アホウドリ・タスクフォースが2017年度に成し遂げた7つの驚くべきこと

マユグロアホウドリ 写真提供: © Stephanie Winnard

10年以上に亘り、アホウドリ・タスクフォースは漁業を海鳥にとって安全なものにするために努力してきました。地域の人々、政府や漁業関係者との活動により、同タスクフォースはバードライフの最も成功を収めたプログラムの一つになりました。2017年度に達成したことをご紹介します。

船酔い、悪天候、そこら中に広がるイカの臭いをものともせずに漁船に乗って海で数週間を過ごした後、陸地に向かって航海する場面を想像してください。次に、雄大なアホウドリが頭上を飛ぶのを見て、無事に採餌の旅を終えて雛の元に帰って行くのを知る場面を想像してください。

世界で最も絶滅の恐れがある海鳥のグループの一つであるアホウドリ類にとっては、一つでも多くの命が救われることが大きな違いをもたらします。現在、この‘海の王’は餌を求めて潜水する時に漁具に絡まったり、釣り針に掛かり悲劇的な死を迎えています。実際にこのような偶発的な‘混獲’がアホウドリ類の減少の原因の一つとなっています。

幸運にも状況は変わりつつあります。2005年にバードライフとRoyal Society for the Protection of Birds(英国のパートナー団体)がアホウドリ・タスクフォース(ATF)を結成しました。これは世界中で混獲被害が著しく多い漁場で海鳥を救うため、政府、地域の人々、漁業者と共に活動する混獲防止専門家の国際チームです。そして彼らは成功を収めています。2017年4月から2018年3月までの間だけで彼らは次のようなことを成し遂げました。

1.新技術の開発

ブラジル: 外洋はえ縄漁

海鳥が届かない水深でのみ釣り針を放つフックポッド

ATFはブラジルの外洋はえ縄漁で、2,000個のフックポッド(釣り針を収める容器)の洋上実験を行いました。この小型の再利用可能な器具には、アホウドリが届かない水深10m以上で初めて釣針を放つよう、水圧によって器具が開くメカニズムがくみこまれています。2017年5月~10月の間に38,000本の釣り針がフックポッドと一緒に使われ、混獲によって死んだ海鳥は4羽だけでした。漁師からはフックポッドに関して前向きな意見をもらい、フックポッドによる魚業への悪影響はなかったとの報告がありました。この成功の結果、フックポッドがはえ縄漁で本格的に使われるようになりました。これと同時に、漁師が従来使用していた使い捨てのプラスチック製のグロースティック(光る棒)に代わり、再利用可能なLEDライトも使用されています。

2.重要な環境保全の賞にノミネートされた

チリ: まき網漁

チリでのまき網漁は海鳥の命を救うだけでなく費用の節約にもなる

チリではATFが開発し試した新しい漁網で混獲を98%も減らしただけでなく、1隻当たり3,000米ドルの節約をもたらしました。この漁網は網自体を800㎏も少なく使っているので、従来の物よりもはるかに安く作れるのです。このプロジェクトの成功により2018年のラテンアメリカ・グリーン賞にノミネートされました。もう一つの大きな成功は、漁業に永続的な変化をもたらすために、チリの伝統漁業連盟などの主要な投資者にこの漁網の販売促進が出来たことです。

3.法執行機関の訓練

ブラジル: 外洋はえ縄漁

マユグロアホウドリ
写真提供: © Fabiano Peppes

海鳥を寄せつけないようにするトリラインの使用は、加重枝縄(錘をつけた釣り糸)や夜間の投縄など海鳥への安全対策と同様、2014年以降はえ縄漁漁船に義務づけられました。しかし政府機関が漁業を現場で監視することがなかったため、この規則を執行するのは困難でした。そこで2017年にATFは混獲防止のために地元当局が知っておくべき事項を含めた訓練を、連邦警察海洋特別班と共同で港湾監視官向けに行いました。政府も規則の施行のために港湾監視官の増員に同意しました。

4.84隻で海鳥死亡率ゼロを達成

ナミビア: 底引きトロール漁

トリラインにより、ナミビアの漁場でアホウドリの年間混獲死ゼロを達成

ATFがナミビアの漁業と活動し始める前は、衝撃的なことにアホウドリの混獲死は年間に3万羽と推定されていましたが、現在はいくつかの船団が混獲ゼロを達成しています。2017年4月から2018年3月までの間、84隻から成る底引き網漁船団のモニタリングを行いました。漁船団の90%がトリライン使ったところ、アホウドリの混獲死は全く記録されませんでした。ATFは現在混獲数の新たな推定を行っており、規制が導入された2015年以降は混獲死の著しい減少を示すものと思われます。

5.次世代漁師の教育

アルゼンチン: 商業トロール船団

港によっては、3人に1人の子供達の家族に漁業関係者がいる。

生徒の3人に1人の家族が漁業関係者という主要な港周辺の学校で、ATFは教育的な啓蒙活動を行っています。1,334人の生徒が海鳥に安全な対策の重要性を学びました。彼らの漁業関係の家族はトリラインの提供を受け、2018年5月に完全施行となった新しい混獲防止法に適応するための支援を受けました。

6.海鳥にとって世界最悪の漁業から規範への転換

南アフリカ: 底引きトロール漁

ハイガシラアホウドリ
写真提供: © Stephanie Winnard

かつては世界で海鳥の混獲が最多だった南アフリカのトロール漁船団が、驚くべきことに、アホウドリの混獲の99%削減を達成しました。昨年度101回の乗船を行ったATFは、100%の規制順守と海鳥の混獲死ゼロを記録しました。この成功例は、他の漁業にとって素晴らしい目標になります。ATFの次の課題はこの成功例を、対策の導入が遅れているはえ縄漁など、異なるタイプの漁業にも応用することです。

7.法律、見解、漁業全体の変革

ハイガシラアホウドリの雛
写真提供: © Stephanie Winnard

ATFには多くの誇るべきことがあります。これまでに対象とした10の漁業のうちの8つで混獲防止規制を確立し、来年には9つに引き上げる予定です。これほど多くの国と漁船団でATFは政策の変更に成功したことから、課題はこれまでATFが策定のために尽力をつくした規則が必ず実施されるようにすることです。ATFはこのような活動を他の漁業にも広げようとしており、その計画は既に始まっています。これらの新しい方向性は新たなスキルや活動方法を必要としますが、これまでの目覚しい実績から、 アホウドリ・タスクフォースは新たな任務も果たせると確信しています。

報告者: Jessica Law

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