EUの海域に海の生物を呼び戻すチャレンジ

オニミズナギドリ
写真提供: (c) Ivan Ramirez

 

EU(欧州連合)の加盟国は急いでマリーン・ナチュラ2000ネットワークを実行に移し、海鳥が増大する脅威と戦う機会を彼らに与えることができる、しっかりとした対策でこれを支持する必要があります。

EUの海が混乱しているというのは常識です。幾つかの例を挙げるだけでも、過剰漁獲が数十年に亘り続いており、栄養塩による汚染が藻類の異常繁殖を招いてデッドゾーンを作り出し、オイル漏れが海洋生物の大量死の原因となり、気候変動が食物連鎖動態を変えています。その結果、海鳥をはじめ、海洋生物がこの悲惨な条件下で生き残るのが困難になっています。けれども、この厳しい状況にもかかわらず、海鳥を適切に保護することが出来ると言う希望がまだあり、ナチュラ2000ネットワークを確立することがそのための重要な役割を果たします。

海鳥は欧州で最も危惧されている鳥のグル―プの一つです。海鳥は陸上と海上の両方で様々な脅威を受けているので、EU全域で多くの種に起きている深刻な減少を防ぐ単一の方法はありません。保護区の指定は重要ですが、それだけでは足りません。保護区に効果的な保護目標を設定し、サイトを管理するための具体的な活動を行うことも、種やその生息地および食物供給が実際に確実に守られる上で基本的なことです。

絶滅危惧ⅠA類のバレアレスミズナギドリが漁業による混獲で捕えられる数を減らしたり、繁殖地でモンテイロウミツバメ(Monteiro’s Petrel: 和名未定)を外来種のネズミから守るなどの絶滅危惧種に起きている脅威と取り組むことが不可欠です。またかつては普通種だった海鳥の域内での急激な個体数減少の原因となっている包括的な問題に取り組むことも同様に重要です。例えばミツユビカモメは主食のイカナゴや他の小魚が減った結果北海の多くの場所で姿を消しています。

それではこのような大きな問題にどのように取り組めば良いのでしょうか?

一緒に活動しましょう! 実行に移しましょう!

北海に関してはドッガーバンク(英国東方100kmの沖合にある広大な浅瀬)と呼ばれる海域に関して政府、漁業関係者、環境NGOの間で大々的な討議が行われました。この地域は英国、ドイツ、オランダに属するユニークで広大な複合的ナチュラ2000サイトで、また漁業が集中的に行われています。ここでは数世紀に亘り砂堆を劣化させた侵略的な底引き網漁が行われ、ホンビノスガイなどの脆弱で長命かつ魅力的な種が犠牲になって生態系が完全に変わってしまいました(ホンビノスガイは地球上で最長命の500年も生きる種です)。

北海の隣接地での保護活動がドッガーバンクに合った管理活動を引き出す助けとなりました。2000年にEUは北海に‘イカナゴ・ボックス’と呼ばれる閉鎖エリアを設定しました。これはスコットランド沿岸でのミツユビカモメの個体群の継続的な繁殖行動の悪化に対する直接の対応です。最近英国政府は、この‘イカナゴ・ボックス’を長期に守るための論議の中で、「英国北東沖およびスコットランド東部でのイカナゴ漁の禁止が閉鎖エリア周辺のミツユビカモメのコロニーでの繁殖成功にプラスの影響を与えている証拠がある」と結論を出しています。

生息地を保全することにより同地域で採食するネズミイルカや海鳥など他の種もこの漁業禁止措置の恩恵を受けています。最近、オランダの大臣Sharon Dijksmaによる画期的決定がありました。オランダ議会での政治的論争の後、長年の懸案だったドッガーバンクでの漁業管理のためのEU加盟国による共同提案にオランダ議会の合意を得ることが出来たのです。

ドッガーバンクでの損害を与える底引き網漁の制限延期もイカナゴやこれに依存する海鳥の個体群に有益でしょう。海の温暖化もイカナゴ資源への警告の証拠があることから、生物に満ちた砂堆を守ることは一刻を争います。

残念ながらEU加盟国はEU海域での保護区や管理対策による海洋環境の支援をほとんどやっておりません。海鳥のためのナチュラ2000サイトの指定も殆ど無く、これを効果的に管理することとは程遠い状態です。加盟国にはマリーン・ナチュラ2000ネットワークを実行に移し、海鳥が直面している増大する脅威と戦う機会を彼らに与えるしっかりとした対策でこれを支持することが緊急に必要です。

(報告者: ブルーナ・カンポス)

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