バングラデッシュの国土の25%でハゲワシを有害な薬剤暴露から救う

ミミハゲワシ(絶滅危惧ⅠA類) 写真提供: © Jonathan Eames

ハゲワシに害を及ぼす有毒な2種類の薬剤の禁止に成功した結果、バングラデッシュはアジアのハゲワシ保護の最先端をいき、三つ目の薬剤の禁止に向かっています。

どのように発音するかを覚えていないかもしれませんが、1990年代に何とアジアのハゲワシの99%以上を一掃し、近代史上最も劇的な鳥の減少の原因となったハゲワシを殺す薬剤である「Diclofenac」(注: 通常日本では「ジクロフェナク」と表示)という名前はお聞きになったことはあるでしょう。もしご存じでなかったとしても、今後は絶対に忘れることはないでしょう。家畜の所有者は動物の痛みを軽減するために、日常的にジクロフェナクなどの非ステロイド系の抗炎症薬を使用しています。運悪く、薬剤を投与された動物が死亡し、ひとたびその死骸をハゲワシが食べると、これらの薬剤は激しい痛み、腎臓疾患、そして死をもたらします。

2000年代初期にジクロフェナク問題が明らかにされて以後、アジアの留鳥である4種のハゲワシ全てが絶滅危惧ⅠA類に指定されました。SAVE(Saving Asia’s Vultures from Extinction: アジアのハゲワシを絶滅から救う)プロジェクトを通してバードライフとRSPB(英国のパートナー)はアジア諸国におけるジクロフェナクの禁止活動と「ハゲワシの安全地帯」創設などにより、危惧される他のハゲワシの保護問題に取り組んできました。しかしながら、「ケトプロフェン」など、ジクロフェナクに代わる他の非ステロイド系抗炎症薬が、ハゲワシに致死的なリスクをもたらしてきました。

バングラデッシュでは2010年にジクロフェナクの禁止に成功し、更に「アセクロフェナク」も同様に違法となりました。SAVEのプログラム・マネジャーでRSPBに所属するChris Bowdenは「アセクロフェナクの禁止が次の重要なステップだ。」と主張しました。

彼はその理由を、「アクセロフェナクは、治療を受けた動物の体内ですぐに致死性のジクロフェナクに転換することがSAVEの調査チームによる実験で証明されたからである」とし、さらに「それはもう薬品会社による『法規制の抜け穴をあざ笑う営利開拓』としかいえない戦略との戦いだった。」と述べました。

バングラデッシュでは、ケトプロフェンがすぐに主要な代替薬剤になりましたが、この薬剤もハゲワシに同様の慢性的な腎臓疾患を起こし、彼らの命を奪うことが分かっています。

幸いにも、バングラデッシュ政府は2ヶ所の「ハゲワシ安全地帯」におけるケトプロフェンの使用禁止を表明しました。ここはハゲワシにとって極めて重要なエリアで、面積も国土の25%に広がっています。この表明にはバングラデッシュの薬剤投与総局(DGDA)がケトプロフェン製造業者に「ハゲワシ安全地帯」における同薬剤の販売、流通、貯蔵、展示の禁止が含まれています。バードライフはこのバングラデシュ政府の決定が国レベルでのケトプロフェン禁止に繋がるよい前例になることから、称賛しています。

SAVEは、これらの決定は同国内での2年間におよぶハゲワシ保護のための集中的な基礎研究の累積結果による成果である、と強調しました。

「これは私たちが望んでいる、獣医や農家に対し『メロキシカム』などのハゲワシに安全な代替薬の使用への転換を促すための重要な一歩です。また他の南アジアの国々がこれに続く重要な前例でもあります。」とBowdenは言っています。

2014年にバングラデシュは世界で初めて「ハゲワシ安全地帯」宣言を承認した国になりました。そして、バングラデシュIUCN(国際自然保護連合)、同森林局および環境・森林省の支援を受け、ハゲワシの死亡を防ぐための半径100㎞ものエリアで集中的な対策を行うためのチームの育成が行われました。それには獣医、農家、薬品会社、全ての関係当局と共同での集中的な支援活動と意識強化活動が含まれていました。

ジクロフェナク: バングラデシュでは禁止。現在、別の新しい薬品も完全に禁止される途上にある。
写真提供: © Chris Gommersal/RSPB

バングラデシュにおけるその他のハゲワシ保護活動の進展としては、ハゲワシ類の長期的な保護のための「ハゲワシ保護国家行動計画」の承認と、同国北部での新しい救護センターの建設があります。

ところが欧州ではアジアにおける失敗をまだ学んでおらず、欧州のハゲワシの80%が生息するスペインを含むEU市場で2014年にジクロフェナクが入手可能になったことを、私たちは知りました。このことが、欧州においても獣医薬としてのジクロフェナクの全面使用禁止を呼びかけるキャンペーンのきっかけとなりました。このキャンペーンには皆様も支援が可能です。

「ジクロフェナク」、「アセクロフェナク」、「ケトプロフェン」の名前を絶対に忘れずに、アジアと欧州の獣医、農家、薬屋および供給業者に「メロキシカム」などの代替薬の使用を広める私たちの活動にご支援ください。

報告者: Shaun Hurrell

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