ヒガシシナアジサシを良い方向へ

2016年8月に青島で見つかったヒガシシナアジサシの2羽の成鳥と2羽の幼鳥 © Yu Tao

アジアで最も希少な海鳥が朝鮮半島で発見されました。この新しい拠点はヒガシシナアジサシが準絶滅状態から回復する助けとなる可能性があります。

「彼らを見た時は心臓がドキドキしました。」とYunkyoung LeeとSe-Kyu Songの二人はその時のことを思い起こします。ウミネコたちの繁殖コロニーの喧騒と混沌の中で、何かが違って見えました。彼らは韓国ではこれまで見られたことのない鳥を見ていたのです。この鳥が世界に100羽以下しか居ないのを知っているので、彼らは目を凝らしました。

‘韓国国立生態学研究所’が定期的に行っている調査の一環として、チームは韓国南西部の沿岸7キロ沖の黄海の中の岩だらけの小島に居ました。2016年の春、彼らは疎らに生えた草とカモメ混じって、特別な鳥が留まっているを見たのです。「その顕著な鶏冠を見て、私たちは営巣中の2ペアのヒガシシナアジサシを実際に見ているということが信じられませんでした。」とYunkyoungは言いました。

ヒガシシナアジサシは世界で最も稀な鳥の一つです: 多分、世界で最も希少な海鳥で、アジアでは間違いなく最も希少な種です。1937年に絶滅したものと想定されてから16年後に中国の東海岸で再発見されたこの絶滅危惧ⅠA類のアジサシは、現在3ヶ所の繁殖地が知られるのみで、その全てが中国の南の島です。ただし、これは今年までのことです。台湾海峡で新しいサイトが確認されたことほか、黄海をはさんで対岸にある韓国の別のコロニーからも1羽の雛が巣立ちました。

ウミネコのコロニーの中の雛1羽と抱卵中のヒガシシナアジサシ © Yunkyoung Lee

ウミネコのコロニーの中の雛1羽と抱卵中のヒガシシナアジサシ © Yunkyoung Lee

「ヒガシシナアジサシが黄海で繁殖する鳥として戻って来たことは非常に嬉しい驚きです。」とバードライフのアジア担当主任研究員のシンバ・チャンは言っています。ただし、この話には別の思わぬ展開があります。韓国でヒガシシナアジサシが他のカモメのコロニーの中で繁殖しているのが見つかったことは、この希少なアジサシに新しい希望をもたらすことでもあるのです。他の繁殖地(馬祖島、Jiushan島、Wuzhishan島および最近確認された澎湖諸島)では、ヒガシシナアジサシはオオアジサシに混ざって繁殖しています。シンバ・チャンはカモメのコロニーの中で発見されたことの重要性を次のように説明します。「揚子江の河口より北にはオオアジサシの繁殖コロニーはないので、ヒガシシナアジサシは自身のコロニーを作れるほどの数にならない限り黄海地域では繁殖をしないだろうと思っていました。今回の発見は本種の未来がより明るいものになることを意味します。本種が営巣できるコロニーがもっと多くあるからです。」

けれども将来の安全の前にまだ多くの疑問があります、とバードライフの上級保護オフィサーのMike Crosbyは言います。「広範囲での繁殖している可能性をふまえて、私たちは何故本種がこれほど数が少ないのかを考える必要があります。営巣コロニーにおける卵の採取や人による攪乱が原因なのでしょうか?」

 

緊急の対応

今回の発見の重要性を知り、韓国の研究者は直ちにヒガシシナアジサシを守る活動を開始しました。「私たちは直ちに環境省に対して市民の立ち入り(研究者を含む)制限し、繁殖の成功が確認されるまでこのエリアを保全するよう求めました。環境省も鳥を救う行動を取りました。」とYunkyoungは言いました。

バードライフはJiushan島でヒガシシナアジサシを呼び寄せるためにデコイを使って繁殖地を復元しました。そしてこの方法を韓国でも実施することを検討しています。2014年と2015年にJiushan島ではバードライフの献身的なチームが30羽の雛が巣立ちしたことを確認しました。けれども2016年には残念ながらこのコロニーからの巣立ちは見られず、本種が安全とは程遠い状態にあり、新しい繁殖地が積極的に保全されるべきであることを意味します。

バードライフのレッドデータ・ブックの「アジアの絶滅危惧種」をもとに作成

バードライフのレッドデータ・ブックの「アジアの絶滅危惧種」をもとに作成

 

北朝鮮で発見?

韓国での新たな発見に触発されて、シンバ・チャンは答えを求めて歴史書を調べました。「1917年に現在の北朝鮮の島嶼で採集されたアジサシの古い記録を慎重に調べた結果、この標本が疑いもなくヒガシシナアジサシのものだったことがわかりました。」韓国人研究者による今回の発見は、多分ヒガシシナアジサシが朝鮮半島で繁殖しているのを初めて発見したわけではないでしょう。実際にまだ知られていない別の繁殖地がこの地域のどこかにある可能性があります。2016年8月末に中国の山東省、青島に4羽のヒガシシナアジサシ(成鳥2羽、幼鳥2羽)が姿を見せました。新規に発見された韓国のコロニーでは1羽しか巣立っておらず、その場所も青島からははるか南なので、黄海がこれまで考えられていたよりもこの絶滅危惧ⅠA類の鳥にとってはるかに重要な場所である可能性が示唆されます。」

 

報告者: Shaun Hurrell

 

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