オスロ・パリ条約の野生―大西洋のアマゾンの保全

ニシツノメドリ
写真提供: (c) Shutterstock

正確な科学分析に従い、バードライフがOSPAR(オスロ・パリ条約)に対して、北東大西洋エリアを国際的な保全状態にすることを求める画期的な提案を提出しました。このエリアは海の生物多様性の真の‘宝庫’と言われています。Marguerite Tarzia(バードライフ・ヨーロッパ)、Maria DiasおよびAna Carneiro(共にバードライフ本部)の3人は60人以上の海鳥学者とこの素晴らしい共同研究を推進し、深海からの彼らのワクワクするような話を共有しています・・・。

これは未開の公海の秘密を持つ地図で、語られていない宝物の正確な位置をピンポイントで示す地図です。‘Xがその場所を示しています’。正にジュール・ヴェルヌ(SFの父とも称されるフランス人小説家、「海底2万哩」などの著者)の小説の世界に飛び込んだように聞こえませんか?この伝説的なアトランティスは最終的に見つかりましたか?私たちは海底2万リーグ(1リーグは約4.8km)に居るのでしょうか?さて、バードライフでは、科学は小説よりも奇妙で壮観なものだと考えています。北大西洋にある海洋生物多様性の真の宝庫である雄大な‘Evlanov海山&海盆’にようこそ。

60人を超える海鳥科学者の大掛かりな共同研究による正確な解析に従い、私たちの海洋チームは生態学者のパラダイスを特定しました。海洋生物の多様性が極めて高い海のホットスポットは‘北東大西洋のアマゾン’とも表現されます。一つには、ここは海鳥にとって磁石で、海鳥の種数(少なくとも18種の海鳥の重要な採餌場所です)と個体数の両方でここは最大の公海エリアです。控えめに見てもこのエリアには少なくとも290万羽の海鳥が一年を通して生息しています。さらに、このエリアは12種の海鳥によりIBA(重要生息環境)にするべきであることが分かり、その中にはニシツノメドリ、バーミューダミズナギドリ、フルマカモメ、マデイラミズナギドリ、更には、動物界最長の渡りを行う、疲れを知らないキョクアジサシのような長距離の渡り鳥が含まれます。

そして、これが全てではありません。このエリアには海洋生物で最も象徴的なヨシキリザメ、アオザメ、タイセイヨウクロマグロ、オサガメなどの大型海洋動物が度々訪れます(それも長期間にわたり)。イワシクジラも夏の北方への移動時にアゾレス諸島方面からここに来ることがわかっています。面白いことに、これらの動物がこのエリアに近付く時には、気温と海流の変化が彼らの本能を刺激して、採餌行動を始めさせているように見えます。

発見されたパラダイス

ではどのようにしてこの生態学者のパラダイスは発見されたのでしょうか?答えは実に単純です。私たちは鳥を追跡したのです。海鳥は‘海の生命のサイクル’の本質的な一部です。波の上を飛ぶ鳥は海洋生物について多くのことを教えてくれます。また、鳥は水の下にいる彼らに比べて監視がしやすいので、海鳥は重要な海の生物多様性を特定するために使う理想的な‘追跡用発信機’になるのです。トリュフを探すのにブタを使うのと少し似ています。既存の海鳥追跡データの中の最大のコレクションである私たちの‘海鳥追跡データベース’のお蔭で、私たちは2千羽を超える鳥を追跡してこの特別な場所への直針路を描くことが出来ました。このデータベースは世界中の160人を超える科学者の協力により出来上がりました。

OSPAR(オスロ・パリ条約)

10月に私たちはOSPAR条約(北東大西洋の海洋環境を保全するための条約)にこの驚くべき発見を提出し、この場所を国際的に認められているマリーン保護区(MPA)に指定して保全すべきであると提案しました。もしこの提案がOSPARに受け入れられれば、同MPAは主な証拠の元として海鳥のデータを使って北東大西洋の公海を特定する、初めてのものになるでしょう。加えて、それはマリーン保護区の世界的ネットワークの主要な不足部分を埋めるでしょう。公海は海鳥にとって、特に渡りの途中での中継地、あるいは最終的な越冬地として非常に重要です。これはエネルギーを使う繁殖期の後の大切な休息及び回復期です。しかし、同時に危険な時でもあり、冬の‘海鳥の難破’(海の沖合の厳しい条件により数千羽の海鳥が死ぬとき)は大西洋においては多く文書に記載されています。

残念ながらこれまでのところ重要な生物多様性の豊かな‘公海’エリアの特定も、これを保全する活動もほとんど進んでいません。問題を難しくしているのはMPAに相応しい場所がABNJ(国の管轄外の地域)にある場合です。これは正に今回提案したところに当てはまります。それは空白地帯に等しい海にあるのです。ですからこの点で国際的協力を確保することが不可欠なのです。

私たちの提案は正に第一歩で、今後の数ヶ月に私たちの‘とっぴなOSPAR’は‘熱心であることの重要性’を強調するでしょう。私たちは今15カ国の政府(OSPAR条約の締結国)がこの提案を、時間を掛けて熟考しているのを、息をひそめて今か今かと待っているところです。科学的解析ではこのエリアが海鳥にとって非常に重要で、MPAとして保全することに値することを明確に示しています。問題の政府は今や彼らのゲームを進めて、簡単な質問に答えるべき時です。それは、この海洋環境を保全したいのか、議会で論議を続けて時間を無駄にしたいのか、ということです。

 

報告者: Marguerite Tarzia, Maria Dias & Ana Carneiro

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