ブラジルのアホウドリ・タスクフォースの一員として

漁船の近くを飛ぶワタリアホウドリとノドジロクロミズナギドリ

午前1:30、ブラジル南部のリオ・グランデにあるTorquato Pontes Pescadosの埠頭から出航しました。25ノットの風が船を揺らしているのにかかわらず、船長の正確で安全な操縦で、船は港を離れていきます。

強風が収まらなかったため、大きな音を立てて波がデッキに打ち付ける中、乗組員は朝6:30に仕掛けた最初のはえ縄を引き揚げなければなりませんでした。はえ縄のロープを1本ずつ引き揚げていくと、1ダース以上のホワイトフィッシュ、3メートルの長さのメカジキ、100kgを超えるキハダマグロが釣れました。しかし、私たちが注目すべきもっとも重要な点は、混獲回避措置を使ったおかげで、海鳥が一羽も漁具にかからなかったことです。

このような漁船で獲られる高価な魚のおかげで、浮きはえ縄漁は世界でもっとも収益性の高い漁業の一つになっています。一匹のキハダマグロは、ブラジルで最高10,000レアル(200,000円)で売られます。

三日目の午前7:30、この航海中最初の遭遇となる巨大な鳥が現れました。三羽のワタリアホウドリです。乗組員の頭上を優雅に飛びながら、この日は船の近くで一日過ごすことを決めたようです。

「南半球アホウドリ物語」を通して既にご存知かもしれませんが、驚くべき生態のワタリアホウドリは、亜南極地帯に巣を作り、餌を求めて南アメリカ沿岸まで何千㎞もの旅をします。広げると3mにもなる翼で、南氷洋の風を上手くとらえ、長距離を楽々と飛んでいるように見えます。

乗組員がはえ縄を引き揚げている間に、優雅に飛んでいる3羽のワタリアホウドリたちに、数羽のマユグロアホウドリ、ノドジロクロミズナギドリ、オオフルマカモメが加わりました。やがてお腹をすかせた鳥たちは、1日の漁獲の処理の際に廃棄された残渣を食べるため、海面に降り立ちました。翌日は、今シーズン最初のズキンミズナギドリが現れました。大西洋にある英国領土で繁殖するこの絶滅危惧種は、時折ブラジルやナミビアのアホウドリ・タスクフォースによって観察されています。

このような漁の旅では、釣り縄が波や潮によって摩耗し、切れてしまうことが時々あります。どこかに行ってしまわないように、乗組員たちが漂流している漁具を見張ることが大事です。しかし、このように操業できない時間は、乗組員たちが休憩してコーヒーを飲みながらお互いに楽しい話をするいい機会にもなるのです。ある日、はえ縄のメインのロープが3回切れてしまい、漁具を見つけ出すのに数時間もかかってしまうということがありました。幸い日没前に発見し、乗組員はピンクと紫色に染まった美しい空の下で漁具を回収することができました。

船長は別の漁場に移動することを決断し、マグロの大群を求めて、乗組員は夜が明ける前に仕掛けを深い海域に投げ入れました。その海域は特に栄養が豊富な海で、昔は捕鯨者の間でクジラ類が多く生息する場所として知られていました。その海域で漁をしている間、幸運にもイルカが船首でジャンプしたり波に乗っている姿や、40匹ものゴンドウクジラの群れ、好奇心が強くて浮きで遊び始めたシャチも見ることができました。

しかしそこでの漁がうまくいかなかったため、船長はさらに遠くの海、ウルグアイとの国境近くで海岸から300kmほど離れたあたりまで移動することに決めました。この決断は功を奏し、出港後10日目に一番多くの魚を獲ることができたのです。

漁に出てから16日目、港に戻る日となりました。今回の漁ではアホウドリが1匹も混獲によって命を落とすことはありませんでした!これは注目に値する結果であり、混獲回避措置、それからアホウドリ・タスクフォースと漁船乗組員の協力がいかに有効かを物語っています。私は、漁業が海鳥とより良い関係を築く方向に向かっていることをかみしめ、高まる気持ちと共に帰路につきました。

アホウドリ・タスクフォースの一員として、保全の最前線である現場で活動できることを誇りに思います。また、乗組員の一人として、多くの時間を海で過ごす漁師さん達から学びつつ、私たち人間の活動が世界中のアホウドリ達に及ぼす影響への関心を高めることができ、嬉しく思います。

ブログ記事の文章と写真を提供していただいた、ブラジルのパートナー団体Projeto AlbatrozのGabriel Cananiさんに感謝いたします。

 

執筆者:Stephanie Prince
原文はこちら

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