アジアの陸鳥モニタリングへの第一歩

4か国からの参加者が東アジアでのモニタリングの枠組みに合意しました

質問: 多くの鳥が減っているということはどのようにして分かるのでしょうか?

回答: ヨーロッパや北アメリカには科学者や一般人が集めた数十年に亘る観察記録やデータがあり、これにより長期的な個体数の変化を正確に推定することが出来るのです。

ところが、東アジアには多くの地域でこの種のデータがありません。けれども日本、中国、韓国、ロシアの4ヶ国による新しい合意はこの地域の渡り鳥のモニタリングを共同で開発する第一歩になります。

1990年代に日本の鳥類学者が1970年代と1990年代の国内で繁殖する鳥の調査結果を比較してみました。その結果、彼らはサンコウチョウなど一部の種が個体数も分布も大きく減っていることに気づきました。今世紀最初の10年には群になる傾向が非常に高いシマアオジが急激に減っていることが分かりました。このことから他の多くのアジアの渡り性陸鳥も同様に減少していることが推測されました。けれども、陸鳥の個体群の詳細な調査を行うことが出来る研究者がほとんど居なかったために共同研究の枠組みが構築されることはありませんでした。

2010年11月、アジアの陸鳥をモニタリングするというアイディアが日本と韓国の間での渡り鳥保護会議で出て来ました。これはその後、日本、中国、韓国の間での会議およびロシアと中国間での会議でも討議されました。

これら4カ国は2015年3月に韓国・済州島で韓国生物資源研究所(NIBR)とバードライフの共催による東アジア陸鳥モニタリング・ワークショップにおいて初めて会合を行い、地域でのモニタリング構想を前進させることが合意されました。

バードライフはこれら4つの創設メンバー国と共に陸鳥モニタリング構想の開発で活動をして来ました。2014年8月に東京で開催された第26回国際鳥類学会議においてバードライフはアジアにおける陸鳥モニタリングと保護に関する円卓会議を行いました。この円卓会議に参加した鳥類学者から出た意見は2014年10月に韓国・平昌で開催された第12回生物多様性条約(CBD)締結国会議(COP)でバードライフとNIBRによるサイド・イベントに提示され、韓国、日本、中国、ロシアの代表者が陸鳥モニタリング構想の可能性を考える上での助けになりました。

2014年11月に中国・徳清(Deging)で開催された中国、日本、韓国間のそれぞれの二国間会議においてバードライフ・インターナショナル東京の主任研究員のシンバ・チャンがこれらの3カ国からこのモニタリング構想開発の国際コーディネーターに任命され、更に済州での陸鳥モニタリング・ワークショップでも今度はロシアを含む4カ国から彼のコーディネーターの役割が確認されました。

バードライフとそのパートナーは国とNGOをつなぎ、技術的な支援を行う上で有用な役割を果たします。済州でのワークショップにはRSPB(英国のパートナー)のリチャード・グレゴリー博士が‘汎欧州普通種の鳥(common bird)モニタリング構想’の経験を発表するために招聘されましたが、これはアジアにおける同様の構想を開発する際の参考になるものです。

現在、二つのモニタリング方式が提案されています: 規格化された足環と野外センサス技術です。バンディングは見つけにくい種を明らかにできるメリットがありますが、労働集約的でアジア全土の多数のサイトをカバーするには費用が掛かります。これに対してボランティアによる野外調査は専門家による調査サイトのギャップを埋め、一般の人たちの参加を得るので普通種への関心を集めます。

「この10年でバードウォッチングは中国で益々ポピュラーになりました。バードウォッチャーはデータ収集でも重要な役割を果たしてくれると信じています。十分な訓練と自国語による参考資料(図鑑など)があれば中国や他の多くのアジアの国々で広範囲のモニタリング構想を開始するのはそれほど難しいことではないはずです。」とシンバ・チャンは言いました。

(報告者: バードライフ・アジア地域事務所)

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