設置場所が何よりも重要

写真提供: © BSPB [BirdLife Partner, Bulgaria]

風力発電は信じられないほど環境にやさしいイメージがあります。しかし立地が悪ければ風力タービンは、鳥やコウモリを傷つける可能性があるのです。しっかりとした科学と技術がこのような無用の損害を避ける解決策です。

 

ほぼ全ての見地から、風力発電は最も環境にやさしい資源の一つです。

 

風力タービンは、その製品寿命を考えると二酸化炭素の排出量が最も低いため、再生エネルギーの重要な資源となっています。さらに、風力発電施設は広大な地理的領域を占めますが、実際の設置面積はごく僅かです。これは、施設が設置される場所が既に放牧や農業で利用されているので環境への影響が限られているからです。

 

しかし、もし設置場所が悪ければ風力発電施設は鳥やコウモリに危害を与える可能性があります。この問題を大きくしたのは、英国鳥類学基金とバードライフによる最近の調査で、猛禽類など風力発電によって最も影響を受ける可能性のある種は既に非常に絶滅が危惧されていることが分かったことです。

 

「大型猛禽類などのある鳥類グループの行動と形態は、立地の悪いタービンへの衝突に極めて脆弱です。ガン類など他のグループは積極的にタービンを避けますが、タービンは彼らが好む採食場所からの移動を強いるなどの問題を起こします。」とバードライフの上級地球科学オフィサーのTris Allinsonは述べています。

 

鳥に対する悪影響を回避するための最善の方法は、傷つきやすい種がいない場所に風車を設置することです。このプロセスを容易にするためCMB(移動性野生動物種の保全に関する条約)は、複数のステークホルダーのプラットフォームである「エネルギー・タスクフォース」を創設しました。これは再生可能エネルギーの開発と渡り性の種の保護を調整する活動です。バードライフの調整によりエネルギー・タスクフォースは再生可能エネルギーの開発のための費用対効果が高く、野生生物に優しい場所を効率的に特定することで政府と企業を手助けしています。

 

「エネルギー・タスクフォースの役割は政府、企業、コミュニティに対して支援と指導を提供し、彼らが再生可能エネルギー施設をどこに設置するかについての情報に基づいた決定が出来るようにすることです。」とバードライフの地球気候変動プログラムのコーディネーターAshton J. Berry博士は言いました。彼はCMBのエネルギー・タスクフォースのグローバル・コーディネーターでもあります。

 

この活動の多くに、開発業者が利用できる野生生物に関するデータの作成が含まれます。例えば2006年にRSPB(英国のパートナー)はスコットランドのどこで鳥が風力発電施設に対して極めて脆弱で、どこで脆弱性が低いかを確定させるために、地図上に示しました。この時に入手可能だったデータをもとにした調査では、風力発電施設のあるエリアのほぼ3分の2で影響が低いことが分かりました。

 

RSPBの活動に続きブルガリア、ギリシャ、南アフリカ、スロべニア、アイルランドなど多くの国のバードライフ・パートナーが類似のセンシティビティマップ(脆弱性地図)のツールを開発しました。バードライフは中東および北アフリカのパートナーと共にリフト渓谷および紅海フライウェイを中心にした初めての地域的センシティビティマップのツール、帆翔性鳥類のセンシティビティマッピング・ツールの作成を行いました。このツールはその後地中海地域、北アフリカ、中東の大部分をカバーできるように拡大されました。

 

バードライフはコンサベーション・インターナショナル、IUCN及び国連世界環境保全モニタリング・センターともパートナーを組み、有料ウェブサイトの生物多様性統合評価ツール(IBAT)の開始も行いました。バードライフ・パートナーや他の自然保護団体からの情報を利用したこのツールは保護区に関する情報(保護区の世界データベースより)、世界的に重要な保全サイト(IBAを含むKBAおよび絶滅ゼロ同盟サイト)および世界的な絶滅危惧種(IUCNの絶滅危惧種のレッドリスト)を利用者に提供します。

 

IBATはWWF、世界銀行、ハーバード大学、JPモルガン、A Rocha Ghana、シェル、Rio Tinto、UPC Renewables、ケンブリッジ大学持続可能性研究所およびMott MacDonaldなどの公共、民間部門の定期購読者を有しています。利用者はこのツールを「生物多様性保全のためのいかなるプロジェクトにとっても必須のものである」と述べており、「IBATは他のどこからも入手できないデータと生物多様性の専門家と知り合う機会を与えるもの」と言っています。このツールは、再生可能エネルギーのプロジェクトに加わり、自身のプロジェクト活動で負荷低減を適用している企業により積極的に利用されています。

 

これらのツールは利用者に対して特定のエリアを開発できるかどうかは伝えませんが、風力タービンなどの再生可能エネルギーの開発に対する特定の地域の鳥や他の野生生物の脆弱性について警告を与えます。それにより利用者は、風力発電開発で環境への影響を最小限にするにはどこに設置するのが最善かについて情報に基づいた決定を下すことが出来ます。

 

「重要なのは、風力はどこにでもある資源であるということです。十分な事前の考慮と計画があれば、風力発電施設を鳥や他の野生生物に危害を加えるような場所に設置せず、再生可能エネルギーの全ての必要条件を満たすことが出来るのです。」とAllinsonは言いました。

 

報告者: Margaret Sessa-Hawkins

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