大陸を越えて:メジロガモの旅

メジロガモ ©Lucas Roundy

アフリカ・ユーラシア・フライウェイを渡る代表種のひとつがメジロガモ(Ferruginous Duck)です。

アフリカ・ユーラシア・フライウェイは、アフリカ、ヨーロッパ、中央アジアを結ぶ、渡り鳥の壮大な移動ルートです。鳥たちの「高速道路」ともいえるこのルートは、北極圏のツンドラからアフリカ南端まで延び、20億羽を超える鳥たちに利用され、465種の渡り鳥を支えています。

この素晴らしいフライウェイに依存している数多くの鳥類の一つがメジロガモで、現在、IUCN(国際自然保護連合)で「準絶滅危惧種(Near Threatened)」に分類されています。数千マイル離れた湿地の健全性に、その生存を依存していることから、このフライウェイを象徴する存在といえます。渡りの途中では、クロアチアのポクプリェ盆地(Pokuplje Basin)やエジプトのナセル湖(Lake Nasser)などといった「生物多様性重要地域(KBA)」を通過します。

メジロガモ ©Peter Ericsso

ヨーロッパの重要な生息地:クロアチア・ポクプリェ盆地

ポクプリェ盆地は、クロアチアにおけるメジロガモの重要な渡りの中継地・繁殖地です。350平方キロメートルに及ぶ湿潤な低地には、オークの森林や草地、ツルナ・ムラカなどのコイ養殖池が広がり、多くの水鳥の生息地となっています。渡りの時期には2万羽を超える水鳥が飛来し、オジロワシ(White-tailed Sea-eagle)やシロエリヒタキ(Collared Flycatcher)なども営巣しています。

クロアチア・ポクプリェ盆地 ©Kronike Velike Gorice

アフリカの野生動物保護区:エジプト・ナセル湖

さらに南へ渡ったメジロガモは、エジプトの広大なナセル湖にたどり着きます。世界最大級の人工湖であるナセル湖は、重要な水源であり、メジロガモやハジロカイツブリ(Black-necked Grebe)、モモイロペリカン(Great White Pelican)など20万羽を超える水鳥の越冬地です。また、ナイルワニ(Nile Crocodiles)やアフリカスッポン(African Softshell Turtle)などの生息地でもあります。さらに、農業用水の供給や水産業、アスワン・ハイ・ダムによる水力発電を支え、エジプトの経済や暮らしにも重要な役割を果たしています。

エジプト・ナセル湖 ©superblinkymac

フライウェイ規模で進める保全活動

アフリカ・ユーラシア・フライウェイは、農業や養殖業などの人間活動による生息地の喪失・劣化、違法な捕殺や持続不可能な捕獲、鳥インフルエンザなど、さまざまな脅威にさらされています。その結果、465種の鳥類のうち8%が世界規模で絶滅の危機にあり、44%が減少傾向にあります。バードライフは、生態系再生基金(ERF)から750万ポンド(約15億6千万円)の助成を受け、3年間にわたり重要な生息地の保護・再生に取り組んでいます。渡り鳥を支える生息地のネットワークを守ることで、鳥たちが安全に大陸間を渡れる環境を整えるとともに、地域社会や気候にも利益をもたらすことを目指しています。

エジプトでは、バードライフのパートナー団体「エジプト自然保護協会(NCE)」が、ナセル湖で水鳥の調査や狩猟禁止に向けた活動を続けています。その成果として、長年姿を見せなかったアフリカコビトウ(Long-tailed Cormorant)が再び確認されました。こうした重要な場所をフライウェイ全域で守ることは、一つの種だけでなく、三大陸の自然と文化を結ぶ共通の遺産を守ることに繋がります。

アフリカ、ヨーロッパ、中央アジアで効果的な保全活動を進めることは、渡り鳥がこれから何世代にもわたって渡りを続けられるようにするために不可欠なのです。

メジロガモ ©Sylvie Louisy

メジロガモ ©floarea popovici

本文を一部編集しました

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