地中海地域の渡り鳥の保護
年に2度、本能により約百万羽の鳥が北ヨーロッパやアジアの温帯や北極帯の繁殖地と、西および南ヨーロッパ、地中海地域、サハラ砂漠以南のアフリカの温暖な地方の間を信じられないような旅をします。
その壮大な数千キロにおよぶ旅の中で、鳥はアフリカーユーラシア・フライウェイ沿いで二つの自然障害に出会います。地中海とサハラ砂漠です。たとえ彼らがこれらの障害を越えることが出来ても多くが人工的な危険によって死んでしまいます。
人工的な危険とは?
バードライフによる地中海地域における密猟の範囲と規模の初めてのアセスメントにより、年間120~360万羽の主として鳴禽類の鳥が違法な銃猟者や罠猟により殺されていると推定されることが分かりました。
渡り鳥にとってのその他の深刻な脅威は送電線と風力タービン(感電と衝突の原因になる)および重要な採餌や休息場所の喪失と劣化です。コキジバト、オグロシギ、マキバタヒバリなどが姿を消しつつあります。またアフリカのサヘル地域(サハラ砂漠南縁)の砂漠化の増大が予想される気候変動はサハラ砂漠を渡る鳥の生き残りの道を益々厳しいものにするでしょう。
どのような計画があるか?
バードライフとそのパートナーは2020年までに渡り鳥にとってのより良い将来を提供し、渡り鳥の素晴らしさと美しさの研究と認識を促すためにアフリカ-ユーラシア・フライウェイのための戦略を策定しました。
このフライウェイ戦略の一部として、バードライフは、地中海地域の渡り鳥を保全するために、専門知識を共有し、地中海規模でのイニシアティブを共有できる人々と団体のネットワークの開発と拡大を目指しています。MAVA基金の支援による‘地中海におけるフライウェイ保全のための能力開発’イニシアティブでは20以上のNGOが加わって‘地中海フライウェイ保全ネットワーク’を作っているところです。
その第2段階(2015-2017)では、再びMAVAの支援により同プロジェクトは地元の人々、政府および国際社会と共同で活動する、ダイナミックなNGOのネットワークを強化する予定です。
既にどんなことが実行されているか?
このプロジェクトの一環として既に保護活動が一部の国で実施されています。
バードライフ・キプロス(同国のパートナー)は鳴禽類の違法な罠猟をやめるために全ての利害関係者を一堂に集めて同国初めての国家計画を批准するように政府に対するロビー活動を行っています。「私たちは密猟者に包囲された小さな島です。ですから、この活動を行っているのが自分一人だけではないということを知るのは本当に大切です。」とバードライフ・キプロスの調査コーディネーターのMartin Hellicarは言っています。
モンテネグロではCZIP(モンテネグロのパートナー)によりバルカン地区のサスコ湖とUlcinj Salina(地名) の2ヵ所の渡り鳥の重要な中継地に対して狩猟が禁止されました。
クロアチアではBIOM協会が同国唯一のコチョウゲンボウのコロニーの採餌場所に飛行場を作るという計画に反対するロビー活動を行い、地元の政治家にこの計画を諦めさせました。
レバノン自然保護協会は狩猟許可証の取得を望む人たちに責任ある狩猟の訓練コースを実施しています。同協会は規制された持続可能な狩猟を促進するために‘責任ある猟区’も試験的に進めています。
バードライフのチュニジアのパートナーAAO(野鳥の友の会)は‘エネルギーを鳥に優しいものにしよう’をテーマにして‘世界渡り鳥の日’を祝いました。
マケドニアではマケドニア生態学会が渡り鳥の保護を促進するための映画を作っています。
マルタ共和国では2015年4月に春の狩猟を止めるための歴史的な国民投票が行われ、その期間にバードライフ・マルタとNGOの連合は春の狩猟に反対する国民的キャンペーンを主導しました。狩猟反対国民投票は僅か1%以下の差で否決されましたが、国民のほぼ半数が春の狩猟を止めたいと思っていることを示しました。
バードライフは8月の英国バードウォッチング・フェアで汎地中海地域の科学報告書により、鳥の密猟の範囲と規模を示して国内外での意識向上を図っています。
「渡り鳥の保護には多くの強力で、創造性の豊かな、継続性のあるNGOの力を必要とします。これこそバードライフ・パートナーシップが持っている強さであり、既に良い結果が出ています。」とバードライフのパートナーシップ・地域ディレクターのHazell Shokellu Thompso
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報告者: Claire Thompson
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