時を旅する-EU自然指令がなかった時代と施行された後の世界
鳥は8月から5月までの間狩猟のために撃たれ、オオカミとオオタカは害獣と考えられて深く考えられることなく駆除されました。昆虫、カエル、カメなどは無視されました。ヨーロッパの自然のわずか5%しか保全されていなかった時代のヨーロッパへようこそ。それはEU自然指令が出来る前のことでした。
欧州委員会がEU野鳥および生息地指令の‘フィットネスチェック’をやることで欧州での自然保護に対して投げかけている問題の把握を進めるためにちょっとしたメンタルな実験をやってみましょう。その方法はEU自然指令が施行される以前はどうだったか、その様々な結果がどうであるかを見ることです。結論は私たちの自然界の多くの命と死との間の選択であることは明らかです。
まずEUが加盟国の自然保護に深くかかわるようになる以前の‘古き良き時代’に戻ります。当時は8月から5月までの間、鳥の狩猟は合法で、春の渡りの時期や営巣の時期だったにもかかわらず、銃で撃たれ、罠に掛けられ、鳥もちで木にくっ付けられていました。オオカミやオオタカなどの捕食動物は害獣とされて、深く考えられることなくしばしば政府が奨励金を出して駆除されました。昆虫、カエル、カメなどは当時のわずかばかりの自然保護法の対象にさえなっていませんでした。保護区の状況はどうだったでしょうか?保護区は欧州の面積の5%以下をカバーするのみで、ほとんどが各国の最も辺鄙で荒れ果てた場所に限られており、しばしば、生物多様性の豊かさではなく、特徴的な地形や歴史的な出来事が基準になって選ばれていました。当時、私たちは何が失われつつあるのかという基本的な理解を欠いていました。しかし実際には多くのものを失っていたのです。湿地について考えてみれば、20世紀の間だけで湿地の3分の2が破壊され失われたのです。
では急いで現在に進みましょう。今日EUの面積のほぼ20%が‘ナチュラ2000ネットワーク’の下に法的保護があります。これらの場所は依然として劣化が進んでいることが多く、時には違法行為により破壊されることもありますが、そうでない場所の多くは賢明なやり方で管理されるようになって来ました。狩猟がより持続可能な方法になり、例え場所により密猟がかなり広範に残っていても、私たちには少なくともそれをコントロールするための手段があります。私たちの生物多様性への理解は飛躍的に増加しました。そして、知識に伴い、自然保護は、数百万年を要した進化を僅か一世代の強欲から守るという道徳的要請のためだけではなく、子供たちが住みやすい、健全で豊かな地球環境を継承していかなければならないとの理解が進みました。なぜこのようなことが可能だったのでしょうか?答えはEU自然指令です。
そして、私たちは自然についてどのような未来を予言することが出来るでしょうか?その答えは私たちが今後どの道を選んで進むかに掛かっています。
一つの道はEU委員会委員長ユンケルの求める野鳥指令と生息地指令の‘合体と近代化’を実施するコミッショナーVellaと副委員長Timmermansにつながります。その結果起きるのは、新しい法文作成に伴う何年にも亘る論争で、それは当初は委員会内部で、後に欧州議会と欧州委員会で起きるでしょう。国の機関は新しい法律がどのようになるかが分かるまで待つために自然保護活動は麻痺してしまいます。欧州中のあらゆるロビー団体が都合の良い例外や抜け穴を作るために動くでしょう。狩猟に対する動物保護と言った感情的な問題の社会的対立が爆発し、早急なPR効果を求める政治家により操作されます。責任ある企業は投資について何年も不確定要素に直面して動くことが出来ず、一方、無法者がその隙に乗じて、先に事実を作ってしまい、後にこれを新法で‘合法化’するために自然を破壊する動きに出るでしょう。最後には騒ぎは収まります。私たちには新しい法律がどのようなものになるかは分かりませんが、それが現在の自然指令の簡潔で適格な文言よりも複雑で捻じ曲げられたものにはならないことを想像するのは困難です。確かなのは、新しい法文が現在の法文の明快さのレベルに到達するまでには少なくとも10年の法廷論争と数十の欧州裁判所の判決が必要だろうということです。
もし私たちがもう一つの道を選ぶなら、欧州委員会は入手可能な圧倒的な科学的で経験に基づいた証拠を受け入れ、自然指令の法文は実際に‘目的に合った’ものであるべきだという結論を出すことです。彼らもまた実施時に起きる数多くの課題に正面から取り組み、そのための包括的で明快な計画を用意します。彼らは自然保護専門家と進歩的な企業を討議の場に招き、最善の実施例に基づいて討議を行い、経済的利益に不必要な障害を起こすことなしに生物多様性を守る科学的で賢明なやり方でサイトと種を確実に保護します。彼らはEUの環境査察のための幅広い基準を含めて、法律違反に対する厳しい取り締まりを始めます。これは自然を守る助けとなり、また企業にはEU市場内での真に公正な活動の場を保証するものです。彼らは失敗に終わった古くからの補助金システムに代る生態系サービスへの支払いの進歩的な道を開く適切な保護活動資金の必要性に関する討議を再開します。何にも増して彼らは自然保護にブレーキを掛けるのではなく、これを促進するのです。
あなたの選ぶ道はどちらの未来をあなたが望むかに掛かっています。#NatureAlert campaignに加わって欧州委員会にメッセージを送る時間はまだあります。歴史を作る助けをしてください。
(報告者: Ariel Brunner)
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