鳥を救うために: クリスマスの慣習を変えた男の話

写真提供:© Steven Russell Smith Ohio / Shutterstock

アメリカ大陸におけるクリスマス恒例の狩猟は、どのように鳥類を数えることに変わったのでしょうか?鳥類学を変えた休日の慣習、オーデュボン協会のクリスマス・バード・カウントを紹介します。

今年は、12月14日から1月5日までの間、数万人の愛鳥家ボランティアが深い雪、激しい雨、強風をものともせずにできる限り多くの鳥を数えるために、冬の野外へ飛び出します。家族全員で長過ぎるクリスマス休暇から逃れ、自然に触れ気分転換の散歩にもなるオーデュボン協会のクリスマス・バード・カウントは、アメリカ全土で家族の慣習として根付き、世界で最も長く続く野生生物の個体数調査になっています。

しかしバード・カウントが始まった120年前は、その光景は今とは違っていました。1900年に時を戻すと、当時流行りの休日の慣習は、クリスマスの「サイド・ハント」で、目にした動物をすべて撃つために野外へ出ることでした。より多くの獲物の山を持ち帰ったチームが勝ちでした。当時のクリスマスの精神と言えばこんなところでした。

幸いなことに、この頃科学者は鳥の個体数の減少に懸念を持ち始めました。そこで後にオーデュボンの雑誌へと進化したBird-Lore誌の創立者Frank M. Chapman博士は、1900年のクリスマスの日に新しい休暇の慣習を提案しました。彼のアイディアは鳥を撃つのではなく数を数えに野外へ出るというものでした。その当日、アメリカ大陸全土から27人の熱心なバードウォッチャーが参加し、トロントからカリフォルニアの間で25ヶ所のクリスマス・バード・カウントが行われました。

時間を2018年のクリスマスに早送りすると、このような熱心な筋金入りのバードウォッチャーは、アメリカ大陸と西半球で一般市民79,425人に膨れ上がりました。去年、市民は4,800万羽の鳥を見つけましたが、これは2,600種に当たり、世界の鳥の4分の1以上に相当します。

これは完璧なクリスマスのおとぎ話のようです。エベネーゼ・スクルージ(小説「クリスマス・キャロル」の主人公)でさえ自慢する贖罪と慈悲心が、破壊に勝利した話です。しかし、単なる心暖まる話ではありません。オーデュボン協会のクリスマス・バード・カウントは鳥を調査し保護するために重要な実用的なツールでもあるのです。

「クリスマス・バード・カウントは、誰でも参加できる120年の歴史を持つ今も続く市民科学なのです。あなたの観察記録を120年間のデータに加えることは、科学者と保護活動家が鳥類の傾向を見つける助けとなります。」と、1987年に最初に市民科学を主導したオーデュボン・クリスマス・バード・カウントのディレクターGeoff LeBaronは言いました。

北アメリカ繁殖鳥調査」など他のイニシアティブとのデータと合わせると、このバード・カウントは過去一世紀の間にアメリカの鳥類個体数がどのように、また、どこで変わったか、また、鳥を救うために何が出来るかという重要な情報を与えてくれます。現在まで、クリスマス・バード・カウントのデータは、300以上の科学論文で利用されており、今年も北アメリカの鳥類個体数が1970年以降30億羽減少したことをサイエンス誌に報告し、重要な情報を発信しています。

それでは、クリスマス・バード・カウントはどのように機能しているか、また、どうすれば参加できるでしょうか?

個々のカウントは、15マイル幅の円内で行われ、観察結果を直接オーデュボン協会に提出することを担う担当者によりリードされます。参加者はその円の中でその日に目で見たり、声を聞いたりした全ての鳥の集計をします。特定の個体群の健康度についての情報も提供するため、種名だけではなく総数も含みます。クリスマス・バード・カウントへの参加申し込みは、最寄りの円を見つけ、この地図に登録するだけです。

今年は全く新しいCBC放送局によるライブ番組が放送されますが、これはクラウドソーシング版「ストーリーマップ」で、利用者が撮影した写真と短い逸話をアップすることにより、リアルタイムでクリスマス・バード・カウントの全体像が描かれるものです。

クリスマスとは、愛する人々と一緒に自身の慣習を作ることが全てです。ですからもし休暇中の暴飲暴食から逃れたければ、この120年の歴史を持つ古い慣習へご参加ください。または、一年中世界の様々な場所で行われている類似の市民科学プロジェクトを検索してみて下さい。かつて一人の男が、野鳥保護活動に大きな功績をもたらすことができたのですから、あなたにもできます。

報告者:Jessica Law

 

 

 

  1. TOP
  2. 世界のニュース
  3. 鳥を救うために: クリスマスの慣習を変えた男の話