EUは気候変動対策の野望を保てるか?

松林
写真提供: Elvis Kennedy Flickr media commons

気候変動への取り組みは、国境を越えた活動を必要とする世界的課題の良い例です。多くのEU市民は気候変動を深刻な問題と考えており、政府と企業がこれに取り組むべきであると信じています。EUに加盟していることの大きな価値の一つは、環境保全(社会的公平と合わせて)であると多くの市民が考えています。

気候及びエネルギー政策はすでにEUの核心部にまで影響を及ぼしており、Brexit(英国のEU離脱)があろうとも市民がEUには正当性と目的があると感じている部分なのです。EU加盟国は結束して炭素ガス排出を削減し、エネルギー生産を変更する極めて野心的な(それでも気候変動を安全なレベルまで下げるには不十分ですが)全体目標を掲げましました。

けれどもこれらの目標を達成する時期の話になると、ほとんどの加盟国は国ごとの目先の利益を重視し、約束よりも少なくて済む方法と、それが許される理由探しばかりになっています。

7月に欧州委員会は農業、運輸、住宅供給(努力分担規制)および「土地利用、土地利用変化及び林業(LULUCF)などの分野での排出削減あるいは排出源の撤去を増やすための提案を公表しました。この過程でEU加盟国は、理論的には費用効率の良い対策を行うのに役立つはずの「弾力性」に対するロビー活動を行っていました。

加盟国は炭素排出(および除去)に対する計算規則を国の特殊事情を盾にして弄び、排出は他の政策分野の下で対処されていると偽り、どのような活動でも持続可能なものだと称しています。たとえそれが排出削減にならず、他の環境破壊の原因になるとしても。

政治的観点から排出削減に取り組むのが困難な部門との戦いを避ける一つの方法は、例えば植樹を行うなど、他の分野での他の活動により相殺(オフセット)することです。欧州委員会は加盟国に対して新しい‘努力分担規制’の対象となる農業、運輸、住宅供給および他の分野での炭素排出を280メガトンまではこのようなオフセットで補うことを認めました。これは対象産業での排出削減活動の合計の10%に相当します。ただし、これらの活動が気候変動緩和に貢献するかどうかや、環境に安全なものであるかどうかの証明は求められていません。

LULUCF政策提案によって、欧州委員会は、バイオエネルギーによる排出は土地利用および森林部門で計算されるため、再生可能エネルギー生産者はこれを考慮する必要はないと表明しました。これは問題を正面から取り組むのではなく、生物エネルギーの排出責任を他の分野に押し付け、‘排出削減’の功績とインセンティブを別の部門に与えるのと同じことです。これはバイオエネルギーが実際に炭素排出量を削減するかどうかは不確実なやり方と言えます。

排出削減課題への約束を避ける最後の頼みの綱は、監督下にある活動を実際の気候や環境への影響に関係なく持続可能なものとして分類することのようです。例えば、欧州委員会がバイオエネルギーの持続可能性に関する新政策を準備している傍ら、多くの企業・産業がバイオマスは‘持続可能’に管理された森林や他の生態系由来でさえあれば、気候にも良いものとして言い張るやり方に殺到しました。同様に国も‘持続可能な’農業からの排出増加が予想されているのは無視して、共通農業政策(CAP)が持続可能な農業を保証するとの声明を出すことに熱心です。生物エネルギーにとっても農業にとっても、排出削減のためには、現在の空疎なスローガンを越える新しい政策や対策が必要です。

多くの政治家が国内のメディアでは彼らがどれほど国の利益を守り、欧州内での交渉で追加の気候変動対策を課せられるのを避けたかを誇示する一方で、他の国の前では彼らは欧州の共同努力を称賛し、それにコミットする姿勢を示しています。欧州連合がその力を示すのはこのような時です。全員が同じ船に乗り努力を結集させることにより、私たちは気候変動のような国境のない重要な課題に対しもっと効果的に取り組むことができます。

EU内で2050年までに95~100%の排出削減が必要とされる現在、どこの国あるいはどの産業分野が大幅な排出削減を避けることが出来るかどうかなどを議論している時間はありません。活動は欧州全域で必要なのです。今からすぐに始めましょう。

 

報告者: Sini Eräjää

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