何故農業がヨーロッパの生物多様性に対する最大の脅威なのか?

‘EU農耕地の鳥指標’によれば、1980年以降に農耕地に生息する普通種の鳥の個体数がEU全体で57%減少しました。
写真提供: Pierre Commenville

ヨーロッパでは過去数千年かけて農業が自然の景観を変えて来ました。現在陸地のおよそ40%が農地となっており、ヨーロッパに生息する種の半分以上が農耕地の環境を利用していると推測されます。ですから農業がヨーロッパの生物多様性に大きな影響を及ぼしていると聞いても驚きではありません。

だからこそ、EU(欧州連合)加盟国自身が、農業は単独で最大の生物多様性への脅威であると特定したのはショッキングなことだったのです。

数について

 ‘EU農耕地の鳥指標’はEUの農耕地の普通種(コキジバトやゴシキヒワなど)の個体数が1980年以後57%も減少したことを明らかにしましたが、特にEUに昔から属している国ほど減少の度合いが大きなものでした。

 ‘EU自然状況報告書’は農業関連の活動(耕作方法の改変や放牧のやり方の変化)が最も大きな鳥への脅威であることを示しています。生息地指令(Habitats Directive)の対象となる鳥以外の種においても、農業は圧力と脅威として上位にランクされる頻度が最も高い2つのうちの1つです。環境に関しては、施肥と家畜放牧の変化が上位ランクの圧力と脅威として報告される頻度が最も高いものです。

同報告は農業と草原環境に関係した鳥の半分以上が劣悪な保護状況下にあることを示しており(25%が絶滅危惧、28%が準絶滅危惧、減少、激減している種)、欧州版レッドリストではヨーロッパで最も危惧される鳥のグループとされています。

ヨーロッパでは農業に何が起きているのか?

土地利用の変化および農業の拡大と集約化が1970年代以後の農耕地の鳥の減少の主な原因であることは科学コミュニティにより広く認められていることです。一方、辺縁地域や山岳地域では農地の放棄が主たる原因です。

農耕地の鳥の減少の主因は地域によって異なります。ヨーロッパ北部と西部では化学肥料と殺生物剤の使用の増加と、作物や輪作の変化が影響しています。中部および東ヨーロッパでは、管理強化(農産物の収穫量増加や土地の休耕期間の短縮のためにより多くの資金、労働力および新しい方法を導入すること。休耕地は鳥の繁殖地として重要)が原因です。地中海地域では農耕地の集約化と放棄の両方が問題です。

EUにはこれを止める法律はないのか?

農業に変化をもたらした要素の一つがEU共通農業政策(CAP)です。CAPは昔からの低集約的農業(そこでは耕作期間の間に土地を休ませていた)の放棄を招き、より集約的な産業レベルの農業をもたらしました。これが生物多様性に負の影響を及ぼしたのです。

農業の生物多様性への影響を緩和することを視野に入れたCAPの改革は継続的に行われており、実際に効果が上がる方法へと動いています。例えば、環境に優しい農作業を支援する農業環境対策の実施に対して農業補助金の支払いを関連させるなどです。けれども、不十分な実行力、抜け穴、資金不足などの理由でその効果は上がっていません。

2014年のCAP‘改革’は実際には大きな後退で、土地被覆と環境の両面で本質的に中身の伴わない環境対策でした。科学者はこの新しい‘環境’ルールは環境的公共財を意味のある成果は期待できず、EUの生物多様性戦略に貢献することはないだろうとの結論を出しました。

けれども、私たちが望めば正しく、正常に機能させることが出来る

ケンブリッジシャー州にあるRSPB(英国のパートナー)が所有する450エーカーの‘希望’農場は、農業環境スキームと野生生物に優しい農作業を含む適切な方法は利益が上がる農場を維持する上での障害ではないことを示しています。

この農耕地には作物、牧草地、生垣、森林が混じり合っています。昆虫や種子の豊富な環境の創出や、生垣や溝堀りを3年に一度しか行わない(鳥の営巣と採餌を守るため)などのグッドプラクティスとなるような農業は鳥の数の増加を助け、この場所で繁殖する新しい種を惹きつけています。

この農地を購入した2000年以来、繁殖する鳥の数は140%増加し、ヒバリ、ムネアカヒワ、キアオジ(これらの全てがEUでは減少している)の数は3倍になりました。これは優れた計画と実行方法があれば生物多様性の減少を止めるだけでなく、反転させる効果があることを示しています。

 

報告者: Christina Ieronymidou and Sanya Khetani-Shah

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