インドネシア・フローレス島におけるプロジェクトの活動報告

バードライフ・インターナショナル東京は、2015年度トヨタ環境活動助成プログラムの支援を受けて、インドネシアのパートナー団体であるBurung Indonesiaと共同で、フローレス島ブリリンにおける持続可能な森林資源の利用を推進するプロジェクトを実施しました(実施期間:2016年1月~2017年6月)。

このプロジェクトは、小規模農家からなる協同組合のネットワークを用いて、アグロフォレストリーにより生産しているキャンドルナッツを適正な価格で取引することで地域住民の生計を改善し、それにより森林破壊の圧力を低減することを目的に、以下の2つの活動を実施しました(プロジェクトの詳細はこちら)。

(1)キャンドルナッツの適正価格による取引の推進

(2)協同組合の組織運営やキャンドルナッツの品質向上のための能力形成

今回、本プロジェクトの成果を評価(注1)するため、2017年9月に現地を訪問してきましたので、その概要をご報告します。

 

(1) キャンドルナッツの適正価格による取引の推進

活動地であるフローレス島ブリリンでは、以前よりキャンドルナッツのアグロフォレストリーが行われていたものの、家庭ごとに個別にバイヤーに販売していたため、適正な価格で取引されず、人々の収入増につながっていませんでした。そこで協同組合が直接各農家からキャンドルナッツを買い取り、買い取ったキャンドルナッツをとりまとめて適正な価格で卸業者と取引する仕組みを構築しました。さらに、協同組合の取り組みを地域住民に告知し、会員の増加を図りました。これらの活動の結果、キャンドルナッツの農家からの買取価格は約1.5倍に上昇しました。また、協同組合として目標の33トンを大幅に上回る57トンのキャンドルナッツをジャワ島の卸業者に出荷できたほか、会員数もプロジェクト開始時の120名から280名と、2倍以上に増やすことができました。会員数が多いほど、より多くの人の生計改善につながる可能性があります。PRISMを用いた評価では、本プロジェクトにより実際に地域住民の収入増につながったことや、生計におけるキャンドルナッツの重要性が増したことを確認することができました。

キャンドルナッツの皮(下)と実(上)

 

初出荷の様子

 

(2) 協同組合の組織運営やキャンドルナッツの品質向上のための能力形成

協同組合によるキャンドルナッツの取引など、組織による円滑な事業運営能力を強化するため、組織の編成を見直したほか、運営管理や取引、買取などの部署ごとにマーケティングや取引などに関する研修を実施しました。その結果、協同組合によるキャンドルナッツの買取の実施や、買取価格決定の透明性、より明確な財務管理など、協同組合の様々な機能が定着・向上したことが確認できました。

また、各会員農家に対しても、キャンドルナッツの品質管理や仕分け作業に関する研修を実施ました。これにより、農家はどのような品質が求められているのかを理解し、基準を満たすキャンドルナッツの割合が向上しました。

キャンドルナッツの仕分けの研修の様子

 

協同組合の会合の様子

 

今回、プロジェクトの終了に伴い現地を訪問し、プロジェクトの成果を評価しました。その結果、協同組合の組織力や交渉力が着実に向上し、卸業者と適正価格での取引を継続できていることや、協同組合の職員や地域住民の品質管理などに関わる技術が向上し、地域住民の収入増が実現していることなどが明らかになりました。これらは、環境に対する地域住民の意識や行動を変えていくためには重要な成果と言えます。今後もBurung Indonesiaは当地での活動を継続し、本プロジェクトの成果が継続・向上するよう支援していく予定です。

地域住民とのワークショップの様子

 

地域住民とのワークショップの様子

 

キャンドルナッツの木

 

(注1)本プロジェクトの成果は、トヨタ自動車株式会社等から支援を受けて開発している環境活動評価ツール「PRISM」を用いて評価しました。PRISMは、プロジェクトで実施した研修への参加者数や野外調査の回数といった活動の結果ではなく、これらの活動により人々の行動や保全したい動物や生息地にどのような変化が生じたかを明らかにすることで、プロジェクトの成果をより適切に、かつ評価に使用できる予算が限られていても実施できる手法を提供することを目指したものです。

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