳥に対する知識向上の必要性と、地球上の最も困難な場所での保護活動の必要性の両面に光を当てます。」とバードライフの種に関する担当者Andy Symesは言いました。

「IUCNレッドリストの最新の見直しは種の保護状況と優先的な保全活動を必要とするエリアを正確に特定する上での分類見直しの重要性を強調しています。バードライフが続けている評価作業のお蔭でSomali Ostrichなどの危惧種を早い段階で認識することがそれらの種を保護し重要なサイトを保全するための良いタイミングで的を絞った活動になるはずです。」とIUCNの生物多様性保全グループの世界ディレクターJane Smartは言っています。

新たに認められた種の評価と共に、2014年版レッドリストは既存種の状態を再評価しました。色鮮やかなBugun Liocichla(和名未定: ガビチョウ亜科ヤブドリ属)はインド東部のヒマラヤ山脈内のわずか3ヶ所で生息が知られているのみで、数ペアの場所が分かっただけです。近年の本種の生息地内を通る道路の建設と、統制の取れない火事によるダメージにより、本種は再び絶滅危惧ⅠA類に分類されました。また保護活動の成功により欧州ではヒゲワシの個体数が回復しつつありますが、世界的に見ると薬物死、生息地の攪乱、送電線への衝突などにより減少しており、その結果本種は‘軽度懸念’ではなく‘準絶滅危惧種’に査定されました。

2014年度のアセスメントは又幾カ所かの絶滅危惧種のホットスポットの重要性を取り上げています。今回新たに認定された種の多くは東南アジアに生息していますが、ここでは生物多様性が多大な脅威を受けています。この地域の一部は既に世界的に重要な固有種エリア(地球上の他の場所には生息しない種が多数居るエリア)に特定されています。インドネシアのタラウド諸島やサンギヘ諸島、セブ島などのフィリピン群島の一部などの幾つかの場所はこれまでに考えられていたよりも遥かにユニークな種が生息することが分かりました。

これらのエリアはサンギヘマメカワセミ(仮称)やセブアオバト(仮称)などの絶滅危惧ⅠA類に残された生息地を保全し種を守るために緊急に対策が必要です。これらの2種は最近記録がありませんが、両種共に少数が今なお生き残っている可能性があります。

インドネシアのジャワ島には保全上懸念すべき兆候があります。新たに種とされたキツツキの1種で絶滅危惧Ⅱ類に分類されたジャワコガネゲラ(仮称)とレッドリストの絶滅危惧ⅠA類に入ったジャワアオムネカワセミはこの島でいかに多くの固有種が進化したかを示すものです。けれども、ジャワの非常に高い人口密度と増大する開発がこれらの固有種の保護状況に影響を及ぼし、絶滅の危惧がある状態になっています。

「IUCNのレッドリストは、的を絞った回復活動を必要とする種を特定するためだけでなく、IBA(重要生息環境)を含む保全が必要な主要サイトや生息地を特定することにより保護活動の課題に集中するために大切なのです。2014年版レッドリストはこれからの保護活動と資金の割り振りの優先順位を定める助けになるでしょう。」とButchart博士は言いました。

報告者:マーチン・フォーリー

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