ヒガシシナアジサシの繁殖コロニーの復活

中国で最も希少な鳥ヒガシシナアジサシ
写真提供:Dr Chen Shuihua

3月初め、中国浙江省象山で開催された国際ワークショップは、おそらく世界で最も絶滅が危惧される海鳥ヒガシシナアジサシ(絶滅危惧ⅠA類)のために繁殖地を復活させるという野心的な計画の開始を記念したものになりました。

半世紀以上の間繁殖記録が絶えた後、2000年に福建省の沖合いの馬祖諸島(台湾が管轄)で4羽の成鳥と4羽の雛が発見されました。2004年には浙江省沖の韮山諸島で別のコロニーが見つかりましたが、島を襲った二つの台風により繁殖は失敗に終わりました。その後韮山諸島では8羽のヒガシシナアジサシとおよそ2000羽のオオアジサシが島に戻った2007年まで繁殖行動は見られませんでした。しかし、このコロニーは卵の密猟者によって荒らされ、それ以後アジサシは営巣を止めてしまいました。

2008年に以前韮山諸島で繁殖していたと思われるヒガシシナアジサシの新しいコロニーが同諸島より80km北の五峙山諸島で発見されました。五峙山の営巣地にアジサシは毎年帰って来ますが、営巣のスペースが限られ、彼らはあまり条件の良くない場所を使うようになって来ています。また繁殖の情報が流れ写真を撮る人による撹乱の危険が増えています。

韮山諸島での密猟事件を受けて、バードライフと香港バードウオッチング協会(香港のパートナー)は浙江野鳥の会と共に象山で保護活動のための教育を行ってきました。学生ボランティアのチームがアジサシ保護を進め、友人や家族に海鳥の卵を採取せず、買わず、食べないよう説得しました。学校や一般イベントでの教育プログラムによりアジサシの窮状への関心を高まり、海鳥の密猟が大幅に減ったのです。

2010年7月に中国では初めての海鳥保護の国際フォーラムが象山で開催されました。米国でのアジサシのコロニー復活(ナショナル・オーデュボン協会のステファン・クレス博士の主導による)のプレゼンテーションに触発され、象山政府と韮山諸島国立自然保護区は密猟を防ぐためにこれまで以上の資金を提供しました。

直近のワークショップには浙江省の海洋・漁業、森林、および環境保護局の代表も出席しました。中国の主導的研究機関が技術的アドバイスを提供し、海外からの専門家は、オレゴン州立大学(同校は韮山諸島の再建プログラムも支援する予定)によるオニアジサシ復活プロジェクトや山階鳥類研究所によるアホウドリの移転(鳥島から小笠原への)などの経験を披露しました。

また、台北市鳥学会は馬祖諸島にヒガシシナアジサシを惹きつけるためにオオアジサシのデコイを使った取りあえずの成功を報告しました。

2004年と2007年に営巣活動があった島に近い韮山諸島のなかの小島がコロニー復活サイトとして選ばれました。営巣環境は改善、拡張され、5月上旬からはアジサシのデコイと音響システムが導入される予定です。オオアジサシが営巣し、それに従ってヒガシシナアジサシもコロニーに加わることが期待されています。繁殖期には島には研究者が24時間常駐する予定です。

なお、このプロジェクトには日本地球環境基金とオーシャン・パーク保護基金(香港)が資金を提供し、象山海洋・漁業局、浙江自然史博物館、米国野生生物部が後方支援を担当します。

 

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