我々は孤独ではない – ヨーロッパに親友する外来動植物

タヌキ
写真提供: © Michelle Bender

欧州の主導的専門家がルクセンブルグに集まり、3日間にわたり外来種の拡大について集中的に議論します。最重要の議題は、現時点での外来種の侵入リスクの最新評価と優先度の高い安全対策、即ち、バイオセキュリティ対策の概要を決めることです。NEOBIOTA国際会議で挑むメナス(脅威)は宇宙から来るのではなく、外来の動植物によるものなのです。

「我々は孤独ではない」。NEOBIOTA(生物的侵略に関する欧州のグループ)を形成する科学者と環境管理者のコンソーシアムは、EUには1,800種の侵略的外来種がおり、急速にその数を増やしていると警告しています。ドイツで問題となっている南米のヌートリアやイタリアにはびこっている北米のハイイロリス、香港の九龍半島からやって来てテムズ川沿岸に急速に広がったチュウゴクモクズガニなどがその例です。

これらの外来種が空飛ぶ円盤や宇宙人ほど怖くないと思われるなら、考え直してみてください。外来種の影響は少なくとも3分野、即ち、経済、健康および環境において現在の欧州市民にとって大きな懸念となっています。

地域の生態系において、外来種は種の絶滅の4つの主要因のうちの1つです(他の3つは、生息地の変化、過剰搾取および汚染)。外来種は20世紀の鳥類絶滅の多くの場合で主な原因であり、IUCNレッド・リストの絶滅危惧ⅠA類に分類される種の実に44%で、その危機の要因にもなっています。また外来種の多くは在来の野生生物、家畜、ペットそして場合によっては人にも深刻な影響を及ぼす病原体を運ぶ「病気の火炎瓶」でもあるのです。欧州委員会は外来種のEU経済への損害は毎年少なくとも125百万ユーロに達すると推定しています。

自然には国境がありません。1カ国でも侵略的外来種の取り組みに失敗すれば、私たちの共通の母なる自然は危機にさらされるのです。解決策は汎欧州レベルで見つけなければなりません。即ち、共通市場は共通のバイオセキュリティが必要なことは理に叶っています。幸いにも2020年までの生物多様性目標を達成することに熱心なEUは、超国家的活動を約束しています。7月に公開された37種の「EUが懸念する侵略的外来種」リストは大歓迎されました。

早過ぎるということはありません。トリノ大学の研究者がNEOBIOTA 2016に伝えるように、リストに記載されている種の中でも最も悪名高い種の1つであるツマアカスズメバチ(何人かの死傷事件があったため「アジアの殺人バチ」と呼ばれている)が急速に広がっています。2004年に初めてフランスで東南アジアからの陶器の輸入品に混じって上陸したこの有毒な訪問者は隣国のスペイン、ポルトガル、ドイツ、最近ではイタリアに広がりました。

トリノ大学の研究は外来種の進入路と‘ブラック・リスト37’の種の所持、輸入、販売および飼育の禁止に関する最近のEU規制の適時性を強調しています。けれどもこの法律が優れている一方で、同法は緊急に同様に危険な他の種もカバーするように広げる必要があるのです。NEOBIOTAは欧州委員会が2017年のリストに今回の17種だけでなく数百種を追加することを期待しています。ただしそのうちの何種かはあまりにも議論の余地があり過ぎるかもしれません。

最近人気が高まっている外来ペットのタヌキの場合は、可愛さが敵です。本種は、科学雑誌PLOS ONEに最近発表された論文で報告されているように、欧州における狂犬病の主な媒介者の1つなのです。けれどもタヌキの勢いは衰えることなく欧州全土に拡大し続けています。その適応性、繁殖率、天敵の不在などの理由から、タヌキはその数を増やしており、放っておけば欧州で最も数が多く、広範囲に広がった、病気を運ぶ捕食動物の一つになる可能性が高いのです。もしタヌキによる絶滅危惧の在来種への生態学的脅威が侵略的外来種リストの更新版に載せるのに十分な理由ではないならば、最低でもEUは誰かが「顎に錠を掛ける」まで、「試合のファンファーレ」が鳴っていることを認識すべきです。

NEOBIOTAは気候変動がタヌキや他の外来種の影響を劇的に増大させると警告しています。行動を起こすのは今です。自然と人が共に危険な状態にあることからEUは耳を傾けるべきです。諺の通り「一度噛まれたら、二度目からは憶病になる」のです。

 

報告者: Gui-Xi Young

 

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