環境の悪化にもかかわらずクロツラヘラサギが最大数を記録

飛翔するクロツラヘラサギ
写真提供: Yun-tak Chung/HKBWS

今年1月に行われた毎年恒例の国際クロツラヘラサギ調査で3,356羽が記録されました。これは昨年の3,272羽から2.6%の増加で、絶滅が危惧されているこのアジアの水鳥の最近のカウントでは最高記録となりました。

クロツラヘラサギの年次個体数調査は2003年から続けられています。今年の調査は1月15~17日に行われ、200人以上のボランティアが参加しました。調査は韓国、日本、中国本土、台湾、香港、マカオ、ベトナム、フィリピンおよびタイで行われました。

「この最近のカウントでの記録は、過去10年に亘る保護対策の成果の表れでしょう。クロツラヘラサギの個体数は二つの主な越冬地である台湾と香港での保護が上手く行っていることと、主要な繁殖地である朝鮮半島が深刻な攪乱を受けていないことにより増加したのです。」と地域全体での調査をコーディネートした香港観鳥会(HKBWS: 香港のバードライフ・パートナー)の調査部マネージャーYat-tung Yuは言いました。

台湾は今回もクロツラヘラサギの最大の越冬地となり、合計2,060羽を記録しました(前回からの増加数26羽)。総個体数の増加は中国本土での記録が増えたのが主な理由で、2015年度の330羽から、今年は32%増の434羽になりました。韓国、日本、マカオでもきろくすうが増加しました。けれども、懸念されるのは深海湾(香港と中国の深圳市に掛かる海域)で2010年の462羽から今回371羽に減ったことで、この期間にほぼ20%減ったことになります(2015年との比較では40羽の減少)。

深海湾長期に亘って最重要な越冬地の一つだったため、今回の減少は懸念すべき事態と言えます。この湾には、香港のIBA(重要生息環境)で湾の中心部であるマイポ自然保護区があり、水鳥と湿地保護のための管理が十分に行われ、越冬するクロツラヘラサギのためにも保護区の状態を改善するための環境強化が行われていた場所なのです。

同時に行われた深海湾での通常の水鳥のモニタリング活動では、他の湿地の鳥でも個体数減少が記録されました。越冬水鳥の合計数は2008年の90,132羽を頂点に、2016年には43,425羽に下落してしまったのです。クロツラヘラサギと同様、ここには絶滅危惧ⅠB類のオバシギ、絶滅危惧Ⅱ類のズグロカモメなどの絶滅危惧種や準絶滅危惧種に指定されている水鳥が生息しています。中国南部の地域全体に及ぶ沿岸開発や密猟などの広範囲な問題と共に、水質汚染や湿地の干拓などの環境悪化も続いていますが、この個体数減少の正確な理由はまだ不明のままです。

 

報告者: Ed Parnell

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