アイスランド訪問──鳥編

ヨーロッパムナグロ © HIH Princess Takamado

「レンズを通して」婦人画報誌2026年2月号

写真・文=高円宮妃久子殿下
協力[画像編集]=藤原幸一(NATURE’S PLANET) 編集=桝田由紀(婦人画報)、バードライフ・インターナショナル東京

 

2025年10月、私はグリムソン元大統領よりお声がけいただき、同氏が設立された北極サークル総会に出席するため、アイスランドに行ってまいりました。29年ぶり、2回目のアイスランド訪問です。前回の日程は大統領との昼食会のみで、半日間の滞在でした。今回は鳥の保全状況の視察や鳥の撮影、そしてアイスランドの歴史に触れる場所をご案内いただきました。記憶がまだ鮮明なうちに、今月と来月の2部に分けて、写真をご覧に入れたいと思います。今回は鳥編です。

最初の鳥はヨーロッパムナグロです。英名はGolden Plover。このように光があたるとまさにその名の通り、金色が美しいですね。春と秋の渡りの季節に日本を通過していくムナグロとよく似ています。

ヨーロッパムナグロ 27cm チドリ科
ノルウェー、フィンランドからロシアのタイミル半島西部にかけての極地で繁殖し、ヨーロッパ西部、地中海などの海岸で越冬する。わが国では沖縄、石川で記録されたことがある。
日本に渡ってくるムナグロよりひと回り大きく、脚が短いのでずんぐりした感じを受ける。声もヒー、ピューと聞こえ、ムナグロのキョビー、ピュリーとかなり違う。
© HIH Princess Takamado

 

下の写真は、海岸に下りた人に驚き、群が飛び立ったところです。この写真をじっくり見るとヨーロッパムナグロは翼の下が白く、脚が短めなので、飛翔時に足指の先が尾羽を超えないことが確認できます。この群はかなり長い間、くるくる飛んでから同じ海岸に戻ってきました。お気に入りの餌場なのでしょう。

© HIH Princess Takamado

 

このページの写真(web上では下の写真)はアイスランドカモメの若鳥で、ほかのカモメの若鳥と比べると、より淡いグレーで、やさしい雰囲気のカモメです。この若鳥を見つける前に、成鳥も見ることができました。ヨーロッパムナグロが飛び立った時、その向こうにほかのカモメ数羽と一緒に目をつぶって休んでいました。成鳥は全体的にとても薄いグレーで、セグロカモメなどに比べるとひと回り以上、小さい印象を受けました。

アイスランドカモメ 56cm カモメ科
北東カナダのバフィン島などで繁殖、冬は北米東部のセントローレンス湾などに渡るものと、グリーンランドで繁殖、冬は主にアイスランド周辺、少数がイギリスに渡るものがある。
日本では、北海道、千葉などで観察されている。
© HIH Princess Takamado

 

最後の2枚はライチョウです。上(web上では下1枚目の写真)のライチョウは真っ白に換羽していました。まだ雪は降っていませんでしたが、帰国後1週間ほどで初雪であったと聞きました。下の写真(web上では下2枚目の写真)のライチョウはまだ換羽の途中で茶と白の斑模様。10月半ばですので、日本のライチョウより1カ月半ほど早い換羽です。アイスランドほか北極周辺に生息するライチョウの換羽は「冬羽」と「繁殖羽」の年2回です。それに対し、世界の最南端に生息する日本のライチョウは、雪のない期間が長いため、秋羽の換羽を進化させ、年に3回換羽します。

ライチョウ 37cm キジ科
北極を取り巻くユーラシア大陸北部と北米大陸北部を中心に広く分布する。本州中部の高山に生息する日本のライチョウは、分布最南端の地に隔離された集団である。
日本の次に南に分布するのはピレネー山脈の集団、3番目はヨーロッパアルプスの集団で、これらの集団はいずれも氷河期が終わった後に高山に取り残された集団である。
© HIH Princess Takamado

 

© HIH Princess Takamado

 

私は日本で茶色いライチョウは撮影しています。しかし日本で白いライチョウを観るためには、冬の雪山に登る必要があります。それなりの体力や技術が必要でしょうし、もし何か起こったら、多くの方にご迷惑をおかけすることになってしまいますので、「冬に雪山まで行って自分の目で白いライチョウを観る」ということは、夢のまた夢と諦めておりました。

私たち日本人にとって「ライチョウは山にいる鳥」。したがって、地元の鳥類関係者が車を道端に止めて、「ライチョウがあそこにいる」と平原を指さした時には、一瞬、何の話だか吞み込めませんでした。そしてその次の瞬間、初めて見る野生の白いライチョウにテンションがあがりました。案内の方曰く、「神経質な鳥ではないので、二人だけなら三脚を持って近づいても逃げないであろう」とのこと、生まれて初めて白いライチョウに接近。何枚も写真を撮ることができて、大満足でした。

午前中、2カ所にて、計4羽のライチョウを観察。写真のライチョウ2羽が最も白い個体と最も茶色い個体の両極端な色味で、残りの2羽はその中間の換羽状態でした。ライチョウの英名はRock Ptarmigan。写真でもおわかりいただけるように、岩の多い場所に生息しています。日本でもライチョウは、かつて岩鳥とも呼ばれていました。この鳥にとって、岩場は隠れ場所として重要であるからなのでしょう。日本アルプスの上でも同じように岩の多い場所にいました。

アイスランドは人口が40万人弱。首都から外に出ると、あまり人とは会いません。誰も住んでいない広大な自然ーちょっとだけうらやましく思ってしまいました。

 

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