保全は鳥やミツバチだけ見ていれば良いわけではない
「保全」という言葉を耳にしたら何を思い浮かべますか?多くの人は種や生息地、すなわち森や海、トラやクジラ、ペンギン、オウムなどの保全が頭に浮かぶでしょう。多くの自然保護活動家は野生生物や自然界への情熱をもとにそのキャリアを選んでいます。その後、自然科学のトレーニングを受けたり、生物学、動物学、植物学、生態学などの学位を取得したります
けれども、実際には、保全は自然へのアクセスやその利用、価値、保全などに関する決定がからむ社会的プロセスなのです。保護区が設定されるとそれは例えばエコツーリズムなどにより、一部の人々には利益をもたらしますが、他方では、薪炭の元や放牧地へのアクセスが禁じられるために、不利益になる人もいます。社会的、政治的、経済的な背景が(どのように人々が土地から生計を立てているか、資源の利用に関して誰が決めるのか、だれが土地の所有者かなど)あらゆる自然保護活動の効率性と有効性に影響を及ぼすのです。
バードライフには、メキシコ、ブルキナファソおよびビクトリア湖周辺での最近の活動からもわかるように、自然保護と開発を統合して取り組んできた優れた実績があります。けれども、保護活動の典型的なキャリアパスをたどった自然保護活動家の多くは、社会的問題に対処し、業務に組み込んでいく知識とスキルが不足しています。
この問題に対処するため、バードライフ、ファウナ&フローラ・インターナショナル(FFI)、熱帯生物学協会(TBA)、ケンブリッジ大学地理学部は、自然保護活動家に欠けているこのような知識を補う教材を開発するために協力することになりました。INTRINSICと呼ばれるこのプロジェクトの成果物は保護活動の「社会的側面」への導入となり、社会システムの理解を深め、地元の人々やコミュニティと共同で活動するのに役立つでしょう。
この教材には指導者ガイドも含まれており、訓練が行われる場所の特性に合わせたプレゼン用スライドも用意されています。題材にはコミュニティと社会の多様性、性、紛争管理、生計手段、福祉などが含まれます。権利に基づく自然保護へのアプローチ、公平性、参加と能力の問題などの管理上のテーマもカバーしています。
この教材はケーススタディ、ロールプレイング、ペアおよび小グループでの議論やフィードバックなど、様々な双方向式活動と訓練で使用されることを想定しています。3~4日間の訓練コース用に作られていますが、参加者が学びたいことや時間の都合により、教材の個々のモジュールは個別に使用したり、指導者が選んで使うことが出来ます。
社会問題と取り組むことは良好な保護活動と長期的結果を生み出すために不可欠です。INTRINSICは東アフリカですでに良い結果が出ています。ルワンダのPrudence Ndabasanze氏は参加者の意見を次のようにまとめました: 「INTRINSIC訓練コースは私たちがが保護活動の場で直面している課題すべてに対応しているので、素晴らしいと思います。」別の参加者は「もし5年前にこの教材があったら、私がやってきた仕事はずっと簡単にできたことでしょう。今後の活動では、この教材で身につけた知識やコンセプトをもとに勧めます。」と言いました。ネーチャー・ケニアのPaul Gacheruは「この教材から学んだスキルは、地元強化に取り組んでいる私の仲間やフィールド活動のスタッフの間で共有しています。この教材により今度は私が指導者になることが出来ます。」
INTRINSICのダウンロードはこちら
報告者: David Thomas