人工衛星追跡アプリがコミュニティによる森林保全を強化

オナガサイチョウ(絶滅危惧ⅠA類)はこのプログラムの恩恵を受ける数多くの鳥の1種です。 写真提供:© Bjorn Olesen

今年バードライフは、地元住民の家とも言える森林を彼ら自身が行うモニタリングを支援するために、人工衛星追跡技術と携帯電話アプリを利用する革新的な新しいプログラムを開始しました。バードライフが主導し、EUが資金を提供するこの「アジア-太平洋森林管理プログラム」は、地元住民の保全活動と政策決定への参加を目的にしています。

馴れない方にはほとんど分かりませんが、村人が何世代も利用して来た森の中の小道を進むと、頭上の葉から水滴が落ちて来ます。豊かで良い香りのする土の上の落ち葉を踏むと、下草が衣服に引っ掛かります。そうした音を聞くまでは、すべてが静かです。そして、大きく騒々しいクワックワッという笑い声も聞こえてきます。これは人の笑い声ではありません。オナガサイチョウの声なのです。

発見したものを録音しようとしてポケットに手を入れると、携帯電話に通知が入っています。頭上の緑の傘のはるか上空で、人工衛星が半マイルも先から樹冠の僅かな場所を検知したのです。これは不思議なことで、以前にはそこになかったものです。調べに行きましょう。

 

地元住民が答え

私たちは、森林が地球に対して計り知れないサービスを提供していることを知っています。森林は同時に我々に対して住み家も提供しているのです。そして、情報の収集ということでは、地元の知識に勝るものはありません。地元住民は現状を知っており、最初に生態系の健全度を知ることができます。ですから彼らは自分達が住んでいる森をモニタリングし、意思決定を行う上で重要な役割を果たすべきである、というのは理にかなったことです。

パプアニューギニア人の文化と自然保護は手を携えて行われる
写真提供:© Mark Hanlin / Tenkile Conservation Alliance

残念なことに、地元コミュニティや原住民の力はしばしば、技術的知識、経験、政治的影響力の不足にとらわれてしまいます。今後5年間という年月をかけて、「アジア-太平洋管理プロジェクト」は、これを変えようと計画しています。

アジア・西太平洋地域の熱帯雨林は、特別です。インドネシア、マレーシア、パプアニューギニア及びフィリピンには、世界的に重要な生物多様性のホットスポットが1.54億ヘクタールもあり、その多くがKBA(生物多様性重要地域)です。これらの安息の地には、パプアニューギニアのGolden-mantled Tree Kangaroo(和名不詳、キノボリカンガルーの1種)やマレーシアのオナガサイチョウのような驚くべき絶滅危惧ⅠA類の種が生息しています。

しかしこれらの森林は、伐採による大きな脅威にもさらされています。これが「森林管理プロジェクト」が現場で人々を訓練し、彼らが自分の森林を管理し、保全できるようにする理由です。

このプログラムの主要サイトの一つ、パプアニューギニアのトリチェリ山脈で見られるGolden-mantled Tree Kangaroo(キノボリカンガルーの1種)
写真提供:© Matt West

 

熱帯雨林を監視する人工衛星アプリ

もし森の中で木が倒れて、その音を聞く人が周りに誰もいなかったら、音が出ていると言えるのでしょうか?多分違います。しかし、最先端の遠隔探査技術を使えば確実に分かるのです。グローバル・フォレスト・ウォッチ社の開発した革新的新アプリ「フォレスト・ウォッチァー」は、人工衛星を利用して森林の樹冠を監視するのです。画像の中で1ピクセルが変化すれば、それは倒木したことを意味し、同アプリは利用者に警告して対応することができるのです。

バードライフとグローバル・フォレスト・ウォッチの協力により、この技術は現場にいる地元のパートナーに提供されます。彼らが発見したことは、真の政策の変更をもたらすために利用されます。正に地元から世界へのアプローチです。

林床にいる地元民の目と耳から梢の上空の人工衛星まで、「森林管理プロジェクト」はこれらの貴重な森林が根もとから樹冠まで確実に保護されるようにできるでしょう。

 

報告者:Jessica Law

 

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