EUの生物多様性戦略―まだ道半ば?

生物多様性は地球にとって欠くことができない血液のようなものです。それは地球上に存在する多様な生命であり、それぞれの種はたとえ小さなものでも重要な役割を果たしています。しかし今その多くが絶滅の危機に直面し、生き残るために苦労しています。‘2020年までのEUの生物多様性戦略’は欧州の危機にある生息地と種を守るために生物多様性喪失の全ての主要原因に対する活動を行う欧州委員会の10年間のマスター・プランです。2020年までの中間にある現在、バードライフの‘中間評価報告’が現在の欧州の立ち位置をつぶさに見ています。

物事を広い視野で見る時、EUはそれ程良い成績を上げていません。ビーバー、ツル類、オオカミ、ワシ類などの姿を消しつつあった種がこの数十年に戻り始めたというのは本当です。これは主にEU野鳥指令と生息地指令と呼ばれるEUの自然保護法のお蔭で、これらは欧州における自然保護の要です。けれども多くの動植物が依然として絶滅の危機にあるので、まだ生物多様性の喪失を食い止め、それに成功しているわけではないことも明らかです。EU自然保護法で守られている種の20%以上、生息地の30%以上が基準年の2010年と比べると悪化しているのです。何が起きているのでしょうか?適切な法律がないからではありません。全てのツールと同様、法律は適切に利用されなければ機能しないからなのです。これは正にEU加盟国の幾つかで起きていることで、例えば、鳥の密猟やナチュラ2000サイトの破壊が当てはまります。これらの加盟国はEU法を無視してきており、責任も取っていません。別の大きな問題は、加盟国やEUレベルでの財源の不足で、これはナチュラ2000サイトの管理を実現させるためには必須のものです。

私たちに分かっているのは農耕地が環境災害に陥っているということです。自然の草原はどこでも姿を消し、産業規模の農業が欧州では益々一般的になっています。その悲しい結果として、農耕地の鳥の半分以上が1980年以後姿を消しました。EUの共通農業政策(CAP)はこの問題に取り組むための効果的なツールのはずでしたが実現に失敗しました。最近の改善案では各農場で自然のために‘生態重点地帯(Ecological Focus Area)’と呼ばれる小さな区画を設定するというアイディアが推奨されました。これは野生の動植物のために僅かなスペースを守るだけで生物多様性を保全する大きな可能性を持つはずでした。しかし当初のコンセプトがすっかり骨抜きになったことでほとんどの農場が何もしないことは想像に難くありません。失敗に終わったもう一つの機会は環境的に傷つきやすい草原をきっちりと守ることでした。残念ながら多くのEU加盟国はこのことを重大と捉えてはおらず、ナチュラ2000エリアの全ての草原で環境的に傷つきやすいとの指定を受けた場所はほとんどありません。基本的な法律の不十分なことと、加盟国がこの法律の実施に後ろ向きなことがこのCAP改革を自然に対する失われた機会にしてしまうでしょう。

特定外来生物の場合は、EUに意図的あるいは偶発的に持ち込まれた外来種が欧州全域に広がっています。それらは原産の動植物を駆逐する主な侵略者となり、自然を損傷するだけでなく私たちの健康や経済にも害を及ぼす原因です。EUは外来種がもたらす大きな困難に取り組むための新しい法律を作りましたが、今後の5年間にこのツールを最大限利用しなければならず、さもないとこれもまた空疎な行動に終わるでしょう。

海についてはどうでしょうか?EUの漁業管理の新しい改正法である共通漁業政策(CFP)は少なくとも流れを変えるようなビジョンを設定しました。しかし、その実現にはEUがこのビジョンを現実のものとする気構えを持っているかどうかに多くが掛かっています。この政策を実施するために採択された法律は過剰漁獲を止め、漁業活動が調整されることを確実にすることにより数千羽の海鳥や他の海洋動物の偶発死や海洋の海底破壊を招くものにしないようにしなければなりません。そうでないと、法律の改定には意味がありません。

私たちは現在2020年までの道半ばにあり多くのやるべきことが残っています。しかし、私たちは2020年EU生物多様性戦略を生物多様性と自然のために成功に導く活動を行うためにバードライフの中間評価報告を利用することが出来るのです。

(報告者: Wouter Langhout)

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