保護活動の自己評価を効率化する新しいイニシアティブ
バードライフが先導役となって、複数の保護団体が低予算の保護プロジェクトを評価できる全く新しいツールの試験版を開発しました。長い目で見れば、プロジェクトの質の向上や資金提供者へのわかりやすい成果報告につながるはずです。
PRISM (Practical Impact Assessment Methods for Small and Medium-sized Conservation Projects:中小規模の保護プロジェクトのための実用的影響評価手法)と呼ばれるこのツールは、世界中の保護団体により現在試験運用が行われています。実際の利用データを元に改善を加え、2017年3月に最終版が公表される予定です。
PRISMは、バードライフの生態系サービス担当者Jenny Merriman主導の下でCCI(ケンブリッジ・コンサベーション・イニシアティブ)に所属する7人のメンバーにより開発されています。彼女の説明によれば、「この新しいツールは保護団体がプロジェクト実施により、どのような違いが生じたかを示すことができます。」ツールを利用することでプロジェクト管理者は経験から学び、その後の活動内容を調整することができます。資金提供者にとっては、PRISMは提供した資金により生じた効果をより分かりやすく示し、さらなる資金提供の説得材料になります。
Merrimanは、PRISMが低コストかつ効率的で、科学的にも信頼できる方法として、資金不足等によりプロジェクトの影響評価に苦心している団体に受け入れられることを期待しています。CCIのプロジェクト・チームは、世界中から良い事例を取り入れ、活動による影響の把握にますます関心を持つようになった資金提供者と協議し、結果から得られた教訓が皆に共有されるよう調整しています。ここでいう教訓には、人間の姿勢や行動の変化によって生じたある生物の個体数の変化から人々の生計手段の改善まで、最終的に生物多様性保全の改善につながるあらゆる種類・規模の成果が含まれます。
このような教訓は各地で強く望まれています。バードライフのリサーチ・アシスタントのIain Dicksonは「保護活動は影響評価の点でよくつまずきます。従来の報告では、プロジェクト実施により生じた活動の成果というよりも、インタビューをした人の数や歩いた距離などの事実のみでした。しかしこれからは、もしプロジェクトが実施されなければどのような状態に陥っていたか、比較をすることができます。」と述べています。PRISMはこのような疑問を解決するようにデザインされています。
Iain DicksonはPRISMが想定している利用者は‘特に地理的に狭いエリア、特定の種、あるいは特定のコミュニティで活動する小さな団体’であること述べています。PRISMのベータ版(完成間近のもの)をテストしているバードライフ・パートナーにはブルーン・インドネシアとバードライフ・ジンバブエなどがあります。
Tiburtius Haniはフローレス島でブルーン・インドネシアのプロジェクトを進めています。彼は「プロジェクトには3つの主要目標があり、それは保護活動、能力開発、貧困減少です。私たちは保全のために人々の生計改善を行っています。」と説明しています。Haniは特に保全のために行った人々の生活改善の取り組みの評価に関してPRISMのマニュアルを充実させたいと考えています。
Fadzai Matsimboはバードライフ・ジンバブエの‘アフリカのハゲワシ救出プロジェクト’を進めています。3年間の予算が51,000ユーロのこのプロジェクトは、PRISMが支援を計画するイニシアティブの典型的な規模の事業です。Fadzaiは「このプロジェクトは現在私たちの知識と保護活動の間にあるギャップを埋めるものです。」と言っています。PRISMによってより信頼性があり効率的かつ実用的な活動報告ができるようになることは、同国のハゲワシが活動によって本当に救われているかどうかを示す上で重要なカギになるでしょう。
報告者: James Lowen
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