キプロスでの密猟への取り組み

キプロスで密猟のカスミ網に掛かった数百万羽の鳥のうちの1羽
写真提供:BirdLife Cyprus

「私は鳥にはなりたくありません。大変ですもの。」とキプロスの学校で学ぶ女子生徒が言いました。

彼女は正にバードライフ・キプロスが密猟対策キャンペーンの一環として考案したボードゲームで渡り鳥の役をやっていたのです。小さなズグロムシクイの苦境を知ったことが彼女に深い印象を与えたのです。

キプロスでは鳥の密猟は常習的で胸が痛む問題です。この島では毎年地中海を越えるというつらい旅の途中で休む数百万羽の渡り鳥が二度と島を離れることが出来ないのです。

アンベロポウリア(キプロスの郷土料理で、小鳥のグリル、ボイルまたは酢漬け)は違法とされていながら今でもレストランで供されています。 写真提供:rspb-images.com

アンベロポウリア(キプロスの郷土料理で、小鳥のグリル、ボイルまたは酢漬け)は違法とされていながら今でもレストランで供されています。
写真提供:rspb-images.com

鳥の足が密猟者が小枝に無頓着に塗り付けた鳥もちにくっ付いてしまい、鳥は逃れようともがくことによる喉の渇きか疲労で苦悶死するか密猟者の貪欲な手で殺されるのです。或は残酷なのはカスミ網の中で死ぬことで、そこでは逃れようとすればするほど網が絡むのです。最近のきっちりとした推計によれば、2013年秋にキプロスで13km以上にも及ぶカスミ網が張られており、鳥もちについては数知れないほどで、多くの場合、疲れ切った渡り鳥に安全な休息場所と錯覚させる鳥寄せ道具が使われます。それは実際には鳥に死を招く囮なのです。

理由: アンベロポウリアは地元のご馳走で、捕えたズグロムシクイや他の小鳥が使われ、足、嘴、内臓など全身を食べます。一皿1ダースのアンベロポウリアは違法なレストランで40~80ユーロで販売されています。

1974年以降鳥の罠猟は法律で禁止されていますがキプロス人の過半数はこれを重大事だとは考えていません。しかし、152種の鳥が密猟されていると考えられ、そのうちの78種が絶滅危惧種です。また毎年250万羽が殺されていることから、眼には見えない何か生態学的大惨事が進行していることが明らかになって来ています。

キプロスの学校でのプレゼンテーション 写真提供:BirdLife Cyprus

キプロスの学校でのプレゼンテーション
写真提供:BirdLife Cyprus

従って、世論の大きな変化が必要です: MAVA基金からの資金支援を受けてバードライフ・キプロスはアンベロポウリアと罠猟に対する世論を変えるためにいかなる違反も認めない広報キャンペーンを始めました。キプロスでは大胆な環境保全メッセージを広めることは画期的なことで、バードライフ・キプロスはこのキャンペーンを正に公衆の面前で行っています。彼らは巨大な“変えよう: アンベロポウリアにNOと言おう”というポスターを作り主要なハイウェイや密猟で有名なエリアに看板を出し、また春の狩猟シーズンまでの間にメディアを動員してキャンペーンの後押しをしました。

このキャンペーンは鳥の罠猟はまだ無害で昔と同じ小規模な習わしだという神話を払いのけています: 実際には密猟は利益の上がる産業化されたビジネスで、狩猟動物局によればマフィアに似た犯罪組織が毎年1,500万ユーロを稼いでいます。「MAVAからの資金支援を受けたこのイニシアティブは私たちの広報キャンペーンが新たなレベルに登るのに必要な土台を提供してくれました。」とバードライフ・キプロスの調査コーディネーターのマーチン・ヘリカーは言いました。マーチンと彼のチームはメッセージを巨大で組織化された業者と無謀な犯罪的罠猟に集中して向けています。

バードライフのパートナーたちは密猟のような常習的問題を解決するには長期に亘る関与が必要であることを理解しています。そのためには次の世代が組織に加わることを阻止することが重要です。政治および消費者の変化を求めるのと共に、バードライフ・キプロスの広報キャンペーンは学校訪問を通じて罠猟コミュニティーに入る道を探しています。悲しいことに多くの子供たちがそこではカスミ網や鳥もちが使われているところを見たことがあります。「ある学校で‘アンベロポウリア’という言葉を言った途端に生徒の一人がお腹を撫で、唇をなめたのです。」とバードライフ・キプロスのメディア・オフィサーのNatalie Stylianouは言いました。「そこは難しい舞台ですがチームが大きな違いをもたらすことのできる舞台でもあるのです。」

教育用アニメの主人公フレンドリーなズグロムシクイの’ユリシーズ’

教育用アニメの主人公フレンドリーなズグロムシクイの’ユリシーズ’

MAVA基金による最初の資金支援でチームは先ず教育用資料を作成し、その成功がフレンドリーなズグロムシクイが彼の苦境を説明するアニメなどの教育用パッケージと前述のボードゲームのための追加資金を生み出しました。

バードライフ・キプロスは鳥の密猟に対する‘戦略的アクション・プラン’を開発しましたが、それは初めて全ての利害関係者が共通の枠組みに合意するために一堂に集まるものでした。

「私たちはやっとゲームチェンジャーが必要なことを彼らに納得させることが出来ました。」とマーチンは言いました。

この問題に取り組む政治的意思が近年は大きな課題でしたが、心強いことに‘戦略的アクション・プラン’は欧州委員会(EC)の支援を得ることが出来、バードライフ・キプロスはECに対して最新の報告を提出し、ECはこの‘戦略’をキプロスが選ぶことに注目するようになりました。

「私たちは皆が新スタートに同意する直前まで来ており、あらゆる角度から見て殺される鳥の数に真の違いが出始める所まで来ました。」とマーチンは言いました。

2014年5月にMAVA基金の支援を得てバードライフはワークショップを開催しましたが、そこには26人の地中海地域の自然保護NGOの代表(うち13人はバードライフ・パートナー)が‘我々は地中海で渡り鳥の保護を共に行う’という共通思想を持って参加しました。「バードライフ・パートナーシップの強さは多数の力にあります。とバードライフの保護ディレクターのリチャード・グリメットは言いました。「物事は変えられます。彼らに機会を与えれば鳥は戻って来ます。」

バードライフが地中海地域‘フライウェイ保護のための能力開発’プロジェクトを通して提供している地域支援に関してマーチンは次のように言っています。

 「キプロスは密猟者に取り囲まれた小さな島ですが、自分たちが一人ではないことを知るのは本当に大切なことです。」

(報告者:ショーン・ハレル)

詳しくはこちら

  1. TOP
  2. 世界のニュース
  3. キプロスでの密猟への取り組み