デンマーク初の自然保護区評価によってその半数が危機にあることが明らかに

Öresund橋を背景にしたソルトホルム島IBAのカオジロガン。
デンマークのNGOがこのサイトを守るためにデンマークと
スウェーデン当局に働きかけた結果、橋を島を横切るのではなく迂回するように建設された。
写真提供: Ebbe Mortensen, local caretaker

どのような環境NGOも自然保護の柱の一つは地元コミュニティの支援と参加だと言うでしょう。このような背景のもと、DOF(デンマークのパートナー)は他のバードライフ・パートナーの活動に刺激を受けて、2003年に同国に129か所あるIBA(重要生息環境)それぞれの周辺にボランティアのネットワークを作り、‘デンマークIBA世話人プロジェクト’を開始しました。その目的は経験豊富な観察者の地域ネットワークを構築し、モニタリングと保全活動を強化することでした。

幸いにデンマーク政府は、DOFがプロジェクトを開始する前から、EUの特別保護区(SPA)を指定するために129のIBAを利用していました。現在は130ヶ所あるIBAのうち、SPAに指定されていないのは15ヶ所だけです。2013年に終了した‘世話人プロジェクト’は、デンマークで最も重要な野鳥のサイトの周辺をモニターし、その認識度を高めることに成功しました。同プロジェクトには902人のボランティアが加わり、繁殖、ねぐら、渡りのために同国で最も重要なサイト171ヶ所すべてをカバーしています(IBAを含む)。

この‘世話人プロジェクト’は公式には終了しましたが、おそらくその最大の成功は何人かの世話人あるいは‘サイト支援グループ(SSG)’がその後も地元当局、サイト所有者およびDOFと緊密な活動を続け、これらのサイトをモニターおよび保全していることでしょう。

2015年12月に発行された‘IBA世話人プロジェクト’の最終報告書では、鳥類の最重要サイトに関する幾つかの過去の研究がレビューされ、デンマーク全体のIBAが初めて包括的に評価されています。データはDOFの鳥類観察記録のオンライン・データベースや他のソースのデータを使用しいています。サイトごとに3段階の脅威レベルと4段階の保全レベルのうちそれぞれ一つずつ割り当てられています。ほとんどのサイトの脅威レベルと保全レベルは、最初のサイト解析(2006~2007年)による評価および環境省自然局のナチュラ2000計画(2011年)と合わせて、地元の世話人による評価に基づいています。

報告書には良いニュースも悪いニュースも掲載されています。悪いニュースは、ねぐらと繁殖場所の半分が不十分な状況にあり、特に広大な平野や海岸で顕著になっています。農耕地と海洋サイトの保全状態は押しなべて他のタイプのIBAに比べて大きく劣っており、その原因はこれらの地域はEUの特別保護区に指定されるにくいことが挙げられます。良いニュースは森林の保全がうまくいっていると思われることです。予想がつく方もいると思いますが、保全状態の良いIBAのほとんどは法律で守られているものばかりです。

人による攪乱はサイトの約60%で深刻な脅威となっています。それよりも幾分深刻度が低い脅威には植生の過剰な生育、問題を引き起こす在来種(主としてアカギツネ)、および侵略的外来種(特にアメリカミンク)などがあります。また、渡りの中継地の半分以上が富栄養化(肥料の流出による水質汚染が在来植生の代わりに藻類の過剰繁茂を引き起こす)の脅威にさらされています。

けれども希望が全くないわけではありません。旅鳥と繁殖する鳥の半分以上は少なくともサイトの50%で満足な状態にあり、猛禽類の75%とシギ・チドリ類の3分の2は良好な状態にあります。

DOFの次のステップの1つは、デンマークの保護区で現在行われている保護活動を改善するために、今回の報告書のために集められたデータを活用することです。デンマーク政府もこの報告書で明らかになった脅威に取り組み、自然保護団体や地元コミュニティと共にこれらの脅威を抑える活動を行わねばなりません。

 

報告者: Thomas Vikstrøm

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