メキシコの村でのエコツーリズムの魔法
キオビカオグロムシクイの鮮やかな色は滅多に見ることが出来なくなっていました。幸いにバハ・カリフォルニア・スル州の住民はこの小鳥が好きになったようで、エコツーリズム業に携わるようになっています。鳥類研究がこのメキシコの州でどのように種の保全に活かされているのかご紹介します。
トードス・サントノスはメキシコの太平洋岸のシエラ・デ・ラ・ラグナ山脈のふもとの小さな海岸沿いの村です。かつてはこの地域のサトウキビ栽培の中心地として栄えました。最近では、政府がこの村の伝説と美しさによりから‘魔法の村’と呼び始めて以来、観光客が立ち寄る場所としてよく知られています。
けれども観光業の際限のない拡大は、この地域の自然にとっては脅威の増大を意味します。つまり、鳥のための土地が減り、景観は益々劣化します。生息地の喪失はバハ・カリフォルニア・スル州に点在するオアシスに住む絶滅危惧種キビオカオグロムシクイにとって特に憂慮すべきことです。調査によれば成鳥の個体数は1,000~2,500羽で、3,800平方キロメートルの砂漠の中のオアシスの累計30㎢に生息していると推測されています。
キオビカオグロムシクイなどの種を保全するため、バハ・カリフォルニア・スル自治大学(UABCS)の鳥類研究所の研究者たちはプロナテゥラ・ノロエステ(メキシコのバードライフ・パートナー)と共同で鳥類の生息環境の保全につながるような科学的調査に基づく持続可能なビジネス・モデルの開発を行っています。
自然を守るために人を助ける
IBA(重要生息環境)プログラムによって、バハ・カリフォルニア・スル州にはメキシコで鳥にとって最も重要な場所があり、もし開発がこのまま進めばそれらが失われる可能性があることが明らかになりしました。
自然にも人にも役に立つ解決策を模索する中で、UABCSの研究者は同州でのバードウォッチング・ツーリズムを開発するのに必要な自然条件のデータベースを作成しました。このデータベースを使って彼らは地元の人たちを、自然を損なうことなく興味深い鳥を発見し、識別することのできる専門ガイドとして訓練しました。
「UABCSが得た科学的知見はプロナテゥラにより組織されたエコツーリズム・プログラムを通して地元のコミュニティに伝えられ、経済的にも実行可能な環境に優しい活動が生まれました。」とUABCSの教授で研究者のロベルト・カルモナ・ピーニャ博士は言いました。経済的利益はバードウォッチングのガイド・サービスを提供する地元のコミュニティに直接入ります。間接的にはホテルやレストランのオーナーや地元の芸術家などの様々なサービス提供者もこのプログラムから利益を受けます。
複雑な問題に対する基本的な研究方法
UABCSの鳥類研究は主として生物学的特性のモニタリング、調査、解析などから構成されます。これらのデータは専門家が個体群の状況を知り、保護の目的に利用できる分布と個体数のモデルを作るのに役立ちます。
「私たちは隔週および月次のモニタリングを行っています。頻度は種及び季節により変わります。また遠征を行い、定点観測による絶滅危惧種および希少種の同定と個体数カウントを行います。」とロベルト・カルモナ・ピーニャは言いました。
これまでにUABCSはこの地域で450種余りの種を記録しました。その中の3種は以下の固有種です: クロビタイサファイアハチドリ、ハイイロツグミモドキ、および前述のキオビカオグロムシクイ。
このような科学的調査は、 ‘環境・自然資源事務局’によるバハ・カリフォルニア・スル州の固有鳥類などの保全を主目的とするプロジェクトの実施・管理を行う上で重要な基礎となりました。
「調査の状況よりもまず、私たちはトードス・サントノス村のキオビカオグロムシクイの保護区を設立するための技術面および管理面での進展を期待しています。政府の支援によって保全のための管理計画を実施することが可能になります。」とプロナテゥラの法定代理人のゴンサレス・カリージョは言いました。
プロナテゥラは、こうしたアウトリーチ・プログラムと地元民との知識の共有などの取り組みによって、いかにしてトードス・サントノスの住民がキオビカオグロムシクイの保護に益々関心を持つようになったかを見て来ました。町に行けば、地元住民がどれだけこの黄色い美しい鳥を彼らの魔法の町のエンブレムにしたがっているのか分かるでしょう。
報告者: Irene Lorenzo
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