ロ-カルからグローバルへ:エジプトでの生物多様性条約締約国会議におけるバードライフの動き
エジプトのシェルム・エル・シェイクで開催された生物多様性条約締約国会議での3週間におよぶバードライフの活動が終了しました。ここで私たちは保全プロジェクトの成果を披露し、今後の自然保護で緊急に必要な活動を提案しました。今回は私たちの主な成果をご紹介します。
バードライフ最大の代表団がエジプトのシャルム・エル・シェイクから戻って来ました。世界中からバードライフのパートナー団体が参加し、現場での保護活動の成果を発表したり、世界中で起こっている自然破壊を止めるために緊急に実施すべき活動を提唱したりしました。今回の会議は、2020年の北京で開催される非常に重要な会議への踏み切り台となります。北京での会議では、世界の自然、そして私達自身の未来を決める新たな生物多様性の枠組みが定められる予定です。
何故参加したか
2018年11月13~29日にシャルム・エル・シェイクで開催された国連生物多様性条約第14回締約国会議(CBD-COP14)は2年に1回開催される政府間会議の14回目にあたります。今回の会議の主題は、生物多様性の喪失を減らし、自然を再生するという2010年に定めた目標には多少の進展はあるにもかかわらず、多くの目標が達成には程遠く、世界の動植物の保全状況は引き続き悪化しているということでした。
私たちバードライフは、2018年版の「State of the World’s Birds」を発表するなど科学的情報を提供することで、こうした議論に貢献しました。この文書では、世界で40%の鳥が減っていること、そしてバードライフが世界120の国のパートナーにわたる世界に類を見ない専門知識と現場での経験のネットワークを有していることが示されています。バードライフの政策チームは、CEOのパトリシア・ズリータを始め、アフリカと中東の地域スタッフおよびエジプト、ドイツ、インド、日本などのパートナー総勢30名とともに会議に参加しました。
会議の主な成果
- ハイレベル宣言: 主要会議に先立ちCEOのパトリシア・ズリータや他のスタッフ、パートナーはアフリカ環境大臣サミットに参加し、アフリカの生物多様性の状況とそれを保全するための戦略について協議しました。その成果は「生物多様性に関するアフリカ閣僚宣言」として発表されました。これは2030年までに、生態系と生物多様性を復元し、アフリカ大陸のレジリエンスを高めるための活動計画をアフリカ全土で進めることを謳ったものです。別のハイレベル会合では、環境大臣やビジネスセクターのリーダーが集い、エネルギー、採鉱、インフラ開発などの経済分野にいかに生物多様性を組み入れるかについて議論されました。この成果は「シャルム・エル・シェイク宣言」として定められました。この宣言は「人と地球のための生物多様性への投資」と題し、生物多様性への開発の影響を最小化するために統合的な土地利用計画と戦略的環境評価の利用などを促すものとなりました。
- 生物多様性の2020年目標: 今回のCOPでは愛知目標の議論が大きな割合を占めていました。今回の会議に先立ちCBD事務局が発表した報告書では、陸地の17%と海洋の10%の保全など部分的には達成される見込みがあるものの、多くの国が作成した生物多様性国家戦略および行動計画の内容では目標達成には至らないことが報告されています。今回の会議で各国政府は、愛知目標の達成に向けた取り組みを加速させるため、KBA(生物多様性重要地域)や、今回特にバードライフが提唱した「Alliance for Zero Extinction」サイト(世界で特に絶滅が危惧されている種の個体群が生息する地域)などを守るといった選択肢をリストアップすることに合意しました。
- ポスト愛知目標に向けた合意: シャルム・エル・シェイク宣言および詳細計画では、持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)と歩調を合わせたポスト愛知目標の枠組みを策定し、2020年に国連総会を招聘し生物多様性に関する国家元首レベルのサミットを開催することが盛り込まれました。
- 生物多様性の「主流化」: 生物多様性への配慮を各国の主要な計画や政策プロセスに組み込むためのCBDの合言葉です。CBDの資金メカニズムである地球環境ファシリティ(GEF)による支援の重要性も強調されました。現在バードライフが11カ国で実施しているGEF-UNDP(国連開発計画)の「渡り性帆翔鳥プロジェクト」もその取り組みの一つです。また、本会議の開催国エジプトの同プロジェクトにおける主な役割として、地中海東部地域において生物多様性への影響を最小化しつつ、再生可能エネルギーの拠点となることを目指した取り組みをバードライフのパートナーNature Conservation Egyptと共同で進めることが紹介されました。
バードライフの科学と活動を共有
バードライフの活動は様々な方法でニュースなどで紹介されました。バードライフ南アフリカの政策・提言プログラム・マネジャーのCandice Stevensは、税金をインセンティブとした生物多様性保全の取り組みにより、南アフリカ政府と共同で「Pathfinder Special Commendation Award」を受賞しました。レバノンのパートナー「Society for the Protection of Nature in Lebanon」の Asaad Serhalは、himaと呼ばれる伝統的な土地利用システムを活かした地域に根差した保全活動が認められ、「みどり賞」(イオン環境財団が主催する表彰)を受賞しました。この活動は、レバノン全体で22ヶ所の陸地、湿地、海洋の保全につながりました。またジンバブエのパートナーBirdLife ZimbabweのFadzai Matsvimboはトヨタ自動車(株)からハゲワシの調査と管理への支援として車の鍵を受け取りました。
一方、バードライフの科学・政策・情報ディレクターのMelanie Heathは、第4回科学フォーラムのシナリオとデータに関するパネルで発言しました。また世界科学コーディネーターのIan Burfieldは、「大きな危機に直面している種の最後の砦」とも言える生息地のマッピングの取り組みを紹介しました。政策ヘッドのNoëlle Kümpelはエジプトにおけるバードライフの活動と今回の会議についての思いを地元のメディア・インタビューで伝えました。また世界マリーン政策コーディネーターのCarolina Hazinは 「持続可能な海洋の日」の特別イベントで「ミズナギドリのシャーリー」となって渡り性海鳥が直面する脅威に光を当てました。
さらにバードライフは多数のサイドイベントを主催し、経験や事例を発表しました。以下はその例です。
- エジプト、インド、ケニア、ネパールおよびウガンダのパートナーの能力形成 − 再生可能エネルギーや漁業および他の分野に生物多様性への考慮を取り入れてもらうために政府や様々なステークホルダーと共同で国および地域レベルで実施した活動
- PRISMツールキット − 生物多様性保全の改善につながる保全プロジェクトのモニタリング
- 鳥の狩猟とわな猟の持続可能性の評価と管理
- 生物多様性を守るためにどれ程の、またどのような種類の陸地と海が必要か、また生物多様性の喪失を逆転させ、生態系と生態系サービスを守る新たな目標を設定するためにはどのような科学が必要かに関する検討
- 移動性野生動物種の保全に関する条約(CMS)、ラムサール条約、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)などの他の条約との連携と相乗効果により生物多様性、気候、持続可能な開発に貢献する自然ベースの解決策
シャルム・エル・シェイクにおいて各国政府による強力な意思決定と約束がなされた今、私たちはこの勢いを継続しなければなりません。そして二日の休みの後、すでにそのように動き出しています。ポーランドのカトビツェで開催されるUNFCCC締約国会議において、自然ベースの解決策と生物多様性に優しいエネルギー開発の役割を唱えるのです。
バードライフが開催したサイドイベントの一覧はこちら(英語)
バードライフの政策提言活動は、twitterで配信しています( @BirdLife_Policy )
締約国会議のまとめはこちら(英語)
報告者:Dena Cator & Noëlle Kümpel