Ana Carneiroが見るアホウドリ保全の現状(後編)

3.5mにもなる翼を広げるワタリアホウドリ

前編に続き、当団体の海鳥生態学者であるAna Carneiroに、まだ知られていないワタリアホウドリと漁船の現状についてリアルタイムに近い目線から話をしてもらいました。Ana自身の事や、「南半球アホウドリ物語」の主人公のワタリアホウドリのママについて紹介してもらった前編はこちらからご覧ください。後編では、Anaが行っている研究や、現地の生活から直接学んだ事についてさらにお伝えします。

最近行った調査について教えてください。また、どのような技術を使っての調査だったのでしょうか。

今回の調査では、ほぼリアルタイムに漁船を監視できる最先端の装置を使用しました。違法、無報告、無規制(IUU)漁業などを検出することもできる画期的な手法です。今回使用した装置(ロガー)は他の発信機などと同様に、鳥の背中の羽に取り付け、採餌で海に出ているときの位置情報を記録します。他のロガーと違う新しい機能は、周囲の漁船から発信されるレーダーを感知することもできるのです。漁船を含む全ての舶は、安全および操業上の理由でレーダーを使用しているため、鳥と船が接近していることを感知できるのです。

この調査によって、混獲がいつどこで発生するかをより正確に解明し、海鳥の混獲問題に関する知識の向上につなげられることを願っています。調査結果は、混獲問題の削減と順守のモニタリングの向上に役立ちます。

調査のため、ロガーをワタリアホウドリに取り付けるAna

このユニークな調査での発見は、アホウドリの保全にどのように役立つのでしょうか。

1960年代以降、漁業による混獲のため、サウスジョージア島で繁殖するワタリアホウドリの数は壊滅的に減少しています。2006年以降は、サウスジョージア島周辺海域で操業している漁業では、南極海洋生物資源保存委員会(CCAMLR)のもとで導入された規制により、海鳥の混獲は取るに足らないほどのレベルにまで減少しました。しかし、アホウドリ類は非常に長い距離を飛ぶことができて生息範囲がとても広いので、国の管轄区域を超えた公海などにおいては、今もなお混獲されてしまっています。

現状が改善されず、規制が弱いまたは施行されない状態が続くことは、ワタリアホウドリや多くの他の海鳥にとって、混獲が大きな脅威であることを意味しています。ワタリアホウドリが生息する全ての海域が、サウスジョージア島周辺海域と同じくらい安全にするために、私たちの調査結果が貢献できることを願っています。

抱卵中のワタリアホウドリ

サウスジョージア島のバードアイランドで調査中、一日のスケジュールはどんな感じだったか教えてください。

朝食はいつも基地で12人の仲間とともに食べました(冬期は4人のみ滞在しています)。次に、アホウドリに取り付けるロガーをプログラミングし、熱収縮性のプラスチックを使って防水加工します。準備ができたら調査しているコロニーへ向かい、ワタリアホウドリが巣に戻るのを待って1日を過ごしました。ワタリアホウドリは抱卵期間中、夫婦が交代で卵を守りながら餌を探しに海にでかけます。なので、新たにロガーを装着するか、海から戻ってきたアホウドリからロガーを回収しました。夕方には基地に戻って夕食を食べ、回収したロガーからデータを読み取り、その日得たデータを全て入力をします。寝る前は、リラックスしておしゃべりをしたりする時間です。夕食とパン作りは当番制で、土曜日の夕食はフォーマルなコース料理を作り、誕生日やその他のお祝い事などのイベントを楽しんだりもしました。

保全の最前線からみて、アホウドリにとっての最大の脅威は何ですか。また、私たち一人一人に何ができるでしょうか。

他の海鳥と同様、アホウドリ類にとって主な脅威となっているのは、漁業による混獲です。混獲は主に、海面で餌を探しているときに餌のついた釣り針に引っかかってしまったり、網に引っかかったり、ケーブルに衝突してしまったりして、最終的に溺れてしまう事で発生します。最近の研究では、海鳥が直面するいくつかの主な問題に対処することにより、個体数の減少を改善することができるとわかっています。はえ縄漁では、トリライン(風に揺れるロープで海鳥を怖がらせて船に近づかせないようにする)、夜間投縄(夜に漁具を仕掛ける)、加重枝縄(漁具に錘を付けてはやく沈める)、などの混獲回避策を実施することで、海鳥の事故死を効果的に防ぐことができるんです。皆さんができることの1つは、海洋管理協議会(MSC)のラベルがついた持続可能な水産物を選ぶようにすることです。この認証ラベルは、その水産物が海鳥に安全な方法で持続可能な手段で捕られたものであることを証明しています。

「南半球アホウドリ物語」の主人公たちに会う貴重な体験をしましたね。アホウドリのような素晴らしい海鳥と間近で仕事をすることはどんな感じだったか、少し教えていただけますか。

唯一言えることは、アホウドリたちと一緒に働くことができたのは、信じがたいほど感動的なものでした。絶滅から救うためなら私たちができること全てをするに値するほど、アホウドリたちは本当に素晴らしい鳥なんです。

ワタリアホウドリにそっと近づくAna

漁業による混獲からアホウドリ類を守るために特別に編成されたチーム、アホウドリ・タスクフォース (ATF)が、アホウドリ類が多く生息する地域の現場で活動しています。ATFへのご支援は、英国王立鳥類保護協会(RSPB, バードライフのパートナー団体)を通して受け付けています。

今回ご紹介したAnaのプロジェクトは、Darwin Plusからのご支援をもとに、バードライフ・インターナショナルと英国南極調査隊が協働で行っています。

写真:Ana Carneiro

原文は(前編後編)はこちらからご覧いただけます。

 

 

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