海鳥保全に向けた国際協力活動の20周年をお祝いしましょう

ハイガシラアホウドリの雛

今日は5回目の世界アルバトロスデー(アホウドリの日)です。「アホウドリ類とミズナギドリ類の保全に関する協定(ACAP)」は、これらの海鳥が直面する保全の危機に対する世界的な認識を高めることを目的として、2020年にこの記念日を制定し、毎年6月19日に祝うことにしました。このブログでは、世界アルバトロスデーとACAPの協定発効20周年を記念して、私たちがどのように貢献し、ACAPの目的をどのように支援してきたか、その進展を振り返ります。イギリスのパートナー団体RSPB(英国王立鳥類保護協会)の海洋プログラムで国際混獲プロジェクトを担当しているZoe Jacobsが、過去20年にわたる協力的な取り組みが世界の海鳥保全にどのように貢献してきたかを説明します。

 

海鳥保全の必要性

アホウドリ類は鳥類の中で、また脊椎動物の中でも、世界的に最も絶滅が危惧されています。世界アルバトロスデーは、そんなアホウドリ類が直面している重大な保全危機について考える機会でもあります。365種の海鳥のうち約半数は個体数が減少しており、22種のアホウドリのうちの15種を含む、31%が世界的に絶滅の危機に瀕しています。

 

洋上で海鳥に最も大きな影響を及ぼしているのは、漁業によって偶発的に命を落としてしまう「混獲」です。一方陸上では、海鳥は侵略的外来種を含む複数の脅威に直面する可能性があります。多くの海鳥種は国境を越えた広大な範囲を移動するため、海鳥の個体数減少を食い止めるには緊急の国際協力が必要で、これがACAP成立の背景にあります。ACAPはアホウドリ類とミズナギドリ類の保全のために、国際的な保全活動を調整する多国間協定です。ACAPに加盟する13の締約国は、国際的な専門家、研究者、組織とともに、これらの海鳥、具体的には協定の対象である31種のアホウドリ類とミズナギドリ類の保全に取り組んでいます。世界アルバトロスデーは、海鳥を守るためにたゆまぬ努力を続けているすべての人々や組織に感謝の意を表す日でもあるのです。

 

アルゼンチンでトロール網を取り囲む海鳥の群れ。海鳥の驚異的な嗅覚が危険との遭遇を助長させ、「簡単な」餌を求めて30海里(56㎞)も離れた漁船に引き寄せられるのです。このようなトロール漁では、年間50,000~100,000羽の鳥が混獲によって命を落としていると推定されています。© Nahuel Chavez – ATF Argentina / Aves Argentinas

 

世界的な海鳥保全への取り組み

2000年以来RSPBのスタッフは、ケンブリッジのバードライフ海洋科学チーム、各国のバードライフパートナー、および世界中の協力NGOと緊密に協働しながら、バードライフ・インターナショナル海洋プログラムの活動を調整しています。

 

RSPBは主に、アルバトロス・タスクフォース(ATF)の設立と支援に重点を置いてきました。ATFは国際的な専門家で構成されたチームで、漁業者らと協力して海鳥が直面する脅威に対する認識を高め、漁業による偶発的な死を防ぐためのシンプルな解決策(海鳥混獲回避策)の使用を促進しています。

 

2023年9月にナミビアのスワコプムントで行われたATFワークショップに参加した、バードライフ・インターナショナル海洋プログラムの一部。ナミビア自然財団が主催したワークショップで、バードライフ海洋科学チームやRSPB国際海洋チームメンバーが参加しました。

 

私たちの最優先事項は、アホウドリ類とミズナギドリ類が受けている漁業による悪影響に対して、証拠に基づく解決策を実施することです。98%もの海鳥混獲の持続的削減が数カ国の海域で達成され、その勇気づけられる進展をたびたび報告してきました。アホウドリ類の保全に尽力している研究者や協働者のコミュニティが直面している課題は、国の海域で得られた前向きな経験を、公海(どの国の管轄権も及ばない広大な海域)で漁を行う漁船の改善に繋げることにあります。

 

この複雑な問題には、ACAP締約国の全面的な支援と、国の海域で可能な技術を示してきた経験豊かな研究者や組織による、献身的で協調的な取り組みがさらに必要です。 もしアホウドリ類とミズナギドリ類が公海という自然の生息地で生き残る可能性があるのであれば、ACAPのエネルギーと勢いがこれまで以上に求められます。

 

海鳥保全に向けた20年にわたる協働

ACAP締約国および作業部会の活動を支援する組織の総合的な努力により、いくつかの主要分野で大きく前進することができました。

  • 専門作業部会は、優先的な研究を定義するための重要なプラットフォームを提供しています。これには、ACAP対象種に関連する最新の情報と証拠の提示と議論、活動の調整が含まれます。
  • ACAP対象各種のファクトシートを通して、現在の個体群状況、生活史の特徴、直面している脅威に関する情報を提供しています。
  • 教材では、最新の証拠に基づく混獲回避の最善策を定義しています。漁業が海鳥に与える影響を軽減するための最も効果的な戦略を、漁業管理者やその他の関係者に伝えるために、その教材が使われています。

この協定が発効されて以来、バードライフ・インターナショナルの海洋プログラムはACAPにおいて積極的な役割を果たしてきました。これまで50回開催されたACAP会議のうち、出席回数は46回にのぼります。また、2005年にACAPの最初の作業部会が設立されてから、すべての作業部会のメンバーとして活動しています。

 

バードライフ・インターナショナル海洋プログラムは、過去20年間に178の会議文書やACAPに提出された情報文書を執筆・共著してきました。この成果は、ACAPやNGO、科学者、研究機関、政府など、さまざまな組織と国境を越えた協力があったからこそ可能となりました。この取り組みの目的は、ACAP締約国に対し、ACAP対象種が直面している脅威とその保全状況に関する、最新の科学的情報と研究を伝えることにあります。

 

ACAP 締約国が達成した 20 年間の進展に貢献できたことを、私たちは誇りに思います。バードライフとRSPBが主に支援してきた分野は以下の通りです:

  • 海鳥追跡データベース(現存する海鳥追跡データの最大データベース)のデータに基づく、研究結果を提出しています。2004 年にバードライフが設立したこの共同プラットフォームは、データ所有者が研究と保全の目的でデータを共有することを可能にしています。今年の世界アルバトロスデーのテーマである海洋保護区の選定のように、ACAP 対象種の保全に向けた評価に役立つ情報を提供しています。
  • 世界の主な混獲ホットスポットにおける漁業に働きかけています。その結果、海鳥混獲を減らすための複数の緩和手段を記述したガイドラインである、ACAP混獲回避最善策に貢献しています。
  • 混獲回避最善策の使用を義務付けるため、漁業者、漁業関係者、政府と協力し、国や地域の漁業規制のための情報を提供しています。

 

南アフリカ海域内で操業している浮きはえ縄漁船で、ATFのインストラクターがフックポッドの使い方について、船長と乗組員に説明。フックポッドは、浮きはえ縄漁における混獲回避最善策の一つです。©Reason Nyengera – ATF南アフリカ/バードライフ・南アフリカ

 

世界アルバトロスデーにあたり、ACAPとその締約国のこれまでの活動を称えるともに、私たちの貢献についても振り返りました。絶滅の危機に瀕した海鳥の保全状況を改善するための長年の協力関係、パートナーシップ、そして連携を通した取り組みは、関係者のおおらかさと仲間意識のおかげで可能となりました。今後もこうした協働関係が長く続くことを期待しています!

 

冒頭の写真:サウス・ジョージア島のバードアイランドで成長するハイガシラアホウドリ(Thalassarche chrysostoma)の雛。この種は国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで世界的な絶滅危惧種に指定されています。成熟個体は世界に約25万羽しか残っておらず、個体数は過去90年間で50~79%減少しました。はえ縄漁による混獲により、毎年数万羽が命を落としています。© James Crymble – 英国南極観測局

 

原文 “Celebrating 20 years of international collaborative work towards seabird conservation

(本文を一部編集しました)

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