かつての麻薬使用者がフィリピンワシの保護活動家に
かつての麻薬使用者、先住民、自然保護活動家が、フィリピンワシの生息地を復元するために思いもよらないチームを組み、成功しています。
麻薬中毒者、先住民デュマガットのメンバー、そして地元の保護活動家によるチーム編成は、それぞれのいいとこ取りかもしれません。地元の人はデュピンガ川が晴天の時には水や魚に命をもたらしますが、ひとたび大雨が降ると洪水や地滑りを起こし豹変することを知っています。
私たちはフィリピン諸島でもっとも大きく、人口密度が高いルソン島にいます(面積は英国の半分ほどで人口は同じ)。フィリピン原住民の一つデュマガット族は森林を家と呼び、かつては狩猟採集する遊牧民でした。森林からの恵みが少なくなったことにより彼らは貧しくなり、低地の住人による僅かな仕事のお蔭で生活しています。
デュマガット族に属する麻薬使用者が、生活様式を変えることを受け入れました。違法な殺害や暗殺団の深刻化する麻薬戦争の中で、彼らは自身を‘降伏者’と呼んでいます。
自然保護活動家はハリボン協会(フィリピンのバードライフ・パートナー)のメンバーで、この場所を威厳のあるフィリピンワシ(絶滅危惧ⅠA類)の最後の生息地の一つとして崇拝しています。
「Haring Ibon」は、カリスマ的「鳥の王者」の名において、地元のガボールドン政府の仲介のお蔭で、前述の3つの全く異なるグループの人々が一つにまとまったのです。
彼らの目標の一つは、‘麻薬降伏者’に、彼らのコミュニティへの奉仕の一貫として、フィリピンワシの生息地からあまり遠くない場所に価値の高い果実の木を植林させることです。
また、マンゴー、ランブータン、グヤバノ、ランカップ、コーヒーや原産のカリン、ムラサキフトモモなどを植樹するために、デュマガット族や保護活動家が持つ森林についての知識が非常に必要なのです。「森林再生はガバールドンにとって必要です。それはこの地域の次世代を救う投資なのです。」とハリボン協会のコミュニティ事務局のSam Manalastas氏は述べています。
Manalastas氏は、これまで何カ月もデュマガット族のメンバーやガバールドンの町の他の部門と共に「重要生息地管理計画」作成のために活動を行って来ました。フィリピンワシはガバールドンとオーロラ州サン・ルイスの低地の急速に拡大する町からあまり離れていない場所に生息しています。そのため、同計画には、ミンガン山のフィリピンワシを守るための5か年の保護活動が含まれています。
「植樹により彼らはミンガン山の生物多様性を助けているだけでなく、自分たちの地域を気候変動に対して強くしているのです。」とManalastas氏は付言しました。
現在の麻薬戦争はフィリピンの多くの地域で続いているので、民衆は何を期待するかについて分裂したままです。殺人が今も行われているので、一部の人々は麻薬や犯罪に対抗するために武装するべきだという訴えを支持し、他の人々はそれを人権と司法プロセスに対する攻撃だと言います。
植樹サイトに行くのは容易ではありません。川の横断、起伏の多い地形、急な丘などがあります。息を切らし、心臓をバクバクさせて草に覆われた丘を登るので、かつての麻薬中毒者は恐らく「健康」について考え直すかも知れません。しかし、そこからの光景を眺めて微笑み、前進するでしょう。一日の終わりに彼らの額は汗に濡れ、その日の任務が終了します。地元政府は、率先してここは安全だという、強いメッセージを送ります。
デュマガット族にとっては、良い収入と彼らの森林についての知恵の認識の一体化の第一歩です。麻薬使用者にとっては、生活を変える(また家を安全にする)機会です。保護活動家にとっては、‘鳥の王者’の住むミンガン山の健全性に対する小さな貢献になります。最も明確なウィン・ウィンの関係です。保護活動が再びそれを成し遂げたのです。
報告者: Albert Balbutin & Luca Bonaccorsi
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