アンデスコンドルのために毒薬を使用中止に

アルゼンチンで絶滅危惧種に分類されているアンデスコンドル 写真提供:© Pedro Szekely

ハゲワシ類の中毒死は、アフリカとユーラシアだけでの問題ではありません。最近のショッキングな出来事が示すように、アメリカ大陸の近縁種も大量に殺されています。これは将来の悲劇を防ぐため、より厳しい法律が緊急に必要であることを示すものです。

1月22日(月)、自然保護界は衝撃的なニュースに打ちのめされました。アルゼンチンのアンデス山中のメンドーサ市ロス・モジェス町の近郊で、ピューマとヒツジやヤギなどの家畜の死骸の側で34羽のアンデスコンドルが死んでいるのが見つかったのです。

「コンドルの大量死はアルゼンチンではこれが初めてではありませんが、記録的な個体数減少は大きな警告をうながすものです。」とアヴェス・アルヘンティナス(アルゼンチンのパートナー)の理事エルナン・カサーニャスは言っています。

この34羽のコンドルは、過去1年間にアルゼンチンで殺されたコンドルを60羽も超える数にするものです。この60羽の中には、2017年3月にフフイ州で発見されたもう一つの大量死の19羽を含みます。

この死因は必然性がなかっただけに悲惨です。アルゼンチンでは多くの牧場で、キツネ、ピューマ、ワシ類などによる家畜の捕食との戦いのために毒入り餌を使用します。さもないと家畜が捕食される可能性があるからです。これは禁止されているのですが、彼らは猫いらずなどの毒薬を動物の死骸や肉の塊に加えるのを止めません。最近ではカルボフランなど毒性のある農薬が使用されていることも分かっています。研究者は最近の悲劇の原因がカルボフランによるものだったことを明らかにしました。事実、研究所の検査結果で最近のコンドルの死の66羽すべての原因がカルボフランによるものでした。

 

狙いの一頭(ピューマ)で35羽(コンドル)が死んだ。
写真提供:© Secretaría de Ambiente y Ordenamiento Territorial de Mendoza

これは、アンデスコンドルの個体数全体に対して大きな影響があるので、本当の悲劇なのです。世界的にはアンデスコンドルは準絶滅危惧種とされていますが、アルゼンチンでは個体数が急減している事から、国内の尺度で「絶滅危惧種」としています。世界のアンデスコンドルの総個体数は、僅か6,700羽と推定されており、そのうちの約2,500羽がアルゼンチンに生息しています。

自然保護生物学調査グループ」が制作し、オンラインで公開されたビデオが強力な比較例を示して一般の注目を集めました。ビデオはメンドーサ州とフフイ州におけるコンドルの殺害の割合は(世界全体のコンドルの個体数と比較して)、アルゼンチンとチリの全人口の割合(世界の人口数と比較して)と同じであることを痛感させます。

このような虐殺は人間に例えれば、どうなるでしょうか?

アンデスコンドルは成熟するまでに長い年月を要しますが、出生率が相対的に低いのです。従って、このような大量死は本種にとって特に大きな打撃であり、ことに死んだ成鳥は繁殖の最盛期にあった個体でした。メンドーサ州のコンドルの個体群が、受けた打撃から回復するには長い年月を要するでしょう。

「自然保護生物学調査グループ」のSergio Lambertucciは、状況の緊急性を次のように強調します。「アンデスコンドルは、このような高い死亡率では生存できません。アンデス地方の空を飛ぶコンドルをこれからも見たいと望むなら、毒の使用を止めなければなりません。」

コンドルのイメージは、コンドルがヒツジやヤギなどの家畜を襲う、という誤った思い込みにより歪められています。実際には、これは全くの誤解です。コンドルは獲物が既に死んでいることが必要な腐肉食者です。近縁種のハゲワシと同様、彼らには飛行中にウサギを掴むことができる爪さえないのです。

恐ろしいものとは全く異なり、コンドルには大きな価値があります。コンドルは、多くのアンデスの文化で聖なる動物です。チリ、コロンビア、エクアドル、ボリビアでは国鳥となっており、彼らにとって結集するための誇りの象徴です。地球上の鳥、あるいは動物で最も堂々とした種の一つとして、大きな経済的価値があります。コンドルは、地球上でもっとも大きな陸生の飛ぶ鳥の姿を楽しむために世界各地からアンデス地方に訪れる観光客を驚嘆させます。

しかし、コンドルの最も重要な役割はその自然界における働きです。彼らは自然の「清掃員のメンバー」として環境の健全性のために不可欠です。アメリカ大陸でコンドルは、アフリカとユーラシアのハゲワシと同じ生態的地位を有しています。近い類縁種ではありませんが、その役割は全く同じです。

アンデスコンドルの鋭い嘴は自然の’清掃員’のメンバーとして効率的です。
写真提供:© Ltshears

コンドルとハゲワシを結びつける最大の問題は何でしょうか:アジアと欧州で獣医薬の目的で使用されるジクロフェナク等の薬品であれ、アルゼンチンでのカルボフランと全く同様にアフリカで餌に加えられる毒薬であれ、それは毒殺です。毒薬は、アフリカに生息する11種のハゲワシのうち7種を世界的な絶滅危惧種にしました。去年、アフリカ・ユーラシアのハゲワシに対する野心的な「複数種行動計画」が承認されました。ここで使われる多くの保護技術がアメリカ大陸にも伝わることを期待しています。

アヴェス・アルヘンティナスが、カルボフランなど毒性のある農薬を、誰が買い、何の目的で使われるかをトレースできる新しい規制の策定に協力しているというのは良いニュースです。「農薬トレーサビリティ法が緊急に必要です。」とエルマン・カサニャスは強調しました。

ロス・モジェスでの最近の最大の悲劇に関しては、刑事司法当局が犯人の発見と適切な罰金または刑罰を課するために捜査を行っています。この事件はメディアや大衆の大きな注目を集めています。今回の悲劇は極めて悲しいことですが、それがもたらしたことは人々に大きな認識を引き起こしたことで、それにより今後は同様の悲劇が避けられることを私たちは望んでいます。

 

報告者:Francisco González Táboas, Aves Argentinas

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