南アジアのハゲワシを守ろう
もし今すぐ保護活動のステップが取られなければ、インドやその他の南アジアにはハゲワシが居なくなってしまうでしょうと、現在インド・ハイデラバードで開催されているCBD(生物多様性条約)COP-11でNGOを警告しました。南アジアにはかつて数百万羽を超えるハゲワシが生息していましたが、この10年の間にその99%が姿を消しました。
「これは世界中のどこでもこれまでに報告のあった鳥の減少の最速のものです。」とボンベイ自然史協会(BNHS: インドのパートナー)の理事アサド・ラーマニ博士は言いました。
密漁や生息地の破壊が原因で絶滅に瀕する他の鳥とは異なり、ハゲワシはジクロフェナクという薬品のために姿を消しつつあるのです。2006年にインド政府はハゲワシを守るために獣医がこの薬を使うことを禁止したのですが、実際には依然として使われているのです。人の鎮痛薬として使われているジクロフェナクが今、獣医用に転用されているのです。政府がこれを規範薬品とすることを求めて、ラーマニ博士はジクロフェナクを処方されても死んでしまった家畜の死骸を食べたハゲワシは3日から10日のうちに死んでしまうと言いました。
「インド獣医師研究所の研究によれば、このようなハゲワシには腎臓に障害が起き、直ることはありません。」と彼は言いました。
「ハゲワシにとってジクロフェナクは青酸化物のように致死的です。」と彼は強調しました。
CBD COP会議のサイドイベントの一つ“南アジアで絶滅が危惧されるハゲワシを守ろう”ではSAVE(アジアのハゲワシを絶滅から守ろう)の活動を説明しました。SAVEは10のインド内外のNGOの連合で、ジクロフェナクの使用をなくす活動や、保護繁殖プログラムを立ち上げ、将来のハゲワシの放鳥の準備のために、ジクロフェナクを集中的に除染した半径100kmのエリアを‘ハゲワシ安全地帯’として創設する活動の先頭に立っています。
インドにはかつて4~5百万羽のハゲワシが生息していましたが、今では僅か数千羽が残っているだけです。南アジアの3種のハゲワシすべてがIUCN(国際自然保護連合)のレッド・リストで絶滅危惧ⅠA類に指定されています。
二つ目のサイドイベント“南アジア地域でのハゲワシ復活プログラム”では南アジア各国の政府によるハゲワシ保護活動を強調しましたが、それにはIUCNにより‘南アジア地域でのハゲワシ復活’を進めるために行われているイニシアティブも含まれて居ます。これは2012年に採択されたバングラディッシュ、インド、ネパール、パキスタン政府によるハゲワシ保護に関する地域宣言に基づいていますが、これは4ヶ国の協力を進める前例のない機会を与えました。
SAVEはハゲワシの喪失を特別に重要な生態系サービスの喪失として強調しています。動物の死骸が現在腐るに任せて放置され、大きなごみ処理問題や健康問題となっています。野良犬、犬の襲撃、狂犬病の危険性などが増加しています。その他の影響には地下水の汚染や腐敗した動物の死骸のために3週間は使用不能になる農地を持つ農民の所得喪失などがあります。ハゲワシの喪失は幾つかのコミュニティに深刻な社会的影響を与えました。たとえば、死んだ人の体を‘沈黙の塔’でハゲワシに与えることを昔からの慣わしとしていたパールシー族や、ジャイナ教のPanjrapores(動物シェルター)もハゲワシに依存していました。