三枚翼か無翼か?
飛行空間を回転し切り裂く風力発電施設は鳥にとって‘死の罠’になります。綿密に計画された設置場所と渡りのピークには稼動を停止することが助けになりますが、スペインの会社が、近いうちに市場に出る予定のはるかに良い解決策を発明しました。‘Voltex Bladeless(ボルテックス社の無翼風力タービン)’がそれです。
風力発電は私たちを‘石油という恐竜(=時代遅れの物)’から遠ざけてくれており、洋上や陸上に次々に出現しています。しかし、3枚翼のタービンはこれを予測していない鳥に致命的な障害となります。発電施設がしばしば鳥の重要な生息地や渡りのルート上に建設されるからです。飼い猫による捕食など他の脅威と比較するとタービンの翼による鳥の死はそれ程ではないという主張もあります。けれども、風力タービンは間違いなく鳥を殺すのです。ですから風力エネルギーが増え続け、これが環境問題の解決策だと喧伝されている世の中では翼の無い風力タービンを発明した人が居れば間違いなく鳥にとっての朗報です。
ジブラルタル海峡を見下ろす南スペインのタリファの光景を思い描いてください。ここにはおよそ1,000基の風力タービンが設置されています。ここではシロエリハゲワシ、ボネリークマタカ、チュウヒワシ、チョウゲンボウ、そして絶滅危惧種のエジプトハゲワシなど多くの崖に営巣するワシタカ類を見ることが出来ます。2002年以後、タリファのサイトの僅か2ヵ所の風力タービンで毎年57羽のシロエリハゲワシと67羽のチョウゲンボウが殺されています。海峡はヨーロッパとアフリカを往復する数千羽の渡り鳥の重要なルートでもあります。夜間や視界の悪い時に渡りをする鳥の群が風力タービンの翼に遭遇した時に何が起きるかを想像してみてください。悲しいことに、鳥がタービンに衝突して何羽が死ぬかを正確には誰も知らないということです。彼らは地面に落ちて死ぬか怪我をする前に、暫くは飛び続けることもあるからです。死んだ鳥や傷ついた鳥を発見するのは、多くが腐食性動物により運び去られるか食べられてしまうためにほぼ不可能です。個体数が少なく繁殖率の低い長命の種、特に絶滅危惧種にとって、このような形で起きる死は致命的です。
これがSEO/BirdLife(スペインのパートナー)が3枚翼の風力タービンと比較してVortex Bladeless風力発電の環境と人へのメリットを詳しく調べた理由です。では正確に‘Vortex Bladeless’とは何でしょうか?それは翼の無い風力発電装置です。タービンの回転運動によりエネルギーを作り出す代わりに、風が構造物に遮断されて起きる空気力学効果、つまり渦巻き運動を利用するのです。Vortexの風車が風を受けて振動を始め、それにより作りだされるエネルギーを取り込むのです。
驚くことではありませんが、SEO/BirdLifeは翼の無い風力タービンは鳥に良いだけでなく、人間にも良いことを発見しました。無翼タービンは鳥が通り抜けようとした時にぶつかる危険な障害という脅威を除きます。しかし、それだけでなく、その構造はスペースが少なくても良いのでより多くの手つかずの土地が残り、環境の細分化も少なくて済むので鳥にも良いのです。送電線も少なくて済むので、鳥の衝突死も少なくなります。更に、Vortex社のデザインは旧来の風力タービンよりも遥かに簡素化しており、より安価で、部品も少なく設置も容易で、従って、二酸化炭素排出量も遥かに少なくなります。また、旧来の音が大きいタービンとは異なり、無翼タービンは全く音がせず、近隣に住む人たちにとってプラスになります。
では何故私たちはまだVortex Bladelessを見たことがないのでしょうか?それは技術的にまだ試作段階にあり、市場に出るにはスケールアップのために投資家が必要なためです。Vortex社は投資家が小額を提供すれば代わりに鳥へのメリットを示すデザインの面白いT-シャツとフード付きセーターがもらえるキャンペーンを始めました。同社は技術面と商業化のための経済的可能性をテストするためにインドで無翼タービンの試験をしたいと考えているところです。
もしかすると、無翼風力タービン技術の実現は間もなく…ということもあるかもしれません。
(報告者: リサ・ベネデッティ)
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