鳥が環境について教えてくれること
私は今‘2016年BirdNumbers’の活動のために、ドイツのハレ市に居ます。オタクっぽい話に聞こえるなら、まさにその通りです。この会議には鳥のカウントに専心している全ヨーロッパおよびほかの地域から来た科学者が集まるのです。鳥は自然界で最も理解の進んでいる生物ですが、それは鳥のカウントをする数千人のボランティアによる素晴らしい活動のおかげなのです。こうして集まったデータを使って、科学者が解析を行うことで分布、傾向、渡りのパターンなどを明らかになります。
鳥は地球の健康状態について多くのことを教えてくれます。伝説的な昔の炭鉱でのカナリアのように、鳥に起きることは私たち人類に間もなく起きることについての重要なメッセージをもたらすからです。例えば、気候の変化はすでに、鳥の分布の変化によって垣間見ることができます。1960年代に戻れば、化学薬品による公害の危険性を最初に警告したのは鳴禽類の個体群の崩壊でした。
それでは2016年には鳥は私たちに何を教えてくれているでしょうか?それは自然環境の容赦ない破壊と、その主要因が、集約的農業、インフラ開発、エネルギー開発であることを告げています。けれども、それと同時に積極的な保全対策が行われ、優れた法律が尊重されれば自然が戻って来るとも言っています。
最悪のニュースは農業からのもので、その様相はいつも同じです。農耕地の鳥は集約農業の拡大により減り続けています(ヨーロッパヤマウズラのドイツの個体数は75%も減少しました)。集約的牧畜業とバイオ燃料およびトウモロコシをベースにしたバイオガスへの常軌を逸した補助金によって、単作農業が広まっています。草原は利用転換され続けています(ドイツでは僅か5年で最も生物多様性に富んだ草原の9%が失われました)。共通農業政策が唱える「緑化」が空虚なことは、鳥のデータで一目瞭然です。
もう一つの災害地域は北欧の泥炭地です。極北の湿地帯は独特の生物多様性を持つ場所で、巨大な炭素貯蔵場所ですが、産業化した林業と助成金で支えられる泥炭採取により破壊され続けています。フィンランドでは、泥炭地を好む鳥の50%が減少しました。
一方では、気候変動活動の最前線では嬉しいニュースもあります。風力発電の極めて急速な拡大は鳥に対する新しい影響要因です。鳥は風力発電施設に衝突し、その場所を避けるようになると、生息地を失ってしまいます。けれども私たちは次第にその相互関係について知るようになり、最も問題の大きい場所への風力発電所の建設を回避出来るようになりました。ひどい場所に設置された風車は、鳥に重大なダメージを与えています。しかし、熱心な企業や当局は、ボランティアの作成した鳥の調査データに頼るだけでなく、レーダー、人工衛星追跡装置、熱画像、コンピュータ・モデルなどの最新技術を活用するようになりました。鳥への影響を避けることは可能なことであり、実例も増えつつあります。
そして、真に良いニュースもあります。人為的な影響で過去に一掃されていた象徴的な鳥の何種かが、様々な良い政策、特にEU野鳥指令によって、戻って来ているのです。ナベコウ、オジロワシ、ツルその他多くの種が、数十年、時には数世紀も見られなかった地域や国で急速にその数を増やしていることが確認されています。鳥は私たちに道を示してくれています。私たちがひとたび問題を理解し、それに対して何をすべきか決めることができれば、問題は解決できるのです。
報告者: Ariel Brunner